第三十二話: 『書き込み』に対する請求

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第三十二話: 『書き込み』に対する請求

 相 談 概 要

(1)
ボランティア活動の一環で市民団体の広報のお手伝いをしており、各地のボランティアセンターの掲示板や、ボランティア情報広場といった掲示板に、参加者を募集する書き込みをしている。

決して営利目的ではなく、書き込む際はトラブルにならないよう注意しているのだが、先週の金曜日に不注意で「宣伝禁止」と書かれているのに気づかず、その掲示板に書き込みをしてしまった。
昨日、サイト管理者からメールが届き、『「迷惑掲載料」として1万円を請求する、2週間以内に銀行振り込みもしくは郵便振替、遅れた場合は延滞料が発生する(金額は明記なし)』と書かれていた。

サイトを見ると、該当ホームページの掲示板「利用案内」というページがあり、『宣伝行為は罰金を請求する』旨記述があったが、掲示板に書き込む際はそこを読まずに内容がアップできてしまったので、全く気づかなかった。
不注意を理由にお金を払わずに解決できるだろうか。

(2)
先日、個人のHPなどに設置されている検索エンジンに、登録情報も自動で書き込みができる専用ソフトを使用して、書き込みをしてしまった。書き込み内容は、以下の通りである。

カテゴリ:各種ビジネス・・生活関連ビズ
タイトル:在宅ワークでカードローンにさようなら
紹介内容:子育てママやサラリーマンにオススメの在宅ワーク

通常だと、登録先のサイトから、登録受付のような自動返信メールが来るだけだが、自動で複数書き込みをしたサイトの中の1つから、以下のようなメールが来た。

『広告料金をご承諾の上、サイト紹介へ広告掲載有難うございます。つきましては、当方サイトへ広告掲載されましたので、規約に従い広告料10万円を3日以内に下記口座まで、至急お振込み下さい。
・口座名 ○○○ 
なお、振り込が遅れる場合は、徴収に伺います』

書き込む先のサイトも自動で検索して書き込みをするといったソフトを使用していたので、このメールが来るまで、どちらのサイトに掲載がされているのかもわからない状態だった。調べたところ、私が自動書き込みソフトを使用して登録依頼をしたページはすでに削除されたと思われ、確認できなかった。

上記のような請求書という件名のメールが来て初めて、サイトの中の下記のページを確認したところ、右端の「新規登録留意事項」というところに、以下のように書いてあった。

・地域所在の個人・法人・団体の登録は無料です。
・登録は勝手ながら、地域所在の個人・法人・団体に限らせていただきます。それ以外の地域のサイト書きこみに付いては、一回書き込みにつき10万円を請求いたします。
・以下のサイトは誠に勝手ながら登録をお断りしております。該当する登録は予告なく削除させていただきますと同時に、広告料(10万円)の請求を致します。
アダルト関連のサイト
出会い系のサイト
その他管理者が主観的にふさわしくないと判断するサイト

自動書き込みソフトを使用していたので、各サイトのこのような規約の存在は分からない。私は請求通り、代金を支払わなければいけないのだろうか。

 処 理 結 果

(1)
 当該掲示板のサイトを確認すると、利用規約が存在し、『広告、宣伝、勧誘行為の禁止』とともに、『注意:無断で広告を掲載された場合は、迷惑掲載料として一回の掲載につき1万円をお支払いいただきます』と記載があった。

ネット上のサービスを利用する際に利用規約が予め定められており、その内容が事前に確認できる状況であれば、基本的にはユーザはその利用規約に同意したものと扱われ、「不注意を理由にお金を払わずに解決できるでしょうか」とあれば、相談者の不注意であれば、かえって支払う必要が出てくるように思われた。

そこで、この利用規約に有効性があるかどうかを考えると、『電子商取引に関する準則』では、利用規約の有効性について説明があり、「ウェブサイト中の目立たない場所にサイト利用規約が掲載されているだけで、ウェブサイトの利用につきサイト利用規約への同意クリックも要求されていない場合」は(サイト利用規約が契約条件に組み込まれていないであろう場合)に該当するとされている。
従って、もし今回のサイトの利用規約の表示が分かりにくく、また書き込み時にも確認することが出来ないような流れであれば、この準則の考え方が応用できるのではないか、と伝えた。

 従って、先ずはそれら請求にすぐに応じるのではなく、事情を説明して様子を見るよう伝えた。

(2)
この場合、予め設定をすることで、書き込み先の掲示板等を全て自動検索し、さらに書き込みに必要な登録も全て自動で行われ、自動で好きな文章が書き込みできるような、自動書き込みソフトを使用したところ、広告の書き込みが有料であるサイトにも自動で書き込んでしまっていたというトラブルと見受けられた。

ただ、各書き込みサイトには、それぞれのルールがあり、書き込みの際は、基本的にはそのルールに従って書き込む必要があること、自動書き込みソフトを利用したのは相談者の都合であり、またソフトが自動的に書き込んだからといって、そのサイトのルールに従わないでも良いという考え方は難しいと伝えた。

しかし、広告内容を書き込んだからといって、広告料10万円がすぐにかかるという合理的な根拠も良く分からないので、すぐにその請求に応じる必要は無いのでは、と伝えた。
また、相談者の個人情報がどこまで登録されているのかが詳しくは分からなかったが、書き込みが行われたサイトからのメールでは、相談者の本名が記載されていたので、書き込んだurlをたどれば、相談者のサイトにたどり着き、おのずと個人情報は知られる可能性はある、しかし、だからといって、今のところ直接徴収に来るとは思えない、とも伝えた。

 解 説

 (1)は相談者の手動による書き込み、(2)は自動書き込みソフトを利用した書き込みにおいてのトラブルである。
 これら相談の難しい点は、この相談者たちが「消費者」という位置づけで適しているかどうか、はっきりとはいえない点である。

 ただ、(1)はボランティアの参加者募集とのことで、営利目的では無いと思われるし、それを「広告、宣伝、勧誘行為」としてひとくくりされてもかわいそうな感じもあるが、各掲示板の場の雰囲気を感じ取ってから書き込みするように心がけたほうが賢明である。

 (2)に関しては、わざわざ自動書き込みソフトを利用して、在宅ワークの広告を書き込みしていたケースであり、その書き込み内容から見ても、正直、あまり同情には値しない。
しかも、第三者的に見たら、ほとんどスパムメール送信行為と同じように見える。このような自動書き込みソフトを使われてゲリラ的に書き込みがなされた掲示板の管理者になってみれば、迷惑極まりない行為だろう。ブログのトラックバックに、全く関係ないサイトを張られるようなものでもある。

 そのような書き込みがなされた場合、大抵の管理者は、予め規約に削除権を定めておき、書き込み人に無断で削除していくことになろうかと思われるが、中には、今回のケースのように『罰金制』を取るサイトも存在する。よく街中で、「駐車禁止」と書いても効果がないので、「駐車1回につき10万円いただきます」と書いておくケースとも似ている。

 結果に対し責任をもてないようなら、このようなソフトは使用すべきではないと思う。