第五十五話: 取り戻すのは100倍大変

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第五十五話: 取り戻すのは100倍大変

 相 談 内 容

 ダイエットの情報商材9,980円を、14才の娘が「送料、代金引換手数料無料」を「商品代金無料」と勘違いして申し込んでしまった。(代金引換の意味もよく分かっていなかったようである)。
 母である私の名前とメールアドレスを使っており、配達日を7日後に指定して申し込みしている。申し込み確認メールが届いたので発覚したため、購入するつもりはないので、すぐに居住地の消費生活センターに相談したところ、返品に応じているのかどうかをHPで確認すること、相手に未成年者契約のため取り消しを求め受け取る意思も代金を払う意思もない旨のメールを送信しておくこと、その上でこちらに相談してはどうかとのアドバイスを受けた。

 返品についてはHP上で「お客様のご都合による返品・交換は原則としてお受けできません」と通信販売の法規に基づく表示欄に記載されていた。未成年者の契約である旨のメールは当日に送信したが返事がない。
 もちろん娘には人の名前をかたって商品購入してはいけないこと、「無料」などの甘い言葉は信用してはいけないこと等の説明を遅ればせながらしたが、親子でインターネットを甘く考えていたことを大いに反省している。

 質問は 
1)私は商品を購入したくなく、そのためにやっておくことは他にないか。
2)実際に商品が配達されてしまったら代金支払い・受け取りの拒否を配達業者にどう言ったらいいのか。
3)受け取り拒否できたとしても、他の通販会社HPでは、その場合、往復送料・手数料を請求し支払い拒否すると法的手続きに訴えるなどと書かれているものも見たので、相手がそのような手段に出たときどうすればいいのか。

 また、HP上では「保障・販売方法・金額が今後変更される可能性があります」「販売方法・販売手法などの決定・変更も、いつでもできるものとします」などの表示があるので、申し込みでこちらの住所・電話番号が相手に知られていることもあり大変不安である。

 処 理 概 要

 経緯を見ると、先ず、14歳の娘が間違って9,980円の商品を代金引換にて注文し、その商品は未だ届いていないこと、未成年者取消のメールを出したが、それに対する事業者側からの返事が無く、今後商品が送られてくる可能性があるものと見受けられた。
 サイトを見ると、販売されている商品は、いわゆる情報商材であり、やせるためのノウハウが書かれている著作物(CDと書籍)であった。
 サイト上では、注文用ページに商品価格自体は割とはっきり書かれており、代引手数料や送料が無料という記載がされていた。ただ、申し込みフォームには、年齢を入力させるような欄は無く、また、購入において、年齢制限も特に設けられてはいなかった。

 そこで、相談者には、既にアドバイスを受けているように、今回の取引は未成年者取消が可能と思われるが、未成年者取消は必ず書面で、すぐに行うよう伝えた。
 これは、意思表示を証拠として残し、相手方に確実に通知するためでもあると伝え、未成年者取消の記載内容とともに、書面自体はハガキで構わないが、配達記録若しくは簡易書留郵便を利用し、文面はコピーを残して手元に保管しておくよう伝えた。

 その上で、上記、書面を発行し、実際に商品が送られてきた場合は、可能な限り受取拒否するよう伝えた。
 届けにきた宅配事業者に受取拒否する旨、口頭で伝えれば良く、これは、たとえ法的な根拠を元に取消手続きをしたとしても、一旦、代金を支払ってしまうと、相手方がその後返金に応じない場合、その返金を実現するのは非常に困難を伴うからであると伝えた。

 また、未成年者取消は権利の行使であること、従って、通常の通販における単なる注文者都合による代金支払い拒否や受取拒否とは、全く意味が異なることを伝えた。
 ただ、相手方が法的手続きに出ることを物理的に阻止することは出来ないため、そのためにも上記書面による取消の意思表示を証拠として残しておく必要があることを伝えた。

 さらに、相手方の取引条件や規約等に今後変更があったとしても、それらは原則的には遡及されないため、今回の取引に影響は無く、今後電話や書面による催促が行われても同様に未成年者取消を主張するよう伝えた。

 解 説

 今回のケースでは、親の名前を騙って注文していたとはいえ、ここで未成年者取消を主張しない理由はないため、相談者は、きちんと権利の主張をして商品の受取りを拒否して、代金支払いを免れる必要があった。もちろん、支払い後であっても返金を主張することは可能であるが、ただ、通常の取引と異なり、ネット取引の場合は、それが簡単でないことも多い。

 さらに、このような情報商材を扱うような事業者の場合、元々どんな理由をもってしても、一旦支払った代金の返還には一切応じない可能性が極めて高く、このようなところに代金を支払ってしまうと、今度はこちらが法的手段を利用しないと返金が困難になる可能性が極めて高い。すぐに連絡不能になる、資本力がないから返せない、話に応じないなどの事態に陥りやすいからである。
 相手を見た上で、話し合いにならないような相手であれば、何はともあれ、被害に遭わないようにすることが最優先である。

 また、受取拒否の場合、よく売主と買主双方で受取拒否を繰り返すことがあるが、それでは宅配業者側も困るため、規約上、宅配業者は、一定期間を過ぎると、その荷物を破棄することが出来るようになっていることが多い。
 その荷物が破棄されて困るのはどちらなのかを考えた時に、簡単に考えれば、代金支払い後であれば買主側が、代金支払い前であれば売主側が困るものと予想されるので、それで、最終的にどちらが受取ったほうが良いのか、おのずと判断が出来ようと思う。
 このケースであれば、そうなった場合、未払いのまま商品が破棄されて困るのは事業者側であろう。