ネット通販Aのサイトから、11月16日にシャンプーを注文した。注文した際、ネットショップより「在庫切れ」という事で、いったんその後の連絡を待っていたところ、ネットショップより12月1日に振り込み先をメールで連絡してきたので、翌日(12月3日扱い)商品代金8034円(単価2678円×3)と送料700円 合計8734円を指定された口座に振り込んだ。
商品代金等を振り込んでから1ヶ月以上経つが、いまだに商品が送られて来ない。その後メールで2度連絡をしたが、何も連絡が来ない。なお連絡先はメールアドレスしかわからない。
在庫がなければ返金してもらいたいのだが、もしかして詐欺にあったのだろうか。
相談者が注文したという「ネットショップA」というサイトを確認すると、当該サイトは「ネットショップ」と名乗ってはいるが、自ら通販サイトとして商品を直接販売しているというよりは、「B」というドロップシッピングサービスプロバイダ(DSP)を兼ねた通販事業者の扱っている商品の注文を受付するサイト(ドロップシッピングサイト)と思われた。
そのためか、「ネットショップA」のサイト上に「ネットショップA」の連絡先等の記載は一切なく、各商品広告ページにジャンプするとはじめて出てくる特定商取引法の表示には、全て「B」の連絡先が記載されている。
仕組みは、まず「ネットショップA」のサイト上に陳列してある商品を選びショッピングカートに入れた段階で「B」のサイトに飛び、そこから「B」のカートシステムを使って情報入力して注文を完了させる仕組みである。また、「B」での支払方法はクレジットカード、若しくは代金引換が指定されている。
従って、「ネットショップA」というドロップシッピングサイトとの取引においては、相談者が注文した商品自体は本来「B」から送られてくるシステムだが、ただ「B」での取引における商品代金支払手段においてはクレジットカード、若しくは代金引換が指定されているため、「ネットショップA」から在庫切れの連絡の後、別途、「ネットショップA」から個別に振り込み先を指定されたのであれば、それは本来の注文先である「B」ではなく、ドロップシッピングサイト「ネットショップA」と相対で取引したことになる。
もともとドロップシッピングサイトは注文を受付けるだけのため、商品在庫を持たないのが通常と思われることから、今後も「ネットショップA」からの商品引渡し要求自体が困難なものと想像される。
もちろん商品を引き渡さない以上、「ネットショップA」に対し返金等の主張は充分可能だが、「ネットショップA」自体の連絡先が分からないとなると、相手の存在自体が確認できないため、おのずと交渉は限界となる。
可能性として考えられるのは、先ずは「ネットショップA」を登録した「B」に事情を説明して「ネットショップA」の情報がないかどうか尋ねてみるという方法、また、知らされた金融機関に連絡して口座名義人に連絡を取って欲しいと伝えたり、当該口座の凍結について可能かどうかを相談する方法が考えられる。ただ、いずれも個人で限界がある場合は最寄の警察署に相談して警察の協力を仰ぐ必要があるかもしれない。
このケース、一見、よくある商品未着トラブルに見えたのだが、サイトを確認するとドロップシッピングサイトと思われ、商品注文先は「B」となっていた。ドロップシッピングサイトにおいて、特定商取引法の表示で自らの連絡先を記載しているケースもあれば、DSPの連絡先が記載されているケースもある。個人情報を出したくないドロップシッパーにとっては「B」のシステムのほうが便利な一面もある。
しかし、注文者にしてみると、商品をカートに入れると、いきなりそれまでのサイトイメージとは明らかに異なるページに飛ぶため、何となく不自然な感が否めない。
ただ、今回の相談者には、注文時、そのドロップシッピングの部分が理解されておらず(もっともドロップシッピングなのか通販サイトなのかを区別できなくても注文できるのを良とするのかもしれないが)、「ネットショップA」を単なる通販サイトと思っていたことだろう。
相談者は、一旦「B」のカートシステムを利用しようとして「在庫切れ」と表示され注文をやめたのだが、後から「ネットショップA」に言われるまま直接代金を支払ってしまったため、結果、「B」には取引の実態が全く把握されず、更に連絡先の表示のない「ネットショップA」と連絡不能の状況になってしまったものと推測される。
複雑なシステムはどうしても穴があきやすく、そこに落ちると救済がされないという問題が起こる。特にDSPにおいては、ドロップシッパーだけではなく商品を注文する側にも理解しやすいような注意点を説明してあげる必要があるのかもしれない。