第八話: 保証が付けば本当に安心?

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第八話: 保証が付けば本当に安心?

 相 談 概 要

 日本人が経営していて本社がLos Angelesにある、日本語表記のネットショップから「ラインストーン付きのバンダナ」を2枚、1月12日にメールで注文した。
発送方法は、万一のときに追跡と保証が可能なUSPS(United States Postal Service:米国郵便庁)エクスプレス便(Express Mail International Service (EMS))を指定し、総額38,800円を同日に振り込んだ。

その後、入金確認ができたので商品製作にとりかかり、作成は1〜2日かかると連絡があった。しばらくしても連絡がないため、1月22日に商品発送予定日と、荷物の追跡のためトラッキングナンバーを問い合わせたところ、既に発送済みという返事があった。

その後トラッキングナンバーから追跡をし、しばらく待ったが届かないため、事業者に紛失届けの手続きを依頼した。
3月に送料$17のMONEY ORDER(郵便為替)が郵便局から発行され、あとは商品代金の保険代金が返されるのを待っている状態であるとのことであった。支払った代金を返して欲しいと請求したが「こちらにはまったく非がないためキャンセルは不可能である、小切手が届いたら前回送った同じ特注ラインストーンバンダナをおつくりして、また再発送する事しか出来ない」との回答だった。

それでは代わりの商品を早急に発送して欲しいとメールを数回送ったが、返信はなかった。もう半年近く待っているが、何も連絡がなく困っている。

 処 理 結 果

 相談が入ったのは8月である。事業者は個人事業主であり、販売している商品は、市販のバンダナにラインストーンを貼り付けるというものである。注文が入ると全て手作業で作成し、海外から発送するという流れであった。

 当該サイト上と、相談者が送られてきていた事業者からのメールには、以下の内容が記載されていた。

★商品は出来るだけ壊れ無い様に梱包して発送致しますが、グローバル プライオリティー便(Global Priority Mail (GPM))と普通郵便での発送には商品の紛失や破損などの保証は付いておりません。
当方から商品発送後の郵送中に何らかの問題が起きた時は、当方は一切の責任を負えませんので予めご了承ください。
エクスプレス便で発送された方の商品だけは追跡可能ですがその他の発送方法では追跡は無理ですので、心配な方や高額の商品を発送の方はエクスプレス便をお選び下さい。
今までに商品の紛失は普通郵便にて1件、箱などの軽い破損は2件報告がありました。  
 
 相談者から、今までの事業者とのやり取りを送るよう伝え、その内容を確認すると、事業者側も相談者の申し出を受けて、郵便局に何度もかけ合っている様子がうかがえた。しかし、なかなか進展せず、事業者側も郵便局から連絡がない状態であることがわかった。
 そして、米国から発信されたエクスプレス便が完全に紛失した場合には、その送り主にしかクレームを申し立てる権利がない、ということが分かった。従って、相談者は事業者側からの連絡をひたすら待つしかない状態になる。

 ただ、そのためによる苛立ちからか、相談者から事業者に対し何度も「そっちから郵便局へ、調査を早くするようかけ合え」と主張し、事業者も「調査に時間がかかるのは郵便局のせいであって、こちらでもうこれ以上何も出来ない」「郵便局から小切手が届き次第、替わりを製作して送るつもりには変わりない」と開き直っている状況であった。

 そして、事業者が郵便局に紛失届けを出すときに、荷物に入れた全商品を記載した領収書(バンダナのレシート)を提出しなければならないため、そのときにバンダナ2枚の他に、もちろん相談者は知らないが、おまけで入れていたキーチャーム1個もレシート上に書きこんでいたことが分かった。
相談者は、事業者が商品代金の他に、おまけの代金も一緒に郵便局に請求していることについて、自分には全く関係ないものであり、不満があるとのことであった。

 相談者は、調査から既に半年以上待ち、もうこれ以上時間がかかるのであれば、代わりの商品を先に送ってくれるか代金の返還して欲しい、といった主張だったので、相談室より事業者にあっせんとして、まずは現在の状況がどうなっているのかを尋ねた。事業者は海外在住だが日本人なので、あっせんも全て日本語で行った。

 事業者からメールが届き、「送料$17のMONEY ORDERを郵便局が返してきたということは、完全に郵便局に責任があるのであって、こちらには非がない」こと、「本来なら相談者が郵便局にかけ合ってもらうべきものなのに、紛失事故が日本に入ってからではなく米国内で発生したものなので、英語が出来ないと困る思い、こちらの善意でヘルプをしている」ということ、「途中引越しがあり連絡が遅れがちになることは事前に相談者に伝えており、半年連絡が無いというのは全くの嘘である、こちらからは逐一報告のメールを出しており、それに返信しなかったのは、逆に相談者のほうである」という主張であった。

 そこで、相談室から事業者に対し「確かに今回のトラブルは当事者双方に責任は無く、従って自らに非が無いという考えも、対応が遅れているのは郵便局のせいだ、という主張も理解できるが、郵便局から保証される小切手はあなたのところに届くのであるから、商品を楽しみにしていた相談者の気持ちを汲み、プロの事業者として、せめて商品を先に発送してあげたらどうか」と提案してみた。

 しかし事業者は、あくまで郵便局から小切手が送られてきてから商品を作成して発送するので、それまで相談者には待つよう主張した。何度か事業者に説得を試みたが、事業者は強硬な態度を変えず、あっせんは約3ヶ月間平行線をたどった。

 翌年の1月になり、事業者より連絡が入り「郵便局から小切手が届いたので商品を製作して相談者に発送する、同じエクスプレス便で送るので、その旨、相談者に伝えて欲しい」とのことで、トラッキングナンバーが併記されていた。
 相談者より商品が届いたとの報告があったので、相談を終了とした。

 解 説

 今回の事例は、わざわざ相談者が、国際郵便で保証のあるエクスプレス便(EMS)を選択し利用したにもかかわらず、いざ紛失事故が発生した場合、その事故が日本国内で発生したものではない場合は、自らその苦情を申し立てることが出来ず、しかも、その保証を受けるのには、かなり時間がかかるということである。この事例では、実に1年近くかかっているのである。

 もちろん、早々事故など起こりえないものだと信じたいが、一旦事故が起こればこの状態なのであれば、果たして保証をつける意味がどこまであるのか疑問が残る。今はもっと改善されていることを願っている。

 それと共に、ネット通販のトラブルを扱う相談室としては慣れていることだが、今回も相手方は個人事業主であったため、あっせんを行いながらも、何より事業者には、まず事業者意識をしっかり持ってもらえるよう努めた。

 ただ、『個人』として、相談室に相談が寄せられるまでの約7ヶ月間、散々感情的なやり取りをしてきているのであるから、なかなか理解を求めるのが難しい部分もある。双方とも、いわゆる『いまどきの女性』であって、「このトラブルのせいで体調を壊した、私ばっかり何でこんな目に遭うの」「私だって一生懸命やってあげているのに、全然わかってくれないじゃない」なんてやり取りがそれを物語る。

 しかし、郵送事故があった場合、もちろん注文者には何の落ち度もないのであるから、事業者として、リスクを回避し保身をはかることを優先させるよりも、まずはせっかく注文をしてくれた注文者に対し、迷惑をかけないように努める姿勢が欲しいと思う。

(参考)
日本郵政公社 EMS
http://www.ems-post.jp/
http://www.ems-post.jp/index.php?page=send/from_trouble/