法律解釈16: オークション仲介業者への責任追求

 
相談事例から“法律解釈と実務”

法律解釈16: オークション仲介業者への責任追求

 相 談 概 要

 米国ebayにてstatue(人形)を2体同一商品、同一出品者(商品IDは別)から落札した。自分のIDで落札している。ただ、落札後の送金、及び商品受け取りを、海外オークションの仲介業者F社へお願いした。
 商品、及び代金は以下の通り。

(Disney Nightmare Before Christmas Jack Statue )US $185.00
(Disney Nightmare Before Christmas Jack Statue )US $185.00
落札額        $370.00
 送料         $270.00
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計              $640.00
送金額        $640.00
円換算( 120.60 )              ¥77,184
為替作成料、送料(米国内)    ¥ 2,340($19.40)
コミッション(手数料)            ¥ 8,924
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合計総額  ¥88,448

仲介業者に上記総額を振り込み、仲介業者から商品が届いたので確認したところ、1つ違う商品が届き、しかもその商品の一部に破損が見られたので、仲介業者を通しクレームを入れたところ返金に応じるとの返事があったため商品を直接返却した。
出品者に商品が届いたらしく、出品者より仲介業者に「壊れたものを送った覚えはない」との連絡が入り、「当方も迷惑で、対処に困る」といわれてしまった。
それから何回か仲介業者を介して返金の連絡を入れてもらったが、明確な答えがなく最近は連絡を入れもすぐ電話を切られてしまう状態になってしまった。仲介業者からは、「残念ですが これ以上どうすることもできません」と言われてしまった。

自分は、この出品者と直接やり取りはしておらず、全てこの仲介業者が出品者とやり取りしている。今後、購入代金、米国からの送料、及びこちらからの返品のための送料を請求したいと思うが、どうしたらよいだろうか。コミッション料を取った仲介業者に責任は無いのだろうか。サイト上、明確な規約の記載は無い。

 法 律 解 釈

 本件のF社と相談者の間には、仲立を依頼する契約が存在するものと認められるが、同社のHP上に明確な利用規約等が発見できなかったため、それが具体的にどのような内容であるのか今ひとつ判然としない。

F社の責任を追及するためには、法律上、F社の法的責任を認める規定が存在するか(例えば、運送取扱人としての責任等)、または契約上、F社が何らかの債務を負担していなければならず、本件に即して言えば、商品の品違いが存在した場合、又は商品に瑕疵があった場合にこれについて賠償等する義務を負担している必要があるものと思われる。
そこで、F社の法的地位について考えてみると、商法上の運送取扱人等、特別な責任を負担するものに該当すると考えるのは困難なように思われ、また、消費者契約法や割賦販売法等により特に責任が認められる地位にあるものと考えることも困難なものと思われる。

そこで、基本的にF社の負担する契約責任は、明確ではないが、相談者との契約に基づいて負担する不明確な内容の契約責任のみということになるものと思われる。具体的には、オークションサイトにおける商品落札の委任又は準契約と理解することが可能なものと思われる。
そこで、考えてみると委任契約の受任者には、善管注意義務が認められているが、F社の受任している業務は、オークションでの落札、代金の支払い代行及び商品配送の手配と業務である。そこで、送付されてきた商品の品違いや、運送中の破損等についてF社の責任を直ちに追及することが可能とまでは言えないように思われる。

 解 説

  ネットオークションの代行出品や仲介業者はいくつか存在する。何より便利なのは、取引相手に個人情報を知らせないで済むところだろう。ただ、あくまで、このような事業者がやることは、商品の受け取りや引渡し、代金の授受の「事務代行」であって、エスクローではないということである。

 このケースは海外のオークションの仲介業者であり、欲しい商品を自分のIDで落札のみ行い、その後の事務手続きをこのような代行業者にすべて依頼すれば、面倒な英語でのやり取りをしないで済むし、海外送金等の手間が要らない。スキマ産業として考えれば便利なものである。

 ただ、商品が届かないとか、壊れていた、間違っていた等、取引した商品に対するトラブルに関しては、単なる「事務代行」である仲介業者に責任は無く、あくまで当事者間で解決すると言うことであろう。でも、個人情報を取引相手に知らせていないのだから、直接交渉することも難しいし、英語はできないし、トラブル解決のためのやり取りは、やっぱり「事務代行」のお仕事となるのだろう。
というか、仕方なくとしても、結果、トラブル当事者の間に入ってなんだかんだやり取りを始めてしまえば、既に「事務代行」のお仕事ではなくなっているような気もするが・・。