ネットオークションにて「24」のDVDが格安で出品されていた。定価が20,000円のところを1セット4,980円(Season2)、5,980円(Season3)にて出品されていたので、その提示金額にて落札。指定口座に代金を振り込み、商品は無事に届いている。
9ヵ月後、この出品者からディスクに不具合が発生したという連絡を受け、住所・氏名を再度連絡した。すると本日「著作権法違反に対し賠償金を支払って下さい」というメールが届き、明日までに返信しないと個人情報を開示する、といった内容であった。
ただ、著作権を持っている会社に支払うのであれば納得もいくのだが、このような内容で相手方に支払うのは納得もできない。ただ、こちらからメールを送っても、相手方に納得してもらえそうにもない。
届いたメールは下記内容である。
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こんばんは。
「24」のDVDに対する大変重要なお知らせですので必ず最後までお読みください。
今月、神奈川県内のある警察署員3名が私の家に来て家宅捜索をして帰りました。容疑は著作権法違反です。彼らはパソコンや外付けDVDドライブ、ハードディスクは言うに及ばず、「24」のDVDに関係あると考えられるもの全てを押収して行きました。それに先立って6ヶ月前に「24」の製作会社である20センチュリーフォックスの代理であると言う弁護士事務所から内容証明郵便が届いていました。
その内容は「24」のDVDの出品を即座に止める事。それまでに販売した相手の情報を全て開示する事。損害賠償金として約650万円を支払う事。と言う事でした。それに対して私はまず出品を取りやめました。落札者の情報については、商品発送後にメールをすぐに削除してしまうため「わからない」と返答しました。賠償金については金額の算出の根拠を教えて欲しいとも伝えました。
その後相手からは何も返事・連絡がありませんでしたので私はまた「24」のDVDの出品を再開してこの内容証明の事も忘れていました。今後、警察の証拠調べなどが一通りそろった時点で、私は逮捕・送検される事になります。ちなみに著作権法違反は懲役5年以下、または500万円以下の罰金です。
そのほかに製作会社から請求されている賠償金の支払い義務も負う事になります。そこで、賠償金については落札者の皆さんにも頭割りでご負担頂く事といたしました。前述のように、発送の時点でメールは全て削除し、メモなども残してきませんでしたのでまずは落札者を探さなくてはなりませんでした。
そのような理由から先日差し上げたメールをプロバイダーに残っていた送信履歴全てにお送りしてお返事を待ったわけです。結果的に156名の方々からお返事を頂けました。賠償金650万の内の600万円を156人で頭割りして、一人当たり38,461円となります。この金額をUFJ銀行青葉台支店普通口座3928XXX、名義○○までお願いいたします。整理の都合上、締め切りを明日15時までとさせて頂きます。ご負担頂ける方と頂けない方の不平等をなくすために、締め切り後にご負担頂いた方には頂けなかった方々の住所・氏名・メールアドレスを全て開示させて頂きます。
1:返品・交換などと言って住所や名前を聞き出す行為は問題では?と言うご意見もあると思います。
確かに褒められた行為ではありません。ただ、初めから核心に触れた内容のメールを差し上げてどれ程の方が返信頂けたでしょうか?皆さんやはり「自分」がかわいいわけですから、多分多数の方が返信さえせずに黙殺されたものと推測致します。また、以前取引の時点で一度はこちらに住所・氏名を明かしているのですからとりたてて問題にする事ではないと思います。
2:なぜ賠償金を皆で負担しなければならないのか?と言う件ですが、皆さんは「違法」な商品を購入されたのです。たまたま今回はコピーDVDでしたが、これが覚せい剤などだったらどうなりますか?売り手も買い手も逮捕されます。海外でブランド品のコピーを買って来ても税関で見つけられたら没収です。数量が多ければ逮捕もありえます。確かに現行法では違法DVDの買い手が逮捕される事はありません。
しかし「違法行為」に加担した事にかわりはありません。制作会社側は、この違法DVDが流通しなかったら得られたはずの収入を目安に賠償金を計算、請求しています。これも前述のように、売り手の私も利益を得ましたが、買い手である皆さん方も正規品を買った場合よりも安く購入できたと言う「利益」を得ています。ましてDVD1セットを販売した場合の利益は売り手の私よりも買い手側の方が大きいのです。
以上の点を考えてみても売り手・買い手双方が賠償金を負担する事に何ら不都合な点はないと思います。以上の説明でも納得しない方や、自分は清廉潔白で違法なことは微塵もしていないと言う方がいらっしゃいましたら賠償金のご負担は結構です。
ただし、「この件については自分はやましい事をしたつもりはない」と言う内容の上申書を私宛にご提出をお願い致します。その上申書は裁判を通して相手側(制作会社)に提出させて頂きます。違法コピーDVDを買う事に違法性を感じない人間がいると言う事を提示する事で裁判にも多少なりとも影響が出てくるものと期待致します。
それではまずは明日15時までよろしくお願いいたします
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相談者は、この時点でかなり不安になっているようだったが、相手方より送られてきたメール内容を第三者としてこちらが読む限り、あまり信用できるような内容では無いと思われた。
振込み期限も極端に短く、本当に相手方のところに警察の捜査が入ったのであれば、相談者のところにも警察から連絡が入る可能性もあり、何より著作権法違反物だと知らされずに商品を渡されたのであれば、逆に相手方に対し返金を主張することも出来ると思われた。(ただ、相談者が本当にコピーDVDであることに気がついていなかったのかは微妙だが・・)
また、そもそもこのメールを送ってきた人物が、本当にオークション時の取引相手かどうかも怪しいこと、取引した商品がたとえ『コピー商品』であったとしても、このメール内容だけを信用して、言われるまま代金を振り込むことは、あまりに危険であると伝え、あえて積極的に交渉せずに、様子をみるよう伝えた。
また、振込先の金融機関に連絡して、このような事例の振込先口座に指定されていることを情報提供してみるよう伝えた。
インターネット上での詐欺にも事欠くことがないが、たまたまインターネットを道具として利用しているだけであって、実質はリアルで発生している詐欺とほとんど内容が変わらないものも多い。
例えばネットオークションやネットショッピングで、代金を支払ったにもかかわらず商品が送られてこない、相手方と連絡が取れない、といった、誰が見ても分かりやすい詐欺もあれば、本人がすぐに詐欺とは判断するのが難しいものもある。リアルで未だ猛威を振るっている振り込み詐欺も、年々進化してきて、普通の人がすぐに詐欺と見破れないようなケースがあるのと同じである。
このケースでは、あたかもコピー商品を購入したあなたが悪い、という意識を植え付けた上で、払わないと不利益が生じるとしてお金を振込ませようというものであり、リアルで発生しているような判断に悩むケースと近い。
とりあえず、すぐに振り込むよう言われるものに対しては注意するべき、という点は振り込み詐欺と同じなのだろうと思う。
もう一つ、判断を迷わせるのは、今回の案件のように知的財産権の侵害に該当する商品に絡むケースである。ある程度本人が、取引した商品がニセモノやコピー商品であることを知っていたフシがあったりすると、そこにつけこまれてしまう。詐欺と言うか、脅しみたいなものである。
ほか、知的財産権がらみであったケースでは、携帯の勝手サイトを運営している相談者が、アイドルの画像を無断で使用していたため、そのアイドルのプロダクションを名乗る人物から高額な和解金の請求をメールで受けたという相談である。
相談者は「小さな画像だから大丈夫だと思っていた」というが、画像の大小の問題ではないだろう。その点は無断使用した相談者が明らかに悪いので、速やかに削除することはもちろんである。
ただ、本当のプロダクションであれば、まずは最初に警告ぐらいしてもおかしくないように思われるし、本当にプロダクションからなのかどうかもメールだけでは判断するのが難しい。というか、本当のプロダクションの連絡先を調べて、改めて確認するよう助言したとしても、かえって「薮蛇」だったら、と思うと・・・なんとも回答に悩む相談なのである。