第七十六話: ジーンズは良くてTシャツはダメ

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第七十六話: ジーンズは良くてTシャツはダメ

 相 談 内 容

(1)
 2ヶ月前に購入したTシャツが届かず、カードからの口座引き落としはもう済んでいる。

 「お世話になっております、お客様のお荷物の件ですが、今日配送業者に確認したところ私ども発送側にできることはないと言われてしまいました。そこでお客様のお荷物が税関をクリアするためには大変お手数ですが、お客様ご本人に直接配送業者に問い合わせていただき、税関の為の書類を記入してもらわなければなりません。お電話でお問い合わせ頂いた際に、税関に長い間留まっているので早く配達してほしいとお伝え下さい。あちらから必要な書類などをアドバイスしてくれると思います。よろしくお願い致します」
 というメールがきた。
 税関でなぜ商品が滞っているのか、私がどういう書類を書いて商品を受け取るのか、規約などが分からず困っている。

(2)
 142USDで、Tシャツを4枚購入、サイズが合わず、購入先のホームページに購入後60日以内であれば送料がかからず交換できる旨記載があり手続きをした。
 これは正しいサイズのものを新たに注文して向こうから商品が送られてくる間に返品をするというもので、商品の返品交換自体はできた。

 後日配送業者より関税の振込み用紙が届いた。以前ジーンズ等を購入したときには関税はかからなかったので今回もかからないだろうと思っていたので税関に訊ねると、Tシャツはニット製品なので除外品目となるとの事。
 そして数日後また振込み用紙が届いた。今後は交換分の関税だと思われる。私は購入商品に関税がかかるとも思っていなかったので返品時にそのような事は気にもしなかった。2回分払わないとならないのか。

 処 理 概 要 及び 解 説

  海外より個人輸入で商品を購入する場合、注意するのは、その商品に対し日本で関税がかかる可能性があるということである。
 
 基本的に個人輸入の場合には、購入した商品の課税対象額の合計が10,000円以下の場合(商品価格及び手数料、送料の合計)は免税となり課税されず、課税対象額の合計が10,000円以上の場合には関税(簡易税率)・税関手数料(200円)・消費税がかかる。
 しかし、上記には適用外の項目があり、10,000円以下の場合でも、『皮革製バッグ、革製手袋、履物、パンティストッキング、タイツ、革靴、編物製衣類(Tシャツ、セーター等)』は適用外とされている。これらは、個人的な使用に供されるギフトとして居住者に贈られたものである場合を除き、課税価格が1万円以下であっても関税等は免除されないことになる。
 「編物製衣類」とは、言ってしまえば伸縮性のある素材で出来た衣類が予想され、同じ綿製品でも、縦横に伸びる素材の衣類(Tシャツ、セーター)であれば該当し、ジーンズのような伸びない素材の衣類であれば適用されない。

 すると、関税自体は相手方が収入として得るものではなく、また基本的には輸入する側が支払う手続きのため、事前にサイト側が負担すると明言していない場合は、受取側で関税が発生した場合、最終的にはそれら負担は止むを得ないケースも出てこようかと思われる。
 日本人相手に商売をしているサイトであれば、日本における関税の仕組みについての説明がある程度必要と思われるが、全ての海外事業者に対しそれらを強制することも実務上難しく、やはり、関税等の知識は自分で事前に調べて理解してから取引する必要があるといえる。

 (1)のケースにおいて、途中で止まった荷物をそのまま放っておくと、やがて荷物が自動的にサイト事業者側の国に返送される可能性も有り、その際、海外の事業者が素直に全額返金には応じない可能性も出てくる。先ずは、配送業者に連絡を取るなど、少なくとも先ずは黙って待っているのではなく、自らで動く必要があるといえる。

 (2)のケースも、例えばサイトが注文と異なる商品や不良品等を送ってきている等、サイト側に約束の不履行等の問題があり交換を行った場合は、それにかかる費用も併せて相手方に求めることが理論上は可能かと思われるが、サイトは注文通りの商品を引き渡し、あくまで自己都合により交換を行っている場合は、それら負担をサイト側に求めることは、なかなか難しいかもしれない。

 なお、(2)の事業者は、数年前より日本の消費者に大変人気のある衣料メーカーだが、今まで国内に直営店がなく、日本で入手するのは高額なため、海外のネット通販を利用する消費者が多かった。一人の消費者が大量購入するケースも多く、おのずとトラブルが発生しがちな状況でもあった。
この事業者は年末に日本に直営店を構えるとのことなので、是非、今後は日本国内で完結する通信販売を行って欲しい。