法律解釈1: 銀行振込代行業

 
相談事例から“法律解釈と実務”

法律解釈1: 銀行振込代行業

 相 談 概 要

  個人での相談。わたしは外国人向けに英文にて、日本のオークションの利用ガイドをサイト上に開設している。そこで、外国のクレジットカードは、ほとんど日本のオンラインサービスでは受け付けず、外国人は入金方法で困っているのを知った。
そこで、そういった外国人向けに銀行振込の代理のサービスをやっているのだが、ある日、匿名にて『銀行法に抵触するのでは?』というメールをもらって不安になった。これは違法なのだろうか。

方法は、外国人の落札者からこちらに、手数料と送金額を円だての海外決済代行会社経由で送ってもらい、それを日本側の売り手の銀行口座に代理で振込する。これは為替取引に該当するのだろうか。またお金であったとしても、日本の法律でもお金なのだろうか。

 法 律 解 釈

 結論から言えば、やろうとしている行為は、銀行法が規制する為替取引にあたる可能性が高い、と考えられる。
銀行法2条2項2号が規定する「為替取引」の範囲については争いがあるものの、最高裁は、日本のAが日本のBから韓国のCへの送金依頼を受けて日本円を受領し、韓国のDにFaxでBの氏名やCの口座を連絡して、韓国のAの口座から韓国ウォンでCへ送金させたという事件で、『(為替取引を行うこととは)、顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、またはこれを引き受けて遂行することをいう』(平成13年3月12日、刑集55巻2号97頁)と、かなり広い範囲のものを為替取引として、上記Aを銀行法違反としている。

この場合も、海外決済代行会社という隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼をうけて、これを引き受け、またはこれを引き受けて遂行しようとしているのですから、上記最高裁が定義する為替取引にあたるものと思われ、従って、無免許で行えば銀行法違反になると思われる。
ちなみに、この海外決済代行会社に関しては、アメリカでも州によっては州送金業者法という日本の銀行法の為替取引規制のような法律で規制されているようである。

様々な決済手段が開発されていくなかで、上記最高裁の定義がどこまで普遍性を持つのかは必ずしも明らかではないが、現時点では、この行為が銀行法違反となる可能性は高いと思われる。

 解 説

 個人が、いろいろな事業形態を思いつき、そこにビジネスチャンスを得ることは非常に良いことであるし、大いに勧められるべきものだと思う。しかし、あまり法律や商慣習を良く調べないまま、ある日突然はじめてしまうと、思わぬ落とし穴が待っている場合がある。

 このケースは、インターネット取引のトラブル相談ではないが、自分の行っている商売が適法なのかどうかを疑問に思い相談してきたものである。何より、その個人でやっている商売について、きちんと疑問に思う姿勢を買いたいと思った。この様子だと、この商売を始めるにあたっても、他に良く相談したような様子は無く、また他に相談するところも無かったのだろうと思えたからである。

 この海外決済代行会社に口座を所有する者同士なら、海外であろうと直接送金することが出来る。この海外決済代行会社を利用できるのは米国のオークションであるが、ただ、日本のオークションでは直接利用できない。
 また、オークションに限らず、日本国内のショップ等に海外から海外決済代行会社を通じて支払うなんてこともほとんど考えられないので、支払方法が銀行振込み等の場合には、海外から自分の登録している口座に送金させて、手数料とって振込み代行しようと思いつくのは、主に海外とのインターネット取引を経験している利用者なら容易なのかもしれない。

 そのほか、『インターネットのサイト内で少額の商品を販売したい、数百円の商品を取り扱う予定なので、クレジットカード決済や代引きは現実的でなく、決済方法としてはプリペイド制で支払ってもらうことを想定している、それに関して自分のサイト上で金券(仮想通貨)を発行して商品を購入してもらう、というモデルにしようと思うが、何か制限はあるか』といった相談もあった。これに関しては「前払式証票の規制等に関する法律」を調べていただければ良しとして(本当はEdy等、既存サービスに加入するほうが・・)、今やインターネット上の決済には多種多様な方法があるわけで、法律もどこまで追いついていけているのだろう。