第九十五話:共同購入クーポン型サイト

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第九十五話:共同購入クーポン型サイト

 相 談 内 容

(1)
 飲食店(中華)の割引クーポンで「7000円相当の料理が2800円」とあるコース料理の内容がお粗末だった。サイト上で豪華な料理の写真と料理は10品出るとあり期待した。実際は、確かに料理は10品出たが、角煮一切れ、あわび一切れ、北京ダック一切れ、餃子一個だった。なお、店のメニューに7000円のコースはない。

(2)
 美容室の割引クーポン、3000円分を3枚購入。使用有効期限半年、2枚使用。
 3ヶ月経過し、あと1枚残したところで、美容室から「倒産しました」というハガキが来た。クーポンサイトの規約上は返金してもらえるはずなのだが、クーポンサイトに電話しても繋がらない。

(3)
 果物が半額の3,000円で購入できるクーポン。クーポンサイトには予め登録時に個人情報を入力していたので、クーポン購入時にその情報が販売店にも渡されて商品が送られてくるものと思い込んでいた。
 しかし、再度販売店のサイトから個人情報を入力して注文しなおさなければならなかったため、使用有効期限の半年を過ぎてしまった。

(4)
 エステのサービスが割安で受けられるクーポンを購入した。実質、1人で経営しているエステ店のため、ほとんど予約が取れない状況。クーポン購入者が2000人ほどいるらしく、使用有効期限内に使用できない人が出てくるのではないか。

(5)
 飲食店の割引クーポン、1月11日〜4月30日までの有効期限。
 4月16日に予約しようとしたら、もう満席で予約できないという。クーポンサイトに問合せしたら、「規約では予約が取れなくても返金しないと書いてあるのでクーポンの返金できない、店舗と話し合って欲しい」といわれた。
 しかし、実質3ヵ月半の有効期限で期限2週間前で既に予約が取れない状況なのに、規約に書いてあるからといって返金されないのはおかしいのではないか。

 処 理 概 要 及び 解 説

 共同購入クーポンサイトとは、飲食店やエステなどの店舗で使用できる割引クーポンを販売するサイトのことで、制限時間内(1日〜数日)に購入希望者が一定数以上に達したら成立し割引クーポンが発行され、それを印刷して店舗にもっていくと、割引サービスが受けられる。一定数に達しない場合は不成立となる。
 募集中のサイト広告には、割引率や購入希望者の人数や残り時間などが表示され、クーポンの購入には、クレジットカード、電子マネーなどが使える。支払手段により不成立時の返金方法などが異なる。当方窓口にも相談がいくつか寄せられているので紹介しようと思う。

 共同購入クーポンサイトのトラブルは、2011年元旦に発生した、いわゆる「おせち事件」に代表されるが、「広告と内容が異なる」「たくさんの購入者がいて予約が取れない」「クーポン以外の別料金サービスを押し付ける」などが多いようである。
 「おせち事件」に関しては、消費者庁が、おせちを作った飲食店を運営する事業者に対し、景品表示法違反(優良誤認など)で再発防止を求める措置命令がなされた。ただ、共同購入クーポンサイトには直接の行政処分はなかった(運営を改めるよう要請)。

 「おせち事件」では二重価格も疑われたが、その後のクーポンサイトでは二重価格を疑われないよう事例(1)のように “7000円のコースが2800円”ではなく、“7000円相当”のように、「〜相当」という表現になっているものが多い。この(1)の店舗の割引クーポンは、半年程度のクーポン有効期限で購入者が2000人以上おり、ネット上にはサービスに不満を持った客によるいくつかの悪評が既に書き込まれていた。

 更にその後、「おせち事件」による消費者庁からの要請を受けて、そのクーポンを販売したクーポンサイトでは、加盟店サポートの強化や二重価格への審査、顧客対応の専門窓口を開設し、返金指針として「ネガティブな体験や不利益を被られた場合には、お客様からのご申告状況を確認の上、原則として、クーポン代金の返金などの対応を行います」としている。

 また、クーポン販売数は店舗側とクーポンサイトで調整可能なはずなのだが、特に割安感の高いものや販売価格自体が安価(数百円)なクーポンは多数の購入者が出ることから、店舗側が対応しきれずに、お手上げする(もうクーポンを持ってきても対応できなくなる)こともある。その場合、クーポン代金はクーポンサイトから返金されるが、購入者側は、そもそも通常では考えられない割引価格で買えるという目的でクーポンを購入しているのであるから、クーポン代金の返金をしてもらっても、正直、あまり納得しない。
 また、(2)のように、有効期間内に店舗が倒産したり閉店した場合も、未使用分のクーポンについては返金される。しかし、クーポンサイト自体の電話が繋がりにくいという問題もある。

 (3)(4)(5)のようにクーポンの有効期限に関連するトラブルもある。
 クーポンの販売枚数は店舗の規模などをかんがみて、店舗とクーポンサイト間で調整可能と思われるが、(5)のケースのような場合で予約が取れなくても返金されないとなると消費者に不利である。例えば期限2日前に連絡して予約が取れなかったというのであれば致し方ないかもしれないが、有効期限3ヵ月半のクーポンで期限日2週間前に予約を取ろうとしたのであれば、ここに消費者に落ち度があるとは思えず、悪く考えようによっては、空席があるにもかかわらず店舗側が故意に満席といっていたとしても、消費者には一切分からない。
 何でも規約を盾にするのではなく、店舗やクーポンサイトの販売枚数の調整や管理が不十分であったと考えられるケースには、それで被害を被った消費者に対し柔軟な対応をするべきかと思われる。

 大分、一般的に認知されてきた共同購入クーポンサイトだが、残念ながらその認知を大きく広げたきっかけは「おせち事件」である。
 そもそも割引クーポンを発行しようとする店舗は、はじめて来てくれた客がリピーターになってくれることを期待して大幅な割引をしているものだが、対応如何でリピーターどころかかえって悪評を広めてしまうことにも繋がる。
 店舗がとっさに目先のことだけを考えてしまうのか、若しくは共同購入クーポンサイトがきちんと店舗に説明をしないのか、結局は双方とも自分たちの首を締めてしまうことに繋がるのではないだろうか。