第八十四話: ロマンシング詐欺

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第八十四話: ロマンシング詐欺

 相 談 内 容

 消費者センターからの問合せ。
 相談者21歳。ゲームソフトをダウンロードしたところ、個人情報を削除するため和解金が請求され、言われるまま3月21日に5,800円を2回支払ったという。本人はロマンシング詐欺だといっているが、流出した個人情報を心配している。
 本人があまり詳しい内容を語らないので、何か情報があるか知りたい。

 処 理 概 要 及び 解 説

 ロマンシング詐欺は、ファイル共有ソフト等で不正にダウンロードしたファイルに仕組まれたウイルス(トロイの木馬)により被害に遭う新手の詐欺の手口である。
 複数のニュースサイトの記事を総合すると、このような流れになっている。

 先ず、ファイル共有ソフト上においてあるゲームなどのファイルをダウンロードすると、知らないうちにトロイの木馬も一緒にダウンロードしてしまい、ダウンロードしたソフトを起動すると、住所、氏名、電話番号、アドレスなどの個人情報の入力を促す画面が出るという。
 それら個人情報を送信すると、その個人情報が自動的に「ICO・国際著作権機構」というサイトに送られてしまい、サイト上にそのまま公開され、著作権侵害の旨のメッセージが表示される。

 この公開された個人情報を削除するには、サイト上の「削除申請フォーム」より申請することになるが、申請すると、株式会社ロマンシングというところメールが届き、削除するには「和解金5,800円」を指定口座に支払うよう誘導するというものであった。
 ただ、請求元はソフトの著作権者ではない。

 既に「ICO・国際著作権機構」というサイトは閉鎖されているとのことだが、このウイルスにより2010年3月18日〜24日の間に被害を受けた人は約5500人にのぼるということである。
 この手口は3月22日に発生した長崎市内の中学校校長による生徒名簿等の情報漏えい事件で明るみに出た形となったようである。

 この相談のケースも、ちょうど被害が発生していた期間内の被害であり、請求元の事業者も実際にダウンロードされた複数のソフトの著作権者(著作権者は別に存在し無断で行われているようである)ではなく詐欺の可能性が高いため、請求元が事業者であるとはいえ消費者センターのあっせんに馴染むとは思えないが、どちらにせよ解決には警察の協力が不可欠かもしれないと伝えた。漏えいした個人情報を回収することも不可能である。

 さて、実の本人があまり詳しい内容を話したがらないのも無理はない。もともとファイル共有ソフトを利用したソフトウェアのダウンロードや利用は不正行為であり、今回の被害も、自らの不正行為により遭遇した結果となっているからである。
 ファイル交換ソフトを利用することは、それで被害に遭っても自己責任というばかりか、不正行為につながることもあり、さらに、情報の漏えいにより罪のない第三者にまで被害を拡大させることにもつながるのである。
 この当事者に何より必要なのは、このようなファイル共有ソフトを二度と利用しないための啓発であろう。