第二十六話: 闇のアルバイト

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第二十六話: 闇のアルバイト

 相 談 概 要

 アルバイト掲示板で
「パソコンor携帯でできるお仕事です!インターネットを使っての作業なので、男女・年齢制限などありません。出会い系、アダルトなどは一切関係ありません。まじめなお仕事です。報酬は月10万〜25万(詳細はメールにて)」
というカキコミを見て、興味を持ったのでメールした。電話番号や住所、名前も教えてもらったが、そのときは疑いもせず確認もしなかった。

仕事内容はオークションへの代理出品で、自分のIDで商品を出品し、落札されたら依頼主の口座に入金してもらい、依頼主から商品を発送してもらう、というものである。
そして、オークションに代理でデジタルカメラを次々出品し、合計25万円分落札されたのだが、依頼主が指定した口座に落札者が入金すると音信不通になった。メールの返事も途絶え、電話をしたが「現在使われておりません」とのことである。
一応警察にも相談したが「あなたは被害者にもなるし加害者にもなる」とのこと。「落札者と連絡をとり、どうするか決めなさい」と言われた。まだ自分では被害届けは出していないが、警察の方でも調べる、と言っていたのに、今日資料を持っていくと、そのような感じはしなかった。

落札者たちと連絡を取り、話をして理解してはいただいた。一応自分が学生であるということから心配してくださり、私の両親とも相談したいとのことで、今週の土曜日に話をすることになっている。一応オークションでの補償はきくみたいだが、そのためには警察に届けを出さなくてはならないようである。そうすると、お金はいくらか返ってくるみたいだが、オークションサイトの方から自分に訴えをかけられるのではないか、ということである。この場合、騙されたとはいえ自分も詐欺に該当するのだろうか。なるとしたら、お金をそのまま落札者たちにお返しした方がいいのだろうか。

 処 理 結 果

 相談者に代理出品を依頼した依頼主は、明らかに詐欺を行っているものと思われた。
まず今回の被害者は落札者であるということ、落札者側から見れば取引当事者は相談者のため、本来であれば相談者が商品を引き渡す義務を負い、それが出来なければ代金を返還する必要があると考えられること、その上で相談者がその依頼主との間で、その分の補償を求めることになるのではないか、という考えを伝えた。

しかし、何より落札者にはすぐに警察に被害届けを出し、補償制度を申請するよう伝え、また、相談者においてもオークションサイトから訴えをおこしてくることは現時点では、あまり考えなくても良いのではないか、と伝えた。

 解 説

 この相談者は、結局、報酬ももらえず、とんだ被害を被ったように思える。
 ただ、この件について警察に訊ねたところ、「被害者はあくまで落札者であり、警察に相談するのは落札者である、相談者は依頼主と結託して落札者をだましていた、という可能性が捨てきれない」との回答であった。シビアである。

 オークションの代理出品を依頼されて、このようなトラブルに巻き込まれるケース、このほかにも同様の相談を受けたことがあり、大体は「闇の職業安定所」のようなサイトで、こういったアルバイト募集のような書き込みを見つけて応募してしまうようである。依頼主の住所や名前も聞かないまま、言われるままに代理出品を請け負っていたケースもあった。
本人は決して悪いことだとは思わないで、気軽に始めてしまったのかもしれないが、結局、詐欺の片棒を担いだことになってしまう。知らなかった、では済まされない。