第七十四話: 電子マネーが狙われる

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第七十四話: 電子マネーが狙われる

 相 談 内 容

 (1)
 先月、あるサイトで2万円分の電子マネーを19200円で購入した。折り返しサイトから申込の確認と振込先が書かれたメールが返信されてきたので、コンビニのATMから現金振り込みで指定された額を支払った。
 しかし、家に帰ってメールを再確認したところ、「なりすまし詐欺防止のため、本人確認をする、固定電話の番号をメールで返信し、それから振込をしてください」と書かれていた。

 サイト上にはそんなことは一文も触れていなかったのを訝しくも思いながらも、サイトには
「メールを飛ばし読みしたせいで確認が遅れた」
「当方は固定電話を所持していないため、携帯電話の番号をメールする」
「すでに振込は済んでいるので、確認をしてほしい」
という旨を連絡したうえで、
「固定電話でどうやって本人確認をするのか?」
 という質問のメールを送った。
 すると、
「携帯電話では本人確認ができない」
「固定電話の番号を教えないなら取引を中止する」
 というメールがかえってきた。

 私からは、すでに振込が済んでいることを伝えたのだが、
「お前が振込をした本人だと確認できない、振込された金は振込をした金融機関に返金要請を出す」
 と返事がきた。
 しかし、私はコンビニのATMから現金払いをしているので、返金要請をされたところで私の元にお金は返ってくるはずもない。もちろん、その旨もメールで伝えたが、あからさまに私を詐欺師扱いするテンプレメールが送られてくるだけで、納得のいく返事はもらえなかった。

 私は振込明細を写真で撮りメールで送ったりもしたが、週明けの月曜日に会社としての返事を送るというメールを最後に、結局今まで返事をもらえないまま、ひと月が過ぎようとしている。最初に私がメールを読み飛ばしたミスがそもそもの原因ではあるが、振込をした本人であるにも関わらず、それを証明できない(相手が納得する証拠に繋がらない)ことが歯がゆくてならない。金額も2万弱で諦めた方が早いのか。

(2)
 専用の通帳にポイントをためるお小遣いサイトにて、貯まったポイントを電子マネーに交換する依頼をサイトにして、ポイント通帳にメールがきた。
 しかし、指定された電子マネーのプリペイド番号でチャージしようとすると、残高がありませんとエラー表示されチャージ出来ない。今までサイトには5回メールをして、この件を問い合わせたが、今のところ何の返事もない。

 電子マネー発行業者に問い合わせをしたところ、そのサイトとは提携していないとのこと。何度も電子マネー発行業者から電話やメールをもらい、サイトには再三問い合わせをしているが何の返答もなく、ネットで電子マネーに交換出来ます、と謳っていても提携していないのでどうしようもないとの返事だった。
 泣き寝入りしかないのだろうか。

(3)
 コミュニティサイトを利用しているが、「退会のため全アイテム譲渡したい」という人がいて、電子マネーで42,300円分を支払ったところ、アイテムリストの半分も送付されないまま逃げて(退会して)しまった。
 警察に相談したところ、詐欺事件での立件は難しいということで消費者センターに相談したが、そちらでも介入できないと言われ大変困っている。
 お金やアイテムを取り返したいというよりも、なんとか「売りつけ詐欺」で立件できないかと考えている。

 処 理 概 要 及び 解 説

 電子マネーの特徴のひとつに匿名で購入できるという点があるが、そもそも電子マネーは転々流通や譲渡が可能で、お互いの個人情報が分からないまま、ID番号のみで支払いに利用できる(ネット上でユーザ登録すればチャージしたり残高確認できる)。
 電子マネー発行業者と契約関係にないと取得した電子マネーを直接現金化ことは出来ないが、余った電子マネーを手数料取ったうえで買取するような事業者もおり、またユーザ同士でトレードできるようなサイトもある。
 しかし、これらサイトの中には信用の置けないサイトも多数存在している。

 最近は、相手に電子マネーで代金を払ったがものが引き渡されない、額面より安価で電子マネーを購入したが電子マネーが引き渡されない、貯めたポイントを電子マネーと交換してもらえる約束が、難癖つけられて履行されない、といった相談が多く寄せられている。
 ただ、電子マネー発行業者の目の届かないところで勝手にやり取りされ被害に遭っても、その救済を電子マネー発行業者に求めることがなかなか出来ない。また、匿名で取引できる点から、おのずと相手の情報も限られている。結局は、これら相談者達のように、最初から自ら半ば諦めムードにならざるを得ないのである。

 電子マネーは、その発行において今後法規制がかかる可能性があるが、しかし取引において被害に遭えば、その救済は現金取引と同じ考え方である。詐欺に使われた電子マネーのIDは速やかな凍結措置が望まれるが、口座と異なり転々流通が可能な限り、既に第三者に渡った電子マネーはどうしようもないことになるため、電子マネーの売買を行うサイト事業者などにも、ある程度の法規制が望まれる。