第二十八話: 個人輸入代行の落とし穴(その1)

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第二十八話: 個人輸入代行の落とし穴(その1)

 相 談 概 要

 タイにある日本語表記のサイトで、プロペシア(経口の男性型脱毛症(AGA)用薬)を注文した。いままでも、ひと月おきに同じ商品、個数を注文していたのだが、今までの6回はちゃんと振込み後にも連絡があったし、商品も届いていた。
しかし今回の注文では、注文後に送られてくる自動発信メールを最後に連絡がとれなくなってしまっている。振込み後に来るはずのメールも来ないのでおかしいなと思い、メールで再三連絡をしたのだが、未だ連絡が取れない状態である。

インターネットのホームページはもちろん、振込先の口座等もまだ活きている。不安に思いタイの電話番号に電話をしたところ、電話番号が存在しない、とのメッセージが流れた。
 掲示板を見ると、他にもたくさんの被害者がいるようである。今後どうしたらよいか教えて欲しい。

 処 理 結 果

 サイトを確認すると、すべて日本語表記であるが所在地はタイになっていた。扱っているものは主に薬品類で、直接サイトが販売しているのではなく、輸入代行業者となっていた。
 相談者はサイトから直接購入していると思っていたので、先ず、当該サイトは輸入代行業者であるということ、その場合、個人で使用する分だけであれば、海外から処方箋なく薬品を輸入できるということを説明した。

 ただ、タイの事業者と電話やメールにて連絡不能になっているようであれば、実質解決が困難になる可能性が高いので、先ずは事業者の所在地に書面を送り、様子を見てみたり、警察に相談してみるよう伝えた。
その上で代金の振込機関が国内の金融機関であれば、その金融機関支店に連絡して事情を説明し、口座名義人に連絡を取ってもらったり、名義人の情報について教えてくれるよう依頼する、といった方法も考えられた。特に他にも同様の被害者が居る場合は、もしかしたら金融機関の協力も得やすいかもしれないので、他の被害者と連絡が取り合えるようであれば情報交換をするよう伝えた。

そのほか、現地の警察に連絡を取ってみたり、大使館に情報提供してみる方法も考えられる。

 解 説

 医薬品や化粧品など、薬事法で定められているものに関しては、個人が自分で使用するために輸入する場合は、大体2ヶ月分以内であれば、個人輸入をすることができる。その場合は、他人にあげたり販売したりすることはできない。

 こういった医薬品を販売するには当然許可が必要であるが、輸入代行業者は、文字通りその個人輸入の事務代行を行うだけの業者であり、直接医薬品を自分たちで販売するわけではないので許可は必要ない。
しかし、非常に微妙な立場の事業者も少なくなく、個人輸入代行と称している場合でも、不特定多数に対して広告を行う等、その形態によっては、薬事法違反に該当するおそれもある。また医療機関の処方箋が無いまま、その効果だけを期待して医薬品を購入して使用することは、その医薬品によっては日本国内で無認可である場合も多く、また副作用の面からも、とてもリスクが高い行為と思われる。

ただ、当時「プロペシア」という名称を検索エンジンに入れると、製薬会社を抜き一番トップに表示されていたサイトであり、こちらで相談が入ったときに確認しても、確かに検索結果のトップに表示されていた。

そのため被害者も多く、しかも被害者掲示板でもこちらの機関が紹介されたおかげか、このサイトで被害にあったという相談が多く寄せられた。他の医薬品のケースもあったが、ほとんどの相談者がこの「プロペシア」を注文しており、しかも特徴的だったのは、初めてこのサイトと取引をして被害に遭った人はほとんどなく、みな大体継続してこのサイトと取引をしてきており、今までは何も問題なく取引ができていた。サイトをすっかり信用していたところに、突然の連絡不能、商品未着。これは、インターネット取引の避けられないひとつのリスクといえよう。
しかもその上、このサイトが海外であるというところで、この被害救済をさらに困難にしてしまっていた。同じ事業母体で別サイトもあり、現在サイトは存在していない。

 輸入代行業者との取引において発生するトラブルで税関がらみのケースを、後にもうひとつ紹介する。