第十六話: 出展にはご注意を

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第十六話: 出展にはご注意を

 相 談 概 要

 当社がインターナショナルギフトショーに出展後、オーストリアのCONSTRUCT DATA VERLAG AG 社からWEB への無料掲載の手紙をもらった。サインのうえ返送したが、その後請求書が送られてきた。【1年分US$981.00: 3年契約】という内容だった。当社は契約の意思がなかったのでキャンセルしたい旨連絡したが、「契約書にサインがあるので解約はできない」との返答があった。

改めて最初の手紙を読み返すと、後段に小さい文字でその旨の記述があることに気がついた。当社としても認識がなくサインしてしまった事実はあるが、納得できないのでオーストリア大使館商務部に問い合わせをしたところ、「問題のある会社なので支払いをしないで下さい」との回答をもらった。

このまま放置しておいてよいものなのだろうか。

 処 理 結 果

 この契約書は、B2Bのウェブ掲載を無料で行う、といった内容だが、その契約書の下方に小さく「Order」という文字とともに、金額、条件などがあり、一応は注文書の形態になっているようであった。

相手方事業者は海外にあるとはいえ、誰が見ても1回では理解が出来ないような説明方法をとっているのであれば、有料での契約をしたつもりは無いことを伝え、代金を支払わないと主張することは可能と考えられた。

ただ、相手方事業者への支払方法が、クレジット等ではなく現金送金だったので、現実問題として、相談者側が未払いだったとしても、相手方事業者は強制的に料金を回収することは困難と思われたので、支払いには応じずに様子を見て、相手方事業者の出方を見てみるよう助言した。
その上で、しつこいようであれば、書面にて通知をしておく方法を伝えた。

 解 説

 事業者からの相談であるが、大使館の対応を見ると、他にも同じ相手方事業者で被害に遭う事業者がいるものと思われた。現にこちらにおいても、実はこの相談者の前に、複数の同様の相談が寄せられていた。主なものを挙げると、以下のような内容であった。

 『ニューヨークで開催されたファッション衣料品の展示会に出展したところ、出展社宛てに「THE EXHIBITORS GUIDE」と記された封書が送られてきた。そこには出展者の登録情報を更新するので新しい情報を記入し返送するよう記されており、更新しない場合は現在の内容を掲載すると書いてあったため、更新内容を記入しサインして返信したが、その後請求が来た。展示会事務局からの郵便物のように装った内容だったので気づかなかったが、よく読むと小さな文字で「980ドル/年X3年」との記載があった』

 『2〜3年前より、B2Bサイトから弊社の企業情報を無償で登録・公開したいので情報を更新して欲しいというエアメールが毎年来ていた。無償ということもあって必要事項を記入して毎年返送していたが、請求の類が送られたことは一切無かった。再度このサイトからエアメールが届き、またいつもの情報更新かと思って適当にサインして返送したところ、約3ヵ月半後、弊社に請求書が到着し、金額は年981ドルで3年間継続するとの内容である。気になってGoogleで検索したところ、このB2Bサイトは、海外では有名なスカム(屑)サイトであるとのこと』

 どの相談内容においても“有料のサービスであるとの認識”をもってサインをした、というものは無く、見事に「引っ掛かった」という感じである。
この相手方事業者は、国内外で開催されるショーや展示会に出展している事業者を見つけては封書を送り、この「引っ掛け」を用意して、事業者が送金してくるのを待っているものと思われる。ほとんどアダルトワンクリック詐欺に近い。

 こういった国際的なビジネスショーや展示会に出展を予定する事業者も多いことかと思うが、このような海外から仕掛けられる落とし穴が潜んでいることも知っておいて欲しいと思う。