第十七話: メルマガ狂騒曲

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第十七話: メルマガ狂騒曲

 相 談 概 要

 当方は県の出資100%の外郭団体であり、メールで県内の情報を提供するメルマガを毎月2回発行している。このメルマガは某メルマガ配信会社の配信システムを無料で利用、発行していることから、読者の方にご登録いただくと、メルマガ配信会社発行のメルマガも配信されることとなっている。

先日、読者の1人から、「懸賞応募をしたら多くのメルマガが送信されてきた。そちらのメルマガを登録したのがきっかけで、このような迷惑メールが届くようになった。これは県の責任では?調査を」というような内容のメールが届くようになった。この読者は、「当方を信頼している上で、そこが使用しているメルマガ配信会社のメルマガであるから応募した」と話した。懸賞応募ページは当方のページではなく、別会社のサイトである。
そのため、懸賞の書かれたメルマガをこの読者からいただき、それを基に調査を行った。原因は、当方が利用している配信システム会社発行のメルマガからリンクをして、懸賞を応募したためと推測している。

つまり、このメルマガ配信会社発行のメルマガに広告掲載している懸賞項目をクリックし、そのサイトから、読者自身のアドレスを入力し応募する。
(1)サイト上で読者自身のアドレス入力しボタンをクリック。当たりまたはハズレが表示。
(2)その後、そのハズレ画面から別の懸賞に、読者自身のアドレスを入力し再応募(再度アドレス登録)。
 上記(2)のハズレの再応募画面からアドレスを登録するときには、応募すると複数のメルマガが送信されてくることが明記されていた。この結果、複数のメルマガが送付されてくることになったらしい。また、利用している配信会社のメルマガは、必要なければ読者自身で解除ができる。
 
当方のメルマガのお問い合わせ画面には、メルマガ配信会社のメルマガが登録されると自動的に送信されてくるとお知らせをしている。また解除画面の案内もしている。メルマガを登録した際に『メルマガ配信会社から登録確認メールが送信され、この確認メールにも、配信会社からのメルマガが送信されてくる』旨のお知らせがあり、解除の案内もある。

そこで、このような場合、一般的に当方の責任となるものなのか。注意を促すものを掲載したほうが良いのか。また当方では、懸賞メルマガにアドレス登録をしたことが、読者ご自身で選択されたものと考えているが、この読者に対して、どういったことを今後お伝えすればよいのだろうか。

 処 理 結 果

 メルマガ配信システムに関しては、利用無料と引き換えに登録者に対し、メルマガ配信会社からのメルマガが届くということ、それに対してオプトアウトが可能ということについて、登録前に確認できる状態であった。この点、メルマガ配信システムには、特に問題性は感じられなかった。

そこで第一に、当該メルマガ配信会社から登録者にオプトアウトにて配信されるメルマガの内容は、メルマガ配信会社が決定することと考えられたため、当然そのメルマガの記載内容に、相談者の団体が直接関与することは無く、その記載内容に関してまで、団体が責任を負う必要は無いかと思われた。
そして、メルマガ配信会社から配信されてくるメルマガの内容に対し、その団体がわざわざ注意喚起することは、無償でサービスを提供しているメルマガ配信会社からしてみればいい迷惑で、その注意内容によっては新たなトラブルになりえると考えられた。

また第二に、メルマガ配信会社からのメルマガの受信については登録者にて選択可能と思われたため、今まで団体だけでは無くメルマガ配信会社の配信するメルマガも受信をしていたこと、及びそのメルマガに載っていたサイトを利用することなどは、全て登録者の意思の元でなされているものと考えられ、その上、懸賞でのシステムにより懸賞応募者に更なるメルマガが送信されることについては、その懸賞における応募条件であり、利用者はその条件にも同意していることと思われた。
 
ただ、このような公共性の高い団体が利用しているシステムであるからこそ信用した、といった読者の主張も決して分からないではなく、可能であれば、今後このような無料のメルマガ配信会社のサービスを利用するのではなく、広告等が入らないメルマガ配信システムの導入を検討するよう伝えた。

 解 説

 メルマガを配信している事業者はたくさんあると思われるが、このように公共性の高い団体が、一般的に個人やショップ等で利用するような、無償のメルマガ配信サービスを利用していることは少々意外であった。と言うのも、この団体は、県の広報関係を専門としているようだったので、なおのことである。

 無償で提供されるメルマガ配信サービスは、無償の代わりに、メルマガ登録者には、その後メルマガ配信会社の指定するメルマガが自動的に配信されるようになる。これは望まなければ、自ら配信停止手続きが可能である。
 今回は、登録者の1人である読者が、このメルマガ配信会社より配信されていたメルマガより懸賞に応募し、そこのサイト上でも自分のメールアドレスを登録したために、さらにメルマガが配信されるようになったと思われた。
 ただ、これらは全て事前に説明がなされているし、不要であれば、これらももちろん配信停止手続きが可能である。

 ただ、見方によっては、このようなことは知っていて当たり前のように見えても、インターネットやメールにおける知識には、まだまだ人により格差があるため、メルマガ登録者によっては、そのようなことは知っていて当たり前では決してなく、メールアドレスを登録したら、いろいろなところから不必要なメルマガがどんどん送りつけられ、どうしてそのような事態に陥ってしまったのか、それは誰の責任か、その判断が出来なくなってしまうこともあると思う。また、バックに行政がある場合、そこに苦情を持っていきやすいという心理もある。

 でも、この団体においては、このいち読者の苦情を適当にあしらうことなく、きちんと調査をしたり相談機関に相談をしたりして、この読者に真剣に向き合っていることが感じられたので、非常にその点、救いを感じた。あとは技術的な面で、もう少しお金をかけて欲しいと思った。