Sというサイトから、洗顔料一式を12,000円で注文。コンビニ前払いだったので代金を支払ったが、その後、期日を過ぎても商品が届かない。
メールで何度も連絡をとっているが返事が無く、電話したところ「現在使われておりません」のアナウンスが流れる。
相談者の指定したサイトを確認すると、複数の商品がサイト上に並び、それぞれの商品には価格が付けられ、それを「出品」している店舗が存在していた。
従って、通販サイトというよりも、一見、ショッピングモールのように見えたが、Sの「買い物の流れ」を確認すると以下の通りであり、通常の通販サイトとも、ショッピングモールとも異なっていた。
1.ご注文を頂きます。
2.在庫確認及び納期予定をお知らせします。
3.納期、ご了解の後、S指定銀行口座にお振込み頂きます。
4.入金確認後Sから出品者に出荷指示を出します。
5.お客様に出荷される日時をお知らせします。
6.商品受領の確認をメール又はFAXでSに返信して頂きます。
7.商品が無事に受領されるまでお振込み頂いた代金は責任を持ってSがお預かりし、クレームの無い事を確認した後、出店メーカーに支払いを実行します。
つまり、まずSへ代金を支払った後、商品は、その先の個々の商品を扱う店舗より直接注文者に発送されるように見受けられた。
相談を見る限りでは、相談者はSに代金を支払っていることから、このSと取引をしたと思っているようであった。しかし、商品は「出品」している別の店舗から直接届くのである。従って、相談においても、連絡不能になっているのは、このSと思われた。
また、このSに商品を「出品」するにはSへの事前登録が必要だが、出店料や維持費等は一切無料で、商品が売れれば、「出品」を行う店舗より「販売手数料」として、送料を除く商品代金(消費税込み)の20%をとる方式をとっていた。そのシステムは以下の通りであった。
1: お客様からSに注文が入ります。
2: Sより、出品者に対し在庫状況、出荷可能日時を確認します。
3: Sは上記確認事項をお客様に通知し、代金の入金を依頼します。
4: お客様からSの口座への振込みが確認され次第、商品の出荷を出品者に依頼致します。
5: 出品者は、お客様指定の住所宛てに商品を直送して頂きます。
(送料は全国一律525円・10,000円以上の購入で送料無料」にてご対応ください。)
6: 毎月20日締めの当月25日払いにて弊社宛てにご請求ください。ご請求対象は、送料を除く商品代金(消費税込み)の80%及び送料となります。
そこで、Sと連絡が取れなければ、店舗に直接連絡を取ってみる方法を考えたが、商品広告ページに載せられている店舗情報は「店舗名」と「所在地」だけであり、「電話番号」や「メールアドレス」「担当者」等々の記載は一切無かった。
そこで相談者には、Sと共に、この店舗へも書面にて連絡を取ってみるよう助言した。
一般的なアフィリエイトは、事業者に登録し自分のサイトやブログ等に、その事業者の広告を貼り、その広告を見て商品が注文されたり販売サイトに人が訪れたりすると、それに応じた報酬が事業者からその個人等に支払われるシステムである。収入として得られるのは広告収入と考えられる。
それに比べて、ドロップシッピングと言うのは、自分のサイトやブログ上で、広告商品の注文だけを受け付け、商品発送は別の事業者が行うシステムである。アフィリエイトの進化版と考えられ、直接ネット通販を行うのと比べ、在庫を抱えないで済み、自分の好きな商品を好きな価格で販売することが出来る。簡単に言うと電脳卸業であり、収入は商品代金である。
アフィリエイトに、それを仲介するサービスプロバイダがいるのと同じく、ドロップシッピングにもサービスプロバイダがいくつか存在する。アフィリエイトを行う人をアフィリエイターと呼ぶのと同じく、ドロップシッピングを行う人をドロップシッパーと呼ぶ。
今回のSが行うサービスは、ショッピングモールというより、このドロップシッピング方式の方が近いと思われた。一見、決済エスクローにも見えるが、万一商品が発送されなかったというときに、代金が返還されるという約束はどこにも記載が無かった。
アメリカなどでは個人が行うドロップシッピングが流行ったらしいが、ドロップシッパーが商品発送元に代金を送金後、肝心の商品発送元が注文者に商品を送らないというトラブルが発生しているようである。トラブルが発生したときに責任の所在がイマイチ分かりにくい、悩ましい問題ではある。そこから考えると今回のケースでいえば、ドロップシッパーが代金を持ち逃げしている形である。
アフィリエイトが日本でも大分一般的になってきたのと同様に、今後個人のドロップシッピングも一般化していくのかどうかは現時点では分からないが、こうなると、インターネット上では、ますます事業者と個人の区別が難しくなっていくのである。
特定商取引法の表示義務は誰が負うのかも、今後の課題だと思われる。