第三十話: メールだけでは危険!“No Show Charge”

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第三十話: メールだけでは危険!“No Show Charge”

 相 談 概 要

1.
海外旅行を計画しウィーンに行くことにした。ホテルの手配をメールで送り、翌日OKとのメール返信がきたのだが、その翌日、予算オーバーになったため、ホテルから届いていたOKの時のメールでキャンセル依頼を送った。その際、とくにアドレスエラー等は無く、ホテルへはキャンセル連絡が送られたものと考えた。
数日が経過して返信が来ないことに不安になり、再度ホテルへ同じ文章でメールを送ったが、やはり返信が来なかったので、ここのホテルはこういったシステムなのだと考え、管理不十分なのだなと思いつつ、そのままにしていた。

その2ヵ月後、ホテルよりキャンセル料1泊分の請求があがってきたのを見て驚き、慌てて現地に電話で確認をした。会話の中で、再度通話したまま、キャンセル依頼を送信したアドレスにメールを送ったのだが、ホテル側には届かない様子だった。改めて別のアドレスを教えてもらって、以前送信したキャンセルメールを転送し、ホテル側のサーバーに不具合がないかどうか確認してもらった。

先方は、最初のキャンセルメールは届いていないという理由で取消料を請求する、と強行な様子。私としては間違いなくキャンセル依頼は届いているはずなので、宿泊していないし、なんとか免除してほしい。

2.
イタリア旅行のため、ホテルサイトからネットで5泊分予約した。クレジットカード番号を入力し予約は成立した。
しかし、その後ホテルから確認(Confirmation)のメールが送信されないため、当方からホテルページに記載のホテルの問い合わせ先メールアドレスに、予約確認の返答を求めるメールを2回送信したが返事はなかった。
そこで、このホテルは事情があって営業していないか架空ページと認識し、別のホテルを予約し、そこに宿泊した。

帰国後クレジット会社からホテルから1泊目分の請求が約2万円あった。キャンセルせずにホテルに行かなかったため、1泊分がチャージされたとのこと。前述の事情をカード会社に説明したところ、一旦はチャージが取り下げられ、カード会社が先方ホテルに状況を説明、当方送信のメールも提示し、返金(REFUND)を求めて交渉した。

しかしホテルはクレジットカード会社に対し、「ネット予約時、当方がクレジットカード情報も入力し、その際、自動的に予約受付のメールを当方に送信し契約成立している、従ってREFUNDには応じられない」との主張である。
ホテル側が送付したというメールのコピーは提示されたが、当方は受信していない。最終的にホテル側には聞き入れられず、その結果をうけ、カード会社からは来月再請求されることになっている。

 処 理 結 果

 1.のケースでは、キャンセル通知は出したが、それに対してホテル側からの返答が無く、2.のケースは予約成立後、ホテル側から何も返信が無かったということから、いずれも他のホテルを予約してそのまま放っておいたところ、結果、きちんとしたキャンセル手続きがなされていなかったということで、ノーショーチャージ(No Show Charge)として、一泊分の宿泊料をクレジットカードに請求されているという状況であるということを説明した。
 ただ、いずれもメールの不達が原因と思われ、結果、ホテル側とのキャンセルの合意がきちんとなされていなかったため、交渉は難航する可能性があった。

 1.のケースでは、キャンセルの意思表示を行っているのであるから、先ず請求についてはクレジットカード会社に相談して、その間、ホテル側とも引き続き交渉してみるよう伝えた。
 ただ、2.のケースでは、既に半年間クレジットカード会社を間に挟んで交渉したにもかかわらず、ホテル側の強硬な態度にて、再度請求がかかる段階であったので、今後その支払いに納得できない場合は、支払いを停止して、訴訟による解決を検討するよう伝えた。

 解 説

 海外の宿泊施設を予約する際は、クレジットカード番号を聞かれることが多い。これは海外の宿泊施設では、予約後、事前のキャンセルなくして宿泊しなかった場合に、一泊分の宿泊料を請求される、ノーショーチャージ(No Show Charge)のシステムがとられているからである。これらは予約時の規約等に定められている場合が多い。この場合、クレジットカード会員に対しての事前の承認は無く、該当した場合は自動的に請求がされる。

1.のケースでは、キャンセル通知をホテル側に出しているにも関わらず、ホテル側に、そのキャンセルメールが届かなかったため、正式なキャンセル手続きがとられなかったものと考えられる。
 2.のケースでは、予約成立後、そもそもキャンセルメールすら出しておらず、予約確認のメールを出しても返信が無いため、ホテル自体が営業、若しくは存在していないものと認識し、そのまま放っておいたものである。

 さて、間違いなく相手方にメールと送ったとしても、それで相手方に間違いなくメールが届いたという証拠にはならない。それは逆に相手方から発信されたメールが、間違いなくこちらに届いているとも限らない。
現在のネット事情ではメールだけでは不確かな部分もあり、少なくともメールが届かない、ということで不安に思えば、いくらでも電話にて確認することは可能と思われる。海外旅行に際して、旅行代理店を通さず、自ら現地のホテルを予約しようとしているのであるから、少なくとも現地の商習慣や言葉は達者なはず(?)であろう。

海外だろうが日本だろうが、自分の責任で申込みを行って、その結果、予約が成立している以上、そのキャンセルには相手方の同意をキチンと確認しておかないと、このようなトラブルの元になりがちである。放っておいても、勝手にキャンセルにはならないのである。