法律解釈5: 望まないリンク

 
相談事例から“法律解釈と実務”

法律解釈5: 望まないリンク

 相 談 概 要

 大手レコード販売事業者からの相談。
弊社のお客様のクレームにより知ったことなのだが、弊社のサイトがXというサイトにリンクされていることが分かった。クレームの内容は、「ニュースなどで話題となっているねずみ講のようなサイトと提携をしているのか?」というものだった。

このサイトへのサポートセンターへ問い合わせをし、リンクの削除を申し入れたところ「本部は、リヒテンシュタインにあり、また、サイト管理は米国で行っているためにわからない。サポート宛にメールをくれれば、そちらから対応するだろう」という曖昧な返答がなされた。
 弊社としては、そのXの事業の実態がわからないため、違法であるか合法であるかの判断はできないが、お客様のクレームおよび弊社自信のブランドマネジメント上の問題より、一刻も早く削除を望む次第である。

また、弊社以外でも各業界大手サイトのリンクが貼られているため、それぞれの担当者と連絡をとりはじめている。今後2〜3日待って確実な対応が望めない場合の弊社側がとれる措置、解決方法などについてアドバイスが欲しい。

 法 律 解 釈

1 無断でリンクを張る行為の違法性について

ホームページは、広く一般に公開される性質のものなので、直接のアクセスもリンクを経由したアクセスも開設者にとっては同じであると考えられること、また、リンクは、もともと広く公開されている他のホームページを紹介し、接続を容易にするだけのものであることから、原則として、リンクを張るのは自由であると考えられている。
従って、無断リンクを禁じる旨記載しているにもかかわらず相手方がこれを無視してリンクを張った行為により、具体的損害が生じたような場合は別として、無断でリンクを張った行為そのものを民事上の不法行為(民法709条)に該当し、違法であると言うことは困難である。
 
 大手企業の商標等を使用することにより自己の営業と大手企業の営業と混同させた場合は、不正競争行為(不正競争防止法第2条1項1号)として、差止請求権と損害賠償請求権を行使しうる場合がある(同法3、4条)。
 本件においては相手方の行為は不正競争行為に該当する可能性はあるかと思われる。
 
2 措置、解決方法

 現段階で、相手方の行為を違法とは断言しにくいが、放置するとブランドマネジメント戦略上多大な支障が生じるので、削除してほしい旨を通告し、(今後通告に従わずにリンクを張ったままにしていて、損害が生じた場合は、損害賠償請求をする旨を合わせて意思表示してもよいだろう)ホームページ等の管理者に指摘して削除を求めることが考えられる。 

 解 説

 こういった外部リンクに関しては、『電子商取引に関する準則』の中の「他人のホームページにリンクを張る場合の法律上の問題点」という部分にて、具体的事例とともに説明があるので参照して欲しい。

 インターネット上のサイトには、時々「リンクの際はトップページをお願いします」といった記載を見かけるケースがあるが、はっきり「リンク禁止」と書かれているサイトはほとんど見たことが無い。特にアクセス制限をかけずに一般公開しているホームページは、見てもらってナンボ、のものだと思うので、アクセス数が増えることにつながるのは、基本的にはどのサイトも歓迎の方向で作成しているのではないかと思う。

 ただ、確かに望まざるサイトにリンクされることまでを歓迎はしていないと思う。そのサイトとかかわりがあるのではないか、と外部的に見られてしまうことを懸念するということも良く分かる。事業者であればブランドイメージも大切にしたいところであろう。

 ただ、どうなのだろう。誰が聞いても知っているような大手事業者のホームページが、マイナーなサイトに単にリンクされているだけだとしたら、それを見た人が、すぐにその大手事業者が、そのマイナーサイトと関わりがあるものだと認識してしまうものなのだろうか。大多数は単にリンクされている程度にしか思わないのではないだろうか。
もしアフィリエイトであれば、登録時に多少の審査があると思うので、それにより企業イメージが悪くなることは考えられるが、リンクだけであれば、影響は案外小さいように思えるのだが、それは気のせいだろうか。