第六話: あとから降りかかってきた災難

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第六話: あとから降りかかってきた災難

 相 談 概 要

 アメリカのオークションサイトeBayにて、ブランド品(コーチ)のバッグ2つを落札し、合計630.72ドルを、決済代行会社BIDPAY経由で送金した。

しかし商品が届かず、その間、出品者に何度か連絡したが、商品は既に送付したとのことだった。EMS(国際エクスプレスメール)で送るようにお願いしたにも関わらず、2週間待っても届かないため、その後トラッキング番号を知らせるように要求したが、返答は返ってくるものの、トラッキング番号は教えてもらえなかった。荷物に保険を掛けているので、30日待って欲しい、と言われ待ったが、結局商品は届かず、出品者との連絡も途絶えてしまった。

その後クレジットカード会社に苦情の申立てをして、取引から3ヵ月後、クレジットカード会社から返金されたので安心していたが、その後しばらくしてからBIDPAYから私のところに直接メールが届き、キャッシュバックされた金額を支払うように要請された。

もし支払わないのなら債権を違う業者に渡すと書いてあり、どうしたらよいのか分からなかったので、再度クレジットカード会社に相談したところ、やはりキャッシュバックを取り消すとのこと。取引から5ヵ月後、クレジットカード会社よりキャッシュバック分を再請求されてしまった。
その後、クレジットカード会社は何もしてくれず、出品者との交渉のみになってしまった。直接電話も出来ず諦めているのだが、何か解決方法は無いか。

 処 理 結 果

 相談室では、どうして決済代行会社(BIDPAY)やクレジットカード会社が、一旦支払った代金を、再度返還するよう求めてきているのかの理由が分からなかったので、相談者にその点、確認して相談室に知らせるよう伝えた。また現在、出品者とは連絡が取れない状況なのかどうかも、併せて相談者に尋ねた。

 相談者から連絡があり、『BIDPAYが単なる支払いの代行業者であり、商品未着などのトラブルにはBIDPAYには責任がないという規約にすべて同意して利用した』ということで、代金返還を要求されたということ、また、相談者と決済代行会社の間では、郵便為替(money order)を出品者に届けたことによって、取引は成立していることになっている、とのことであった。 (以下メールの一部)
そして確かに相談者は、利用規約に同意するというチェックボックスにチェックを入れたとのことである。

Notwithstanding anything in this Agreement, if, as part of the Western Union Auction Payments Services, you purchase a money order,
(i) in addition to the terms and conditions contained in this Agreement, you are also subject to all terms and conditions appearing on the face of such money order and you hereby agree to comply with and be bound by all such terms and conditions;
(ii) in the event that such money order is fraudulently cashed or stolen, Western Union Auction Payments assumes no liability and you agree to assume all liability; and
(iii) Western Union Auction Payments' obligations with respect to such money order are complete upon deposit by Western Union Auction Payments of such money
order in the mail or with a recognized courier service.

【和訳】
この合意のいかなる規定にもかかわらず、ウェスタン・ユニオン・オークション・ペイメント・サービスの一部としてmoney orderを購入する場合、
(i) この合意にある条件に加え、money orderの文面に記載されているすべての条件に従い、ここに、すべての条件を遵守すること、義務を負うことに合意します;
(ii) money orderが不正に換金・盗難にあった場合、ウェスタン・ユニオン・オークション・ペイメントが責任を負うことはありません。あなたが全ての責任を負うことに合意します;そして、
(iii) money order に関するウェスタン・ユニオン・オークション・ペイメントの義務は、ウェスタン・ユニオン・オークション・ペイメントがmoney order を郵便で、あるいは認可された国際宅配便でオークションの売り手に渡す(支払う)ことにより完了します。

また、クレジットカード会社に決済代行会社から届いたメールを送っているので、クレジットカード会社は事態をすべて把握できていることと思うが、相談者が同意した上で利用しているので何もすることは出来ない、アメリカという国はそういう国です、と言われたとのことである。
 そこで、このようなところをクレジットカード会社が加盟店にしているのは問題ではないのか、と質問したが、やはりそのように利用規約が書かれている以上は何の違反でもないという回答だった、とのことである。

また、相手のメールアドレスはまだ使えている状況であり、メールは送ることはできるが、返事はもらえないとのことであった。

 これら相談者からの回答を見たところ、今回の決済手段は、クレジットカード決済によって決済代行会社からmoney orderを購入し、決済代行会社が出品者に、このmoney orderを送り、出品者がそれを換金するシステムと見受けられた。
その利用時に、このような規約の同意が必要になっているのである。

従って、商品が届かなかったため、クレジットカード会社に苦情申し立てをして一旦チャージバックによる返金がなされた後に、これら決済代行会社の規約に相談者が同意したことを理由に、クレジットカード会社は決済代行会社からの手続きにより、再び相談者にチャージバックした代金を返金するよう要請してきているものと思われた。

 そこで相談者には、引き続きクレジットカード会社に対し、このような内容はおかしいと伝えるとともに、オークション事業者にも苦情申し立てを行ってみるよう伝えた。
また、このような状況ではかなり厳しいが、メールが通じるようであれば、今後の出品者との交渉において、相談室のあっせんを希望するのであれば、相談室から出品者に連絡を取ることも可能と伝えた。

 相談者より、オークションの苦情申し立て期日が既に過ぎていること、その場合でも指定された決済代行会社(PAYPAL)でないと補償されないため、今回の決済代行会社のケースでは補償されないという報告があった。
 そして、やはり利用規約に同意した以上、自己責任になるのかもしれない、とのことであったが、相談室のあっせんは希望するとのことであった。

 そこで、相談室から出品者に英文にてコンタクトを取った。しかし最後まで出品者から返答がくることが無かった。

 その間、相談者のほうでは、再度クレジットカード会社に連絡し、今回の件は納得できない旨を申し出たとのことであった。
それでも当初、クレジットカード会社は、今回の返金は決済会社としての立場からいうと間違ってはいない対応であり、規約に同意している以上は自己責任です、といわれていたということであったが、相談者が根気強くクレジットカード会社と交渉したところ、会社全体として検討するとの回答があったとのことである。

その後、相談者より報告があり、前日、相談者のところにクレジットカード会社の担当者から電話があり、翌月に再度返金されるとのことであった。

 解 説

 この案件は、相談室が出品者との間であっせんを行っている間に、相談者においてもクレジットカード会社と引き続き交渉を行うよう助言し、最終的にクレジットカード会社からの返金を確約したというものである。

 決済代行会社の業務として通常認識しているのは、クレジットカード支払い代行、若しくは銀行口座との支払い代行と思われるが、それ以外に、クレジットカードも銀行口座も持たない受取人にお金を渡すための手段も存在しているのである。
 ただ、通常考えたら、何の補償も無い郵便為替(money order)を海外に送付するのであるから、当然リスクが高いと考えられるため、そのサービスを利用する場合は、もし詐欺に遭っても、それはすべて自己責任によるものだよ、という約束をさせられるのである。

 消費者はクレジットカード決済により詐欺に遭えば、クレジットカード会社に苦情申し立てを行い、クレジットカード会社は所定のチャージバック手続きを行い、消費者にその被害額を返還する。
この相談者は、クレジットカードでmoney orderを購入したのであるから、当然この手続きどおりにクレジットカード会社に苦情申し立てを行い、クレジットカード会社も返金を行ったのである。それなのに、クレジットカード会社は、返金手続きを行った後から、決済代行会社の規約を盾に、一旦支払った代金の返還を相談者に求めている。

確かに相談者が決済代行会社の一方的な規約に同意していたとしても、クレジットカード会社は、一旦代金の返還に応じているのである。しかも、規約内容は、相談者に返金する前の調査段階で充分把握可能な内容と考えられるため、一連の対応には大分疑問が残る。
これでは消費者はいつまでも不安定な状況下にあり、インターネット上で安心してクレジットカード決済が出来ないことになってしまう。

 ただ、家族親戚や、それまで充分信頼関係が築けているような相手方ではない限り、なるべく海外にはmoney orderや現金送金を避けるよう考えたほうが、リスク回避として現実的かもしれない。