第三十六話: 肝心なところが・・

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第三十六話: 肝心なところが・・

 相 談 内 容

(1)
 昨日インターネットで、航空会社のサイトからエコノミークラスの航空券を購入した。しかし学校の都合でキャンセルをしたく、その日のうちに電話をかけたが、「購入したチケットは全額返金されないもので、キャンセルしたい場合は飛行機に乗らなければ良いだけで、代金が惜しいなら他の人に売りなさい」との対応をされた。親会社の航空会社に問い合わせても「運営方法が違うので、どうすることもできない」と言われた。

 サイト上、FAQには、エコノミークラスの返金はできると書いてあったし、私が航空券を申し込んだ際の画面上には、このチケットは返金されないものだと明記はされていなかった。電話応対の人からは「申し込んだ際の規約を読んだのだから責任はすべて客側にある」と言われた。しかし、この航空会社のサイト自体は日本語表記だが、その規約というのは英語で書かれており、すべて理解できる方はほとんどいないと思う。半年後の航空券で、キャンセルできないというのも納得がいかない。

(2)
 オンラインゲームのサイトに数ヶ月前に登録した。そこでは、30日間の無料期間があったが、あまり好みのゲームがなかったので、無料期間が終わる前に解約する予定だった。
その後しばらく忘れていたが、先日クレジットカードの明細を見たところ、月額利用料金が引かれていたので思い出し、解約手続きを取ることにした。

 ホームページのヘルプに解約方法が載っており、それによると「メール」[FAX」「電話」の3種類あるとのことだったので、メールで解約を申し出た。すると返信があり「解約は電話でしかできない」と書いてあった。
 ホームページ上の案内と違うことに不満を覚えたが、解約できるならそれで良いので、とりあえず電話をしてみた。ところが何度電話してもお話中で、全くつながらない。10回ほどかけてもダメだったので、もう一度メールをして「ホームページでメールでも解約を受け付けると書いてあるのだから、メールで解約してください」と申し出たが、その返信も「解約は電話で」としか書かれていなかった。もう、メールでは埒があかないので、つながるまで電話を試みた。

 その後3日間電話をかけ続け、やっと今日つながった。しかし、最初は日本語でアナウンスが流れるが、途中から急に英語に変わり先に進めない。何か間違ったかと思い、もう一度かけ直したが、やはり途中からアナウンスが英語に変わる。結局電話での解約は断念した。どうやって解約して良いのかわからず、困っている。

 処 理 概 要

(1)
 こちらでサイトを確認すると、“エコノミークラスの返金はできる”と書いてあるというFAQのページが、なぜか見ることが出来なかった。相談者に、当時どのように記載があったかと尋ねたところ、以下の記載があったとのことだった。

・エコノミークラスの座席料は、払い戻し可能です。(一部条件により、払い戻しができない場合があります)また、追加料金なしで日付、旅客者の氏名、出発地や目的地の変更ができます。(料金の差額は発生いたします)
・エコノミークラスは出発日・出発時間までにキャンセルをお申し出にならない場合、お支払いいただきました代金は返金できませんのでご注意下さい。

 また、チケット購入画面における、キャンセルに関する表記内容を尋ねたところ、チケット購入画面には、返金に関することは記載されていなかったとのことだった。航空会社の電話対応した人が言うには、約款(英語表記)の画面上に払い戻しができないと書かれてあるから、それを客は同意しているのだから、払い戻しはできないとのことだった。また、安い航空券なので、客側にはリスクは伴うのだ、といわれたとのことだった。

 そこで、こちらで再度サイトを確認すると、この航空会社のサイトから航空券を購入することが出来るようになっており、また基本的には全て日本語表記されていたのだが、約款等が記載されているリンクをたどると、突然英語表記に変更された。
 その英語表記のページには、さらに航空券の種類が記載されており、実は、エコノミークラスにも2種類存在していることが分かった。そのうちのひとつは、キャンセルが出来ない旨の記載がなされてきた。
 従って、FAQに記載のあったという(一部条件により、払い戻しができない場合があります)という条件が、これに該当するのではないかと推測された。

 基本的には、注文時、このような条件に関して注文前に分かるように表示がなされている場合は、その取引条件に承諾の上で注文を行ったものと判断されるので、今回であれば
相談者の都合によるキャンセルにおいては、払い戻しはなされないという流れになろうかと思われる。
 しかし、当該サイトは、一般的なページは全て日本語で表記されており、日本語表記のページでは、少なくとも日本人相手に商売しているものと考えられるにも関わらず、キャンセルや返金に関する重要な部分が記載されている約款に関しては、あえて英文で記載されていることを考えると、この英文で記載されている内容が有効かどうか、非常に疑問に思われた。

 従って、相談内容を見る限り、英文記載の部分は無効と主張して、事業者に対し、通常のエコノミークラスと同じように払い戻しに応じるよう主張しても良いのではないか、と伝えた。

(2)
 サイト上のヘルプページには、確かに、解約方法として「メール」[FAX」「電話」で出来る旨、記載があった。しかし、解約手段が実際は電話だけであり、しかも、その電話サポートが英語対応であるということである。

 そこで相談者には、今まで解約の意思表示をしたメールを保管しているようであれば、先ずはそのまま手元に保管しておくこと、また、解約の意思表示を証拠として残すため、事業者の所在地に、書面にて解約通知を出しておくよう伝えた。文面コピーを取り、配達記録や簡易書留郵便にて通知して、その記録も全て保管しておくよう伝えた。

 また、今回はクレジットカード決済ということだったので、すぐにクレジットカード会社に連絡し、事情を説明しサイトと解約手続きが出来ないので、クレジットカード会社にて調査して欲しい旨、またそれまでの間引き落としをストップするよう、相談してみること、また、費用がかかる可能性があるが、カード番号の変更も相談してみるよう伝えた。

 解 説

 (1)のケースは、外資系航空会社であったが、キャンセル等が記載された約款部分だけ、なぜか英語表記であった。そのほかの部分は最後まで日本語表記である。
 FAQのページはエラーが出るため、最後までこちらでは記載内容が確認出来なかったのだが、そこには日本語で『エコノミークラスの座席料は、払い戻し可能です。(一部条件により、払い戻しができない場合があります)』と記載し、その一部条件については英語表記で書かれている、しかも申し込み画面にはキャンセルにかかる記載が無い、とくれば、「約款に書かれているので、それを承諾の上で注文したのでしょう」と言われても、それでは納得できないのも当然だと思われる。

 (2)のケースも、やはり外資系企業であったが、日本法人であるため、サイトの表記はもちろん全て日本語である。しかし、サイトの記載と異なり、解約するには電話でしか手続きできず、しかもアナウンスがなぜか英語である、といった具合である。これでは出口をふさがれているようなもので、非常に理不尽である。
 ちなみに、この事業者に関しては、他にもオンライン上で複数の無料・有料サービスを提供しており、(2)のケースと同じく、トライアル期間中の解約手続きは専用電話による手続きが指定されており、その電話がまるっきりつながらない、というトラブル相談があった。 

 外資系の有料サービスの契約(アダルトサイトを含め)に多い決済方法が、先ず“お試し無料”といったトライアル期間が設けられており、しかし、登録時には、あらかじめクレジットカード番号を入力させ、トライアル期間内に解約手続きをしなかった時は、自動的にそこから料金を請求するという方法である。
 トライアル期間内に解約しないと自動的に有料会員にされてしまうため、いざ、その期間内に解約しようとしても、なんだかんだと妨害(?)に遭い、結局、解約できないまま料金を請求され続けてしまうのではないか、という恐怖が襲う。

 (1)(2)どちらのケースも、どうでもいいところならともかく、肝心なところをわざわざ日本語に直さないでおくなんて、はっきり言って故意としか言いようがない。