(1)
オンラインショップのサイトに、17インチ液晶モニターの広告が載っていた。そこにはスペックとして『解像度1280×1024 色数1677万色』とあった。さらに詳細スペックの場所には、メーカーのホームページにリンクがされていたが、クリックしてもメーカーのホームページに行けなかった。そこで、この広告に記載されていたスペックを信用し購入手続きを行った。
届いた商品の取扱説明書を確認したら、色数が1620万色と記載されていた。そこで、返品依頼のメールを出したが、「これはメーカーのスペック変更」といって返品に応じてもらえない。なお、私がメーカーに問い合わせた結果、そのようなことはないとの返答を頂いている。
私はショップの広告に記載されているスペックを信頼し、購入先を決定し購入手続きをしているし、希望のスペックが満たされてなければ他の業者を選択することを検討する。高品質なスペックを記載し、価格を安く表示すれば飛びつくのは当たり前で、スペックが違っていたら返品可能ではないだろうか。
(2)
ネットオークション上、事業者出品で、メーカー製のノートパソコン「07年春モデル最上位機種」が119,500円で出品されていた。しかし、オークション上では、付属品欄に「ディスクセット(リカバリディスク等が含まれています。)」と書いてあるにもかかわらず、届いたノートパソコンには、『Office2007』が付属していなかった。
しかし、オークション説明とタイトルでは、メーカー製ノートパソコンの品番が明記され、それとともに、「商品の詳細はこちら」として、その品番商品に対するメーカーの広告ページがリンクされており、そこには、当該品番の商品には『Office2007』が付属するということが記載されていた。
従って、欠品として『Office2007』を納品してもらうか、出品者都合によりオークションの取消しをして再出品して欲しい。
しかし事業者からの回答は「出品時点からOffice 2007のパッケージは含まれておりません、オークション商品ページ上の『ディスクセット(リカバリディスク等が含まれています。)』という表記に関してですが、これはシステムリカバリディスクやアプリケーションリカバリディスク等の事を指しており、Office 2007が含まれているというわけではございません」「ご提案頂きましたオークションの取消しに関してですが、基本的に一旦成立したオークションを取消す事はございません。公正なオークション運営にご協力を賜りますよう、お願い申し上げます」というものだった。その後、返答は無い。
ただ、私はこの欠品をすぐに対応してくれるものと思い、商品は既に使用開始している。具体的には、商品の汚れ(液晶に若干指紋がある)、個人情報の流出、導入ソフトのアンインストール作業、書類に書き込みがあれば消去作業、梱包の袋を破ってある等々で、それほど荒く使っては無いつもりだが、代金も支払ったので自分のものとして使用をはじめている。梱包のビニール袋は欠品になると思うが、液晶はこの事業者が中古専門なので、プロの技できれいにできると思う。
(1)
相談が入った時点でショップのサイトを確認すると、既に『色数1619万色』という表示に修正されていた。そこで事業者は、どうして返品に応じないのか、相談者にその理由を尋ねたところ、この件に対する事業者からの返答メールを送ってきた。
内容は、
『大変申し訳ございません。上記商品は当初メーカー詳細ページにて1677万色表記がございました為、当店ウェブ上もメーカー表記に合わせておりました。その後、メーカーページ更新の際に表記が変更されたと思われます。
大変恐れ入りますが、当店ウェブページ上の記載につきましては、保証するものではございません為、ご了承いただきますようお願い申し上げます』
というものだった。
確かにサイト上の規約には、サイト上の内容について、正確性、正常性、もしくは信頼性について一切の保証をしない旨、記載があった。
また、このような機器等の購入をする際は、通常、他店舗においても同様商品を比較検討のうえ、購入先を決めるものとも考えられるため、同じ商品において、当該商品の広告表示にあるスペックが異なっているということを、相談者が全く事前に認識出来ない状況とまでは言い切れない可能性もあった。
しかし一方、相談者が注文した時点では、当該サイト上では当該商品が『色数1677万色』と表示されており、それにも関わらず届いた商品の色数が『1619万色』であり、さらにリンク先のメーカーのサイトには直接飛べず、メーカー側のサイトで当該商品のスペックがすぐに確認することが出来なかった状況とも思われた。
そして、事業者の規約の内容は、自らの広告の内容について全く保証しないと断言するようなものであり、そのような規約内容の有効性が疑問である上、少なくとも表示されていたスペックと届いた商品のスペックが異なっているのであれば、その注文に対する返品は相談者の都合によるものではないと考えられた。
また、売買契約は相談者と事業者間で行われているので、相談者の相手方はあくまでこの事業者であり、事業者はメーカーと取引関係により、そのトラブルを解決するという流れになろうかと考えられた。
従って今回は、商品を返品し事業者に代金の返還を求めることは可能と思われたため、具体的な方法について相談者に助言することにした。
(2)
オークション画面を確認したところ、当該オークションページの説明や画像、及びタイトルを確認する限り、その中では特に『Office2007』が付属するという記載は無く、リンク先のメーカーのページでのみ、当該品番の商品には『Office2007』が付属する旨、説明があった。
そこで、店頭等で通常に販売されていた当該品番のモデルにおいては、全てにおいて『Office2007』が付属していたという状況があり、またオークションにおいても、その品番を明記した上で、商品説明において、『Office2007』が付属すると説明のあるメーカーの広告ページへリンクがされていたのであれば、今回、この相談者においても、それと同様の商品を期待するという点もある程度理解できた。
また、出品者が事業者であることを考えれば、出品商品がメーカーにおける販売状態と異なる状態である場合、それを事前に説明しておく必要性がより求められるように思われた。
ただ、だからといって、その『Office2007』を事業者に無償で提供するよう求めて交渉しても、現実的には当該事業者がその求めに応じる可能性は低く、また商品は相談者により既に使用されているとのことであったので、オークションの取消しにより返品等の対応をする場合においても、相談者が、商品の使用により利得があったと認められる場合や、引渡された状態のままで返品することが事実上不可能であれば、そこに全額返金を求めるのもなかなか困難と思われた。また、この状態で事業者がわざわざ自らの評価がマイナスになる「出品者都合による取消し」手続きをするとも思えない。
従って、それら方向での解決が少々難しい可能性がある場合、例えば減額交渉など、相談者においても譲歩できる部分を提示して、双方合意しやすい内容にて早期解決を図るような交渉を続けるよう伝えた。
ネットショップなどでは、オークションでも商品広告においても、参考としてその商品のメーカーのページをリンクさせていることは多い。でも、そのリンク先の記載内容と商品の広告内容が違っていたりすることでトラブルになることが、ネット取引では往々にしてある。アフィリエイトでも発生する可能性はあると思う。
従って、ネットショップや比較サイトなどでは、よく、リンク先の記載内容に関しては責任をとらない旨の免責事項が記載されている。
(1)のケースは、事業者は、“自分たちはメーカー側のスペックの記載が間違っていたのを、そのまま表示していただけだから責任は負わない”という主張であった。さらに、自サイト上の記載内容についても責任をとらない旨、規約に書かれていた。
ただ、そうであれば、メーカーや事業者側のミスで間違っていた表示を信じて商品を購入した客は全く救われないわけで、しかも、相談者のケースは広告通りの高性能の商品と交換しろというのではなく、それなら返品して欲しいと主張しているのであるから、それに応じられない事業者側の合理的な理由が見当たらないように思う。
また、この事業者の規約には、注文後、客側からのキャンセルには応じないか、または高額なキャンセル料を請求するようになっているのだが、事業者側からは契約成立後もいろいろな理由にてキャンセルできる旨、記載がされていた。そのほかの規約内容においても非常に客側が不利なものであったが、そうでもしないと安売りはやっていけないのかもしれないと思うと残念である。
(2)のケースは、なかなか判断が難しいところでもあるが、オークション上には『Office2007』が付属するという明記は一切無いが、「詳細はこちら」としたリンク先のメーカーページには当該商品に『Office2007』が付属するという表記があるため、それを欠品として求めたものである。
オークションでは、疑問点は入札前に質問を、と良く言われるが、本人があると信じきっているものに対して質問しようなどと当時考えるはずも無く、記載の無い部分は事前に質問して確認すればよかったのに、などと回答することもなかなか出来ない。(誰か他の質問者がいることで発覚するケースもあるが)
ただ、このケースでは事業者が出品者であることから、ある程度、商品説明に対する責任が求められるが、ただ、だからといって『Office2007』を無償で提供、若しくは既にソフト等インストールして使用済みの商品をこれから返品し、全額返金させるという主張もなかなか難しいのではないかと思われたケースである。