第十話: 小切手詐欺は世界を巡る

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第十話: 小切手詐欺は世界を巡る

 相 談 概 要

 海外の不要中古品を売買するネット掲示板に、ファゴット ボーカル(楽器の部品)を、195,000円で売りに出した。

購入依頼が来たので、一週間後、その代金の支払いと、受け取り後、商品発送の約束を行った。当初、円建ての郵便為替による支払いをお願いしていたが、交渉過程でドル、またはユーロ建ての小切手支払いを受け入れることにした。
交渉したのは代理人で、オランダのアムステルダムに住む、MR D. THOMAS と名乗っていた。購入者は、同じアムステルダムに住む、MR P.RICK ということが知らされた。

10日後、小切手を受け取ったが、送り主が異なり、しかもその小切手は匿名で、額面も9500ユーロと、約束(1700ユーロ)よりかなり高額なものであった。アイルランド銀行ダブリン支店の小切手であり、代理人や購入者がオランダ在住なのを考えると不自然であった。

翌日、取引銀行に相談したが、真贋鑑定は換金しないと分からないとのことだった。従って、とりあえずは換金を見送り、代理人に発送者の確認のできる物か、情報の提示を求めたが提示してこない。
代理人には、送った輸送会社、FedExpressのトラッキングナンバーや小切手の銀行名、ナンバー等を確認したいから改めてそれら情報を教えて欲しい、と訊ねたが、やはり、それらについても具体的な情報を送ってこなかった。

小切手の送り主が分からず確定しないので、これでは取引自体が成立しないのではないかと思った。また、代理人や購入者と異なる送り主に対し、そのまま小切手を送り返すこともできないので、代理人にはこちらでは換金しない旨を通告し、もしあなたが送ったものであれば、無効化・破棄するよう告げた。
10日後、警察機関へ通報すると通告された。それがあまりに強硬な内容なので、代理人には、購入者に直接こちらから連絡をとるから購入者のメールアドレスを知らせるよう、依頼した。

FedExpressで配送内容の照会を行ったところ、小切手はフランスのパリから発送されており、R.WILLIAMSという人が送付人であることが分かった。住所はガーナとなっている。R.WILLIAMSは代理人でも購入者でもないため、改めて、この状態では取引できない旨連絡した。
しかし、3日後、代理人より再度取引を継続するようメールが届いた。
 
ただ、こちらとしては、小切手が匿名で送られてきた上、送付状もカーボン紙の上に何かを当てて書いたようで、あて先ははっきりわかるのに、送り主はまったくわからない状態である。また、額面についても、このような大きな金額の取引で、この間違いはありえないと思う。もし、先方で詐欺行為などが行われているようであれば、本当の持ち主のお金を奪う結果になる可能性がある。
今後、どう対処したらよいだろうか。

 処 理 結 果

 相談を受けて、いろいろな可能性を検討したが、相談室の見解としては、やはり詐欺の可能性が高いと判断した。

 従って、相談者は相手方に、未だ商品引渡し前と見られたため、この取引自体を中止するとともに、この小切手を扱いについては、警察やいくつかの関係機関を紹介し、対処を検討するよう助言した。

 解 説

 日ごろ相談室では、海外に向けた小切手や郵便為替(money order)は、換金された後、商品が送られてこなくても救済手段が無いというリスクがあるため、詐欺に遭うといった可能性もあり、取引の決済手段として選択するのは充分注意するよう促している。
 このケースでは、海外から送られてきた小切手が、偽造、若しくは不正の可能性が高いということで、やはり詐欺の疑いがあると判断したものである。

 何年か前、海外から送られてくるメールにより、いくつかの国際詐欺が発生したことがあったが、そのときも不正小切手が使われたケースがあった。

(参考)
JETRO 国際的詐欺について(注意喚起)
http://www.jetro.go.jp/contact/faq/419/?print=1

 また、海外小切手の邦銀での換金には、銀行により異なるが、手数料が大体2,000円から4,000円程度かかる。これが結構高額であるため、あまり低額の国際取引における決済手段に小切手は使われない傾向がある。
 なので、小切手で被害に遭う場合は、被害額も高額になっている可能性がある。

 オークション落札者や海外の顧客から代金をもらう場合、相手方より強く小切手や為替での支払いを求められた場合は、こういったリスクがあることを注意すると良いと思う。
 インターネット上では世界は狭く感じるが、リアルの世界は広いのである。

(参考)
郵便貯金ホームページ 国際郵便為替に関するお知らせ −為替証書の偽造について−
http://www.yu-cho.japanpost.jp/n0000000/nj000700.htm