第四十五話: 連絡先は代行会社

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第四十五話: 連絡先は代行会社

 相 談 内 容

 2年前より使用している在庫や棚卸の管理ソフトに不具合が生じ、サポートセンターに電話をかけるが繋がらず、FAXでも連絡したが返事がこなかった。以前にも何度か連絡がとれなかったことがあり、その場合はFAXで連絡して、何日後かにFAXで返答されてきたのだが、今回は連絡が来なかった。

 ソフトのパッケージに記載されている本社連絡先に連絡すると、本社電話番号が現在使われておらず、大阪支社といわれるところで確認すると、『本社は大阪になりました、こちらが本社になります』といわれた。
 サポートセンターに繋がらない旨説明し、かけなおしてもらえるよう頼むと、『こちらは代行会社になりますので、サポートセンターの番号をお伝えすることしかできません』と言うので、代行会社の社名を聞くと『守秘義務に基づきおこたえできません』と言われた。代行会社の所在地や会社名、代表者名も教えてもらえず挙句に『代行の意味ご存知ですか?』と言われる。

 しかしこのソフト会社のサイトで会社概要を確認すると、本社の連絡先として記載されている電話番号はその代行だと言い張るところの番号なのだが、それが事実なのであれば、明らかに虚偽の連絡先を記載しているとしか思えない。本社連絡先に連絡し、こちらは代行会社と言い張る人はサポートセンターの電話番号しか答えず、そのサポートセンターは繋がらずどうしろというのだろうか。

 処 理 概 要

 この事業者は、主に小規模企業向けの会計ソフトや商品在庫ソフト等を何種類か作っているメーカーであった。
 今回、サイトに表示の電話番号が代行会社の番号であったということが、明らかに虚偽の表示とまで断言することは一概にできないが、あくまで会社の連絡先として表示している限り、事業者と連絡が取れる状況で無いと全く意味を成さず、非常に問題があると伝えた。

 ただ、事実、これらにより事業者と物理的に連絡が取れないようであれば、根気強くFAXやメールでの連絡、代行会社に対しても、事業者からこちらに至急連絡をくれるよう強く伝言をしてみること、それとともに、事業者所在地に配達証明郵便等を利用し、書面にて連絡を取ってみるよう伝えた。
 また、ソフトの販売経路について定かではなかったが、もし店舗販売されているものであれば、扱っている店舗にお願いして情報を聞くことが出来ないか、検討するよう伝えた。

 解 説

 現在は、事業者のサイトが削除されている。
 サイト上に記載されている事業者の連絡先が代行会社の連絡先になっているとのことであるが、この事業者がサイト上でも直接これらソフトも販売しているようであれば、特定商取引法の広告規制を受けるはずである。当然「事業者の氏名(名称)、住所、電話番号」の表示が義務付けられている。
経済産業省の特定商取引法のサイト上には、以下のQ&Aが記載されている。

 『住所表示については、‥亠簿・住民票記載の住所や⊆尊櫃乏萋阿靴討い觸蚕蠅鯢充┐垢詆要があるとされていますが、郵便により連絡をとることが可能な私書箱表示でもよいでしょうか』
 『本法での「住所」とは、会社の場合は本店の所在地など、営業上の活動の拠点となる場所を指すものです。私書箱を表示しても、このような場所を表示したことにはならないので、「住所」の表示をしたことにはなりません』

 私書箱がダメということなのだから、代行会社が良いとはならないように思う。代行会社は電話代行のほか、郵便物の受け取りも同時に受けていることが多い。
 ただ、今回の事業者は、本来記載していた電話番号をそのまま代行会社に転送をかけているものとも思われ、また連絡先として指定されている住所や電話番号が、果たして代行会社なのかどうかは、外見上全く分からない。電話をかけても、代行会社は事業者が予め指定した内容の対応をするだけで、それ以上は期待できず全て一方通行で終わる。
 また、代行会社が、その自分たちの社名や連絡先に対し、守秘義務を理由に回答できないというのも、何だかおかしな話である。

 ただ、こういった代行会社を利用している事業者は結構あり、それでも通常は、こちらの連絡先を伝えて伝言すれば、早々に折り返し事業者から電話がかかってくる。また、そのときに携帯電話番号を教えてもらい、それ以降は担当者と直接電話連絡が可能になることもある。
 つまり代行会社を通常に利用をしていれば、全くの連絡不能状態にはならないはずなのだが、今回は、電話連絡を事実上シャットアウトするために利用しているものと思われ、サイト閉鎖に伴い、既に、その事業者の存在自体が危ぶまれる感じもある。