第二十二話: 素人お断り

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第二十二話: 素人お断り

 相 談 概 要

 電子部品(主にダブつき品、中古品)を扱っているショップのサイトがあるのだが、そこで、電子部品を3,000円程度注文したがショップから無視され、問い合わせも無視されている。ネットで検索をして調べたところ、結構な数の人が同じような境遇にいるようである。どうも、私はショップのブラックリストに入ったようであるが、別に過去に何かあったわけではない。

このブラックリストというのが曲者で、普通はこういうリストに入るのは、例えば注文やキャンセルを連続して行ったり、トラブルが起きた人を入れるものかと思うが、このショップの場合は、問い合わせのメールを送ってきた人すべてをリストに入れているようである。
 私の場合は商品が届かないため、「注文できていますか? それとも事故で消失しましたか?」という質問をしたのでアウトだったようである(普通ありえないが、そういうことのようである)。その返信すらなかったのだが、メルマガを途中で打ち切られたので、その日からブラックリストに入ったのだと思う。

他の人から聞いた話では、ショップが発送荷物を間違えたため、「違うモノが届いた」と連絡を入れたら「クレーマー扱いとします。次回からは受け付けません」という話になったとのこと。また、「3品目以上注文すると無条件にブラックリストに入れられる」という話で、良く見ると、ショップページの隅に小さく「3品以上注文するな」と書き足しされている。あと、よく分からないが、北海道在住者と静岡県在住者は無条件にブラックリスト入りのようである。サイトには、そう明記されている。

ショップに注文するときは、特に専用フォームなどが用意されているのではなく、メールで住所・電話番号・名前等を送り、購入を希望する商品を知らせるのだが、それに対する承諾した旨の返事はない。商品送付は代金引換のみで、荷物が届くこともあるのだが、荷物が届かない場合もある。でも、それで届かない場合は個人情報を盗られるだけではないだろうか。古物等を扱っているのに免許もないようだし、どうも胡散臭いのだが、どうにかならないものなのだろうか。

 処 理 結 果

 こちらにて当該ショップサイトを確認した。非常に見難いサイトであり、商品画像と商品名、値段が書かれた商品広告が、トップページに何十個と無造作に貼られているだけなので、トップページだけがやたらに長く、スクロールが容易ではなかった。個々の商品に詳細な説明などはなく、代わりにユーザからの「使用例」が淡々と載せられていた。

 問い合わせをするとブラックリストに入れる、といった表記は見つからなかったが、商品を3品以上注文してはいけないこと、また北海道在住者と静岡県在住者は注文を受けない旨の記載はあった。前にこの地区の住人でトラブルがあり、それ以降、取引はしないとのことが書かれていた。商品発送は代金引換のみであり、3品以上注文してはいけないと言うのは、どうも当該ショップでは送料と代引手数料を合わせて800円しか認めない、というスタンスだからのようであった。
その他、特商法の記載、古物商の承認番号の記載はあった。契約成立は「代金引換時に成立」とあり、返品に関しては「ジャンク品は常識内で」との記載があった。

そこで、サイト上には確かにブラックリスト等、顧客への対応に関し、かなり挑発的な記載がなされていたが、ショップが注文を受ける際の「条件」があれこれ設定されていても、それについて何か言うことは難しいのではないか、と伝えた。
 また、当該ショップは全て代金引換のため、注文した商品をショップ側が一方的に発送しなかったとしても金銭的被害はないので、納得いかなければ、このようなサイトとは取引を継続せず、申し込みの撤回を、きちんと書面にて意思表示しておくように伝えた。

 ただ、サイト上には『顧客リストは作成していない、個別の取引履歴は一切残していない』といった説明が記載されていた。
 従って、相談者に商品が送られず個人情報だけを取られたと感じていても、この記載通りであれば、ショップは顧客リストを作成しておらず、個々の注文者の個人情報は手元に残さないようであった。ショップが個人情報を不正な手段で取得したとはっきり判断できず、現時点では、相談者が送った個人情報の削除をショップに強要することも難しいのではないか、と伝えた。

 解 説

 このショップはいわゆる「ジャンク屋」であり、秋葉原等に多くみられるショップであるが、そこで販売されている商品は、それぞれその商品の扱い方や意味が分かる人のみが購入できるという暗黙のルールがある。中には「研究用」と称して、怪しげな商品も多々扱っているが、ショップにその使用方法などを尋ねても決して教えてはくれない、100%自己責任の世界、素人お断りなのである。しかし「ジャンク屋」は、通常では販売されていない小さな電子部品などが最小ユニットから購入できたり、メーカーも製造中止したような部品をコマコマ扱っていたりといったメリットもあり、それなりの需要はある。

 当該ショップは、そのような「ジャンク屋」が、そのままインターネット上で商売をしているようなものであるが、その世界のユーザの間では有名らしく、当該ショップでの買い物入門が書かれたユーザのサイトもあるぐらいである。入門サイトが必要なぐらいの強烈なショップサイトなのであるが、その中には「商品が届かなくても文句を言ってはいけない」という掟が書かれていた。それでは注文ではなく、抽選のようなものである。それでも欲しい商品が当該ショップにはあるのだろう。

ただ、そのようなショップにマトモな顧客対応を期待できるかどうか、というところは甚だ疑問である。そもそもショップの姿勢が「お客様、どうぞ買ってください」ではなく「欲しけりゃ気分次第で売ってやる」なのにも関わらず、それでもそこから購入を希望するのであるから、いまさらショップの対応やサービスが悪いといっても仕方ない。

今回のショップに限らず、同じような「ジャンク屋」はネット上にいくつかあり、ショップによってはネットオークションにも出品していたりするので、時々このようなショップでトラブルを起こしてしまったという相談が入るのだが、実はこのようなショップにおけるお互い暗黙のルールに、どこまで首を突っ込んだら良いものか、なかなか難しい部分がある。