第三十五話: ブランド品トラブルの恐怖

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第三十五話: ブランド品トラブルの恐怖

 相 談 内 容

 母の友人Aさんに本物のブランドバッグの出品を頼まれ代理出品した。商品の質問欄から「24時間以内に振込みできます」ということで、開始価格の50,000円で即決(オークションで入札イコール落札とすること)を頼まれ応じた。
 しかし振り込みは24時間を経過し、取引相手とは違う名前で振り込まれていたためメールで確認をしたところ、「違う名前だが振り込んだ」と返信があったので、品物を着払いで発送した。

 後日相手側から電話がかかってきて、電話に出ると「このバッグはニセモノだ。返品してほしい。私は警察と繋がって、ブランドの物を鑑定しているのでニセモノだとすぐわかる。返品は代引きで送る」と言われた。
 まず代引きで返品するという点(送られてきたら品物の確認のしようがない)警察に繋がっているのに通報せずに返品を要求するという時点でおかしいと思い、私は「Aさんに確認をとるので後ほど連絡する」と電話を切り、Aさんに確認を取ったところ、確実に本物だという。
 そこで、Aさんと落札者で連絡をとってもらうことにした(私自身ブランド関係の知識が乏しいため)。そしてAさんは、自分のほうに連絡をくれるよう落札者に言いましたが、落札者はその後何度も私のほうに電話をかけてきた。私には一切関わらない約束のため私は電話に出なかった。

 その後に内容証明郵便で、私の元に「商標登録に違反した品物のため民事と刑事で訴訟を起こす」と知らせてきた。そしてAさんと落札者との話し合いの結果、落札者の話は信用できないため、Aさんに品物を送ってAさんが鑑定に持っていき、ニセモノなら返金と話がついた。
 その後品物が届いたとき、品物をAさんが確認したところ、送ったものとは違うニセモノが送り返されてきた。私は送り返された品物は触ってもいないし、見てもいない。そしてAさんは物が違うため、落札者に物を送り返した。その後、私の名前でAさんに郵便が送られてきたが、Aさんの名前が違っていたため受け取り拒否を行った。私が送った覚えは無い。

 先日また私の元に書留郵便がとどき、「ニセモノなら返金するとの約束が未だ返金がされていないため、○○(私)を悪意ある犯罪行為とし、民事、刑事ともに、訴訟をおこします。警察(大分警察)には届けをだし、警察側もあなたの矛盾を確認しております。期日までに指定の口座に振り込めば訴訟の件は取り下げます」とかかれていた。
 そして、私に大分警察から電話が来て
「大分警察の者ですが、(名乗りはしない。しかし電話番号は大分警察)貴方から、バッグがニセモノのだったのに返金がされないと届けがありました」
 といわれたので私は
「私は本物を送りましたが、返品された物が私の送った物とは違うため返金には応じません」
 と答えたところ
「あなたの送った物が本物という確証はあるんですか?」
 ときたので
「なら送り返された物が私の送った品物という確証はあるんですか?」
 と答えたら
「送った品物は本物なんですか?」
 と埒があかないため私が
「こちらが、弁護士などの司法機関に出向く」
 と電話を切り、以後警察からの電話はきていない。

 これからどのように対処していけばよいのか。

 処 理 概 要

 代理出品とのことだったが、相談者のオークションIDで取引し、代金振込先を相談者の口座にしていたのであれば、取引当事者はあくまでAさんではなく相談者であること、また、返送されてきた商品がニセモノであったというトラブルは、残念ながらブランド品オークション取引においては良く聞くトラブルのひとつであり、自分の主張に確証が無いと解決が難しくなる場合もあることを伝えた。

 ただ、経緯を見ると、現在は返送された商品をさらに送り返した上、代金は未だ相手方に返還していないとのことだったので、しばらくは相手方の出方を見て冷静な対処を心掛けるよう伝えた。
 その間に、例えばレシートや保証書など、Aさんが正規店で購入したという証拠をなるべく確保しておくように伝えた。そして、属性を見ると相談者は未成年者であったため、相手方の出方によっては親と良く相談して、今後の対処方法を検討しておくよう伝えた。

 解 説

 ブランド品のニセモノのトラブルは、多くは落札者側が「送られてきたものがニセモノだった」という内容だが、出品者側においては、今回のような「本物を送ったのに返品を受けたらニセモノが返送されてきた」というトラブルは結構昔からある。

 仮に保証書やレシート、オークションに使用した画像が残っていたとしても、確実に「それ」を送ったという証明が難しい。なにせ出品者はオークションなどにおいて、まさか送ったものと違うものが返送されてくるということが、すぐには予想できない。そのくせ、落札者側の「ホンモノと書かれていて画像を信じて落札したのに、実際、送られてきたものがニセモノだった」という苦情の方が、第三者的にははるかに信じてもらいやすい。なんだか悪魔の証明を迫られているみたいで、個人が中古品を出品している以上、正直、如何ともし難いトラブルなのである。

 でも、ネットに限らずブランド品を扱う店舗などでは、予め店頭などで「ブランド品は返品不可」と謳っているケースがある。これは、このケースのように、返品されたものがそっくりのニセモノであった、というトラブルを防ぐためでもある。
 ブランド品は、売り手においてもリスクの高い商品のうちのひとつなのかもしれない。