第八十六話: 望まないのに書き込まないで欲しい

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第八十六話: 望まないのに書き込まないで欲しい

 相 談 内 容

 飲食店紹介のサイトで、店の名前が勝手に載せられていて、掲載を止めて下さいとお願いしたら、当方の方針により外すことができないとの回答だった。
 止められる方法はないのだろうか。

 処 理 概 要 及び 解 説

  寿司店の店主からの相談。
 飲食店の評判などが書き込めるサイトで、自分の店の情報や口コミが、承諾のないまま勝手に書き込まれていくことに対し、納得できないとのことだった。

 ただ、掲載されている情報が店舗情報で、もともと一般に公開されている程度のものであれば、それで何が問題かをサイト側に指摘するのが難しく、削除の強制が難しい可能性もあるが、例えば、口コミにおいて誹謗中傷があったり何か具体的な損害が発生している状況であれば、別途対応方法の検討が可能ではと伝えた。

 すると、相談者から返信があり、サイトからは、もともとみんなの口コミサイトだから削除できないとの回答があったものの、自分としてはこのサイトに協力したくもないし、載せたくもないとのこと。また、口コミとして書き込まれているコメントはひどいもので、しかも自分たちを良く分かっていない、まして、わけがわからない順番を付けているもので、何を書いても良いとはいえ賛同はしたくないとのことだった。

 そこで、もちろん誹謗中傷が酷いようであれば全く別ではあるが、口コミに関しては、表現の自由もある程度は認められるべきであり、ただ、単に都合の良い情報は残し、都合の悪い情報は削除できるとなれば、平等性に欠けるように思われると伝えた。
 更に、店舗の情報すら一切インターネット上に公開されたくないのであれば、個別のサイトに削除要請をかけるのではなく、実務的な方法として、例えば店に来る客全てに対し、予め「店の情報や口コミをネットに一切公開しないこと」と約束させるほうが効果的ではないかと伝えた。

 時々、店側から、このような口コミサイトに対する不満や相談が寄せられる。
 ネット上には、たくさんの飲食店に関する情報サイトがあるが、例えばサイト上に間違った情報が載せられていた場合は、もちろん情報サイトに修正や削除等を依頼することになる。ただ、対応がなされないような場合、プロバイダ責任法による解決が可能なのかどうか簡単に判断できるわけでもなく、また、もともと店として公開しているような住所や連絡先、店舗名をネット上に第三者から無断で載せられていたとしても、それを不当であると主張するのも難しい。
 口コミサイトは、利用する客側からみれば利便性の高いサービスであり、店側も宣伝になってよいだろうと思いがちだが、実はそれを望んでいない店も結構あると言うことである。今のネット社会においては、なかなか難しい問題だが、口コミや店情報をネット上に書き込まれたくなければ、やはり店側が来る客に対し、個別に約束させるほかないのではないだろうか。