<1>
ネット上の洋服の売買掲示板に、自分が売りたいカバンがあったので「カバン売ります」という内容を書き込み、同様に今度は自分が探している靴があったので、同じ掲示板に「靴買います」という内容も書き込んでいた。後日、S氏から「まだカバンはありますか?」とのメールが届いたので、「あります」と返答した。
その後S氏から「カバンは商品交換でお願いしたいのですが、何かお探しの品はありませんか?」というメールが届いたので、掲示板に書き込むほど探していた「靴を探しています」と返信した。
後日、O氏と名乗る人物から「お探しの靴を持っています。交換できませんか?特にミハラヤスヒロのレアものとの交換でしたら、自分の服を全て差し上げてもいいです、ほとんど着ない総額3〜40万の服がたくさんあります」というメールが届き、自分はミハラヤスヒロの服は一切持っていなかったので「知人に当たってみます」と返信した。
後日、S氏より「ミハラヤスヒロの非売品のスカジャンを持っているのですが、これと何か交換できませんでしょうか?知り合いのスタッフに頼み込んで30万円の時計と交換してもらったものです」というメールがきたので、O氏に対し「ミハラヤスヒロの非売品のスカジャンは興味ありますか?」とメールしたら、O氏から「大変興味があります。こちらの服全て差し上げてもいいです」と返事をもらった。
ただS氏がカバンだけでは価値が吊り合わないということで、S氏所有のミハラヤスヒロの非売品のスカジャンを、「カバン+現金7万円」という形で交換することにした。
S氏よりスカジャンが届いたので、O氏と今度は靴と服の交換について連絡したところ、直接来るというので住所を教えた。直接来るということだったので携帯の番号しか教えてもらわなかった。
当日約束の時間になってもO氏は来ないので電話をしたが使われておらず、ようやくO氏からメールがきたが「差し上げる予定の洋服全て友人が処分してしまってどうすることもできません」と書かれていた。それでは困るので「返金してくれ、携帯は使われていない番号なので正しい住所、電話番号等教えて欲しい」とメールするが、その後連絡はない。
また、S氏に送ったカバンの発送先は虚偽のものであることが分かり、S氏は運送会社の収集所に自らとりに現れたとのことであった。
S氏より送られてきたミハラヤスヒロのスカジャンも、非売品という説明は嘘で普通に市場に出回っているもので、価値も30万円の時計と交換できるようなものではなかった。
<2>
ヤフーオークションに、音楽ギフト券2点を出品し、どちらもM氏から、それぞれ30,000円、27,500円の合計57,500円で落札された。M氏よりメールが届き、発送先の住所が指定され、振込口座を知らせて欲しい旨と、商品はメール便で送ってくれるよう依頼された。
商品を発送する旨M氏に連絡したところ、振込みは明日すると書かれており、知らせたわたしの銀行口座について再度確認がされた。翌日振込みがなされたので、評価をして取引は終了したと思われた。
しかし後日、取引銀行より電話があり、振込み人から、わたしの電話番号を知らせてくれるよう言われているとの知らせがあった。そこで、わたしから振込み人の銀行に電話したところ、商品が届いていないと言われた。
事情を聞いてみると、それはK氏という人で、同じくヤフーオークションで「全国百貨店共通商品券」を57,500円で落札したとのことであった。その際、M氏のメールアドレスから「あなたに落札されました」と連絡があり、そのときにわたしの名前と銀行口座を知らされたそうである。
そこで、K氏はわたしの口座に落札金額57,500円を振り込んだらしいが、その後商品が届かないと言うことである。どうやらK氏は、実際には落札にはなっていなかったらしい。
しかし、わたしは57,500円が振り込まれたので、そのときの振込み人の名前は気にしていなかった。わたしの口座に振り込まれたお金はどうなるのか。警察に相談したが、わたしが詐欺にあっているのではないので、なんとも答えられないと言われた。
現在、M氏のオークション評価は、わたしとの音楽ギフト券取引後、「非常に悪い」評価が立て続けに付いている。
基本的には、どちらのケースも詐欺の可能性が極めて高いため、警察の協力が必要になる旨、伝えた。
<1>については、その後、警察に相談したところ、警察よりS氏に連絡を取ってもらえたらしく、S氏は警察からの連絡には出るらしいが、相談者からの連絡には応じないとのことであった。
<2>のケースは、K氏の出品画面を確認したところ、60,000円分の「全国百貨店共通商品券」を57,500円に希望落札価格が設定されていて、その金額で一発落札したことになっていた。
またM氏のIDから取引履歴を確認すると、それまでは女性用の洋服・雑貨等を主に取引しており非常に評価が良かったが、ある時点から金券ばかりを取引し、金券の取引ではことごとく悪い評価が付けられていた。これを見る限り、M氏のIDは第三者に乗っ取られている可能性が伺えた。
その後、相談者にはK氏から連絡があり、K氏が警察から、『代金はわたしから返してもらわないといけない』といわれたとのことであった。『M氏に騙されて、わたしの口座にお金を振り込んだので、わたしとK氏との間に取引関係がなく、K氏がわたしの口座に振り込んでいるのは事実であり、間違って振り込んでいるのと同じである。振り込んだお金はK氏のものであり振り込んだ本人に返さないといけない、また、振込み名を確認せずにM氏に商品を送ったのは、わたしの落ち度であり、M氏に騙されてお金を振り込んでもらっていないのはわたしなので、私が早く警察に届出をしないといけない』と警察に言われたとのことであった。
相談者が通帳を確認したところ、57,500円の振込み人には有限会社の社名が書かれており、それがK氏であると分かったとのことであった。
最後に、本当のM氏から連絡あり「自分とは名前もまったく違う人物でIDを不正利用され、その期間は5日間である、その間11件の落札があり、皆入金をしていないようである」とのことであった。
この相談者は被害者になるため、オークション補償制度を申請するよう助言した。
インターネット上での詐欺といえば、「代金を振り込んでも商品が届かない」といったものがポピュラーであり、また、詐欺に関する相談もなかなか減らない状態が続いているのだが、時々手の込んだ詐欺もあり、悲しいかな、頭の体操にはうってつけのケースもある。
<1>のケースでは、相談者は結果的にカバンと7万円を取られ、手元に残ったのは、『“手持ちのカバンと7万円”で交換するほどの価値もなく、また欲しくもないスカジャン』だった、ということである。
このケースでは、S氏とO氏は同一人物である可能性が極めて高いと思われた。もう少し、警察には積極的に協力して欲しい。
<2>のケースでは、相談者は、全く知らないところで行われていた取引において、その当事者K氏から振り込まれた代金の返還を求められており、結局、「音楽ギフト券」をタダで取られたことになるのである。
何より取引金額が、同じ57,500円で統一されていたところはなかなか見事だが、ここまで手の込んだことをするだけに見合う、収益があるのかの方が疑問であった。
ただ、確認すると、K氏が取引した「全国百貨店共通商品券」の出品者ID自体も、第三者に乗っ取られている様子がうかがえた。M氏のIDと同様、現在の取引履歴内容は今までの取引内容と全く異なっていたからである。
そうなると、かなり大掛かりなID乗っ取りと、それらIDを使って短期間にかなりの詐欺行為が繰り返されていた可能性がある。そもそもK氏が善意の人なのかも疑問になってくる。
こういった詐欺までを見抜けないと、ネットオークションに参加することも出来ないようでは、せっかく一般化してきたネットオークションが台無しであると思う。ユーザが気軽に参加できるようにするには、参加料無料キャンペーンや対象年齢の引き下げといった、単に参加するための敷居を下げるだけではなく、IDの不正利用状況をいち早く見抜き、警告できるようなシステム作りが何より必要ではないかと思う。