第八十五話: サクラじゃないの?

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第八十五話: サクラじゃないの?

 相 談 内 容

 音楽再生用の携帯端末を低価格で販売しているサイトを検索していたところ、このオークションサイトを発見した。ここでは、オークションサイト自身が商品を出品し、出品開始価格はいずれも0円や1円だが、入札するごとに専用のポイントが必要となり、1回入札するごとに50円かかるしくみである。会員登録してカード番号を登録、2500円分の入札権(ポイント)を購入した。

 しかし、お目当ての商品の入札に参加するも、過去最高のありえないぐらいまで価格を吊り上げられ、これはいかさまだと確信した。支払いたくない。

 処 理 概 要 及び 解 説

 当該サイトを確認すると、入札には予めポイントを購入し、そのポイントを使って落札する流れであった。すると、落札者は落札した商品代金のほか、入札に要したポイント分の料金(1入札50円×入札回数)、が必要になる。仮に落札できなくても、入札に使用したポイントは返還されない。

 商品を出品しているのは全てサイト事業者のため、確かに、いくら入札しても落札できない場合、サイトが儲けの手段として利用者にポイントをより多く使ってもらおうと思い、実はサクラが存在し、サイトがいわゆるサクラ行為により入札額の吊り上げを行っているのではないか、という不信感が出ること自体は理解できる。
 取引に関しては、例えばサイトが他の入札者と共謀あるいは他の入札者が落札の意思がないのにつり上げ入札が行われていたことがあれば、その取引は詐欺や第三者詐欺による取消が考えられる。

 ただ、それには、他の入札者とサイトとの共謀を立証することや、他の入札者が入札する意思が全くなく吊り上げの意図をもって入札に参加していたということをサイトが知っていた、ということの立証が必要で、正直、相談内容だけではなかなか難しいように思われた。
 そのため、この相談者においては、サイトのルール通りにサービスを利用し発生した代金、全ておいて支払い義務がないと判断するのは難しいように思われた。

 ただ、このような入札に料金がかかると言うシステムのオークションサイトはネット上にいくつか存在するが、最近、がんばって入札しても落札できないという同様の苦情が寄せられている。中には一晩中入札していたが、結局1つも落札できなかったというケースもある。苦情を言うと、オークションサイトから追い出されるといった具合である。

 このようなオークションサイトを確認すると、最高額をつけた入札IDは頻繁に更新されているが、そのID所有者が実在するかどうかは外見上分からない。サクラの存在がないとは決して言えない。特に最近、出会い系サイトにおいては、相手とのやり取りに必要な有料ポイントを消費させるためのサクラの存在が指摘されているため、このようなオークションサイトにおけるサクラ被害も今後増加する可能性もあるかもしれない。

 また、このようなお金で買えるポイントは、4月の施行された資金決済法により、規模によっては、発行者に届出義務や供託義務が課せられる可能性もある。
 法律施行後は、オンラインゲームサイトにおいては、それまで無期限だったポイントの有効期限が6ヶ月以内と短く設定されているところも現れ、それによる苦情も発生している。このオークションサイトのポイントも有効期限が後から短く変更されており、この視点からも今後注視していきたいサービスである。