第九話: にわか買い取り屋

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第九話: にわか買い取り屋

 相 談 概 要

 ヤフーオークションの「情報」カテゴリに、以下、内容のものを出品した。
 
1. 80,000円即決価格での出品。
2. 商品はCD 1枚に入った情報。
3. 落札したら、必ずクレジットカード登録された『ヤフーかんたん決済』を利用する。
4. 決済が完了したら、65,000円落札者にキャッシュバックする。

 そこで、実際落札され、クレジットカードによる『ヤフーかんたん決済』にて支払われたので、落札者にCDを送り、65,000円をキャッシュバックしようと思うが、この取引に問題ないだろうか。

※ヤフーかんたん決済・・・事前にクレジットカード情報か、指定の銀行ネットバンクの口座情報を登録しておくと、ヤフーオークションでの取引の際、当事者がお互いのクレジットカード若しくは口座情報を知らせないまま確実に決済ができるもの。(株)ネットラストが提供する、決済代行サービス。
クレジットカード決済の場合、出品者には、『ヤフーかんたん決済』から数日で登録口座に代金が振り込まれ、落札者は、通常のカード決済と同じく決済から1〜2ヵ月後にクレジットカード会社より代金が引き落とされる。

 処 理 結 果

 相談者の話では、最終的には落札者の『ヤフーかんたん決済』のクレジットカード利用分を現金化することを目的としており、ただ、何も渡さないのはなんだから、ということで、情報の入ったCDを、オークションの形式上、落札者に送ろうか、と考えていたとのことである。
 相談者がオークションサイトにどのような宣伝文句を記載していたのかは、相談者の回答が終始歯切れが悪かったため、はっきり分からずじまいだった。どうも「クレジットのショッピング枠を現金化する方法」と題していたようである。

 ただ、この取引は少なくともオークションガイドライン等には違反するであろうことから、見つかったらオークション事業者から出品、若しくはIDを削除される危険性があることを伝えた。
 その上で、こちらではそのような取引を認めることが到底出来ない上、ともするとクレジットカード会社や決済代行会社を欺く行為になるため、このような取引はすぐにキャンセルして、支払われた80,000円は速やかに落札者に返還し、「出品者都合によるキャンセル」を選び、自らにマイナス評価のペナルティを課すよう助言した。

 また、落札者も、当然その目的で落札していることと思われたので、落札者にも納得してもらえるよう充分説明するよう伝えた。

 解 説

 相談を受けた最初の回答は、「これってヤミ金融の買い取り屋の手口ですよね」である。どうしても、個人がヤミ金融まがいなことをしようとしているようにしか見えなかったのである。

 買い取り屋のシステムは、お金を金融業者から借りようとする人が、手持ち、若しくは新たに作成したクレジットカードのショッピング枠で金融業者が指定する商品を買い物して、それを金融業者が購入金額の何割かで買い取り、その場で現金を渡す。よく街中で「カードのショッピング枠を現金化します」という広告を目にするが、大抵この手口である。もちろんお金を借りた人は、その後、クレジットカード会社から購入金額を請求される。
 そして、クレジットカード会社に所有権のある商品を、そのまま無断で転売したらクレジットカード会社との約款に違反することになろう。

 ただこのケースでは、商品は『情報の入ったCD1枚』であり、表向きは、それを80,000円で購入したことになっている。買い取り屋と異なり、転売ではない。
しかし、恐らく裏で65,000円をキャッシュバックする約束をすることで、相談者は15,000円の手数料を取るとともに、落札者は、結果的にはクレジットカードのショッピング枠を現金化できる流れになるのである。

 もし、出品者と落札者双方で事前に話をつけていたのであれば、オークションの外見上は通常の取引をしているようにしか見えない。しかし、落札の目的は商品ではなく、あくまで決済代行サービス利用額、つまりクレジットカードのショッピング枠の現金化である。
 これをオークションサイトや決済代行サービス、クレジットカード会社が防げるのかどうか、知りたいところである。

 大体、この相談者も、どうしてわざわざこのような相談をしてきたのかが不明だが、これはヤバイ、と思って今後、このような取引をしないでくれることを願うしかない。
インターネット上の新しいビジネスモデルには、新境地を開拓するといったビジネスチャンスの可能性と共に、提供する事業者側では思いも付かなかったような方法でサービスを悪用される危険性も同時にはらんでいると考えるべきなのだろうか。