9月〜10月頃、掲示板に、年末に届く予定の子供服の福袋が1つ10,500円で予約開始されていた。その時の記載には、福袋の商品がワンピース、ジャンパースカート、トップス、ボトム、アクセサリーなど12〜17点ほど入る、ということで予約をし、先払いのため指定口座に入金した。
そして昨日商品が到着してみると、5点ほどしか入っておらず、普通の金額からしても3,000〜5,000円分あるかどうかという、どうしようもない物ばかりの商品だった。
しかも予約時には、ご希望の商品を1点お入れします、ということと、冬物かオールシーズン用を選ぶようになっていたが、実際は全然要望が聞いてもらえず、掲示板を見ると、ひどい方は全然サイズの違う物が入っており使えない、と言っていた。しかもシミのついたものまであり、返品しようと連絡したがメールも返事が来ず、電話しても出ない。
連絡の取りようもなく、商品自体にも納得できないので、どうしたらよいのか分からない。福袋を購入された方のほとんどが私と同じ様なことになっていて、みんなで、その状況を報告しあっている。
今後、どのような対処方法があるのか、このような場合返金、返品は可能であるのか等、助言が欲しい。
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私は輸入ブランド子供服をネット販売しているのだが、今回10月より予約制にて福袋の販売をし、12月20日付けにて発送をした。多くのお客様はB社のサイトに書き込みをした掲示板を見て注文されている。
春先にOPEN記念に販売した福袋は、始めたばかりで多く仕入れをしすぎてしまい、実際12点前後の商品をお入れして発送したのだが、今回は予約注文だったため、商品案内にて「12点〜16点ほどお入れする予定・・」と記載したが、実際仕入れをしてみると、荷物が多く海外からの送料や税関やらで、それ程の内容を入れられなかったのだが、とってもかわいく良い商品が仕入れられたので、用意した商品でお客様へは発送させていただいた。
全てで300個弱販売したのだが、お客様はB社の「福袋ネタばれ掲示板」等でお客様同士やり取りをし、大半(まだ件数まで把握できていない)のお客様からは「返品希望」「受け取り拒否」と題しメールにて連絡がきている。
私は、あくまでも予定だったので「12点〜16点ほどお入れする予定」と記載したのに、用意できなかった事は本当に申し訳なく思うが、お客様の中には「詐欺で訴える」「警察へ通報する」「マスコミに流す」「金返せ」「48時間以内に返金しろ」といったメールを送ってきており、私は個人で一人にて運営しているので、メールの確認や対応方法の検討だけでも時間がかかってしまう。電話をしてくる方もいるが、電話では注文頂いた内容や住所などがすぐに確認できないので、本日午前中までにメールを下さったお客様に対しては、メールにて
『お客様 各位
この度はご注文を頂きました福袋の件にてメールやお電話にてご連絡を多数頂いておりますが、お一人お一人へ順番にて対応しております、必ずご連絡をいたしますのでお時間がかかってしまう事ご了承下さいませ。
お客様の中には、お電話にてお問い合わせをくださる方もいらっしゃいますが、お電話にて受けておりますとこちらでの確認作業やメールでご連絡を頂いております方への返信にこれ以上お時間がかかってしまいますので、勝手申し恐れ入りますが、メールにてご連絡お願いいたします。
取り急ぎご連絡まで。』
と連絡をした。
今日は祝日(天皇誕生日)だったが、どうにか弁護士にも連絡がつき、警察署にも相談した。両者とも「予定どおりに仕入れが出来なかったのならばお客様が納得のいくようにHP上にて報告し、あくまでも福袋だから、中身を見て返品だの人の話を聞いて返品というのは出来ない、毅然とした対応をすべきだ」という返答だった。
お客様の中には本当にサイズ違いが入ってしまっていた方がいたようなので、もちろん返金や交換などに応じる予定ではあるが、お客様へ送った内容など、全てB社の掲示板やお客様が本日作った「被害者の会」というサイトで話しをしていて、中には配送で使った宅配業者や、私のHPをアップしているプロバイダT社へ連絡をし、T社からは「迷惑しているので早急に対応を」と言われている。
仮に数名の方へ返品、返金してしまうと、殆どの方が希望するのが目に見えており、当方としましても仕入れにお金を使ってしまっているため、希望者全員への返金は不可能である。
どうにか解決したいのだが、どうしたら良いだろうか。詐欺だ、訴えるだなんて言われてしまい、病気になりそうな日々をすごしている。早急に解決できるよう、自身でも返金以外の方法で色々検討してはいるが、一人にメールを送るとその内容がすぐに流れてしまいまたメールが殺到してしまう。また明日、弁護士事務所へ直接相談に行く予定だが、年末の時期が時期なだけに早急に対応できるかどうかも不安である。
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(1)
NO.87ジンボリー年末予約福袋
ジンボリー専門店です!
前回大好評でした福袋!前回購入出来なかったお客様も購入できるよう、年末福袋を予約販売することになりました!
ジンボリーHPより必ず福袋へ入れて欲しい商品も1点選べ、1万円にて13点〜17点入るすっごく人気の福袋です!
ジンボリーファンの皆様是非お待ちしております! 男の子用女の子用、サイズはベビーから12歳までOKです!
(2)
123.ジンボリー年末予約福袋!!
ジンボリー専門店です!
当店自慢の商品のジンボリー福袋ですが、10月よりHPにてご予約販売いたします!
4月に販売した際には1万円の福袋に平均12〜17点の商品(ワンピ、レギンス、トップス、サンダル、髪飾り)が入り大好評を頂ました !
当店の宣伝商品ですので年末ももちろん赤字にて頑張りま〜す!
1.
まず、本件を回答する前提として、福袋の売買契約一般について、その特性を検討したいと思う。
福袋の売買契約は売買契約の一種と考えられるが、通常の売買契約では売買の対象が定まっており、それに対し代金を支払うというものである。これに対し、福袋の売買契約は、福袋に何を入れるかは売主の裁量にある程度任せることを買主が承諾しており、基本的には、品数その他の内容が特定されていない点が最大の特色ではないかと考えられる。
但し、上述の売主の裁量も下記のような制限を受けると考えられる。
第1に、売買の対象を特定しないということにより買主はリスクを負うが、そのリスクの代わりに、福袋には値段以上の価額の商品が入っている、という期待を買主はもっており、商品の価額の合計額が少なくとも福袋の値段を上回っていることが最低限の契約内容と言って良いと考えられる。
第2に、売主の申込みの誘引行為により、売買の対象がメーカー、種類、商品の最低限の総額、サイズ等について明示されている場合には、それも契約内容になると言ってよいと思う。
2.
以上を前提に、本件の契約内容を検討すると、本件で販売店側は、(1)「ジンボリーHPより必ず福袋へ入れて欲しい商品も1点選べ、1万円にて13点〜17点入るすっごく人気の福袋です!ジンボリーファンの皆様是非お待ちしております!男の子用女の子用、サイズはベビーから12歳までOKです!」、(2)「当店自慢の商品のジンボリー福袋ですが、10月よりHPにてご予約販売いたします!4月に販売した際には1万円の福袋に平均12〜17点の商品(ワンピ、レギンス、トップス、サンダル、髪飾り)が入り大好評を頂ました!」というふうに申込みの誘引行為を行って売買の対象物を限定しているから、購買者は基本的にはこれを契約内容と考えて契約の申込みを行ない、販売店側はこの申込みについて承諾していると考えられる。
法律上厳密に言うと、上記の(1)と(2)の勧誘の内容は多少異なり、(1)の勧誘内容を見た購買者は(1)の契約内容の申込み、(2)の勧誘内容を見た購買者は(2)の契約内容の申込みというように、各々契約内容は異なってくると思われる。
従って、(1)及び(2)に共通する基本的な契約内容としては、当事者間で福袋に何点か入っているジンボリーの子供服・アクセサリーを、1万円の代金で売買するもので、その子供服・アクセサリーの合計額は、福袋の値段である1万円を上回っていることが必要であると考えられる。
そして、(1)については、上記の他、購買者はジンボリーHPより必ず福袋へ入れて欲しい商品も1点選ぶことが可能であり、選んだ場合にはこの商品が入っていることも売主の債務となる。また、「男の子用女の子用、サイズはベビーから12歳までOKです!」という部分についても、衣服という特性からすると本質的な要素と言えると考えられるから、サイズを指定したのに、それが違った場合も不完全履行と言えると考えられる。
ただ、「12・3点〜17点入る」という点については、上述のような福袋の特性からすると商品の合計額が福袋の値段である1万円を上回っていることが本質的な要素であり、商品の数は通常本質的な要素ではなく、予告した点数より少ないだけでは、債務を履行していないから商品を追加すべきだとか、契約解除により返金すべきといった主張は難しいのではないかと思われる。
商品の点数が少ないだけでなく商品の総額が1万円を上回っていない場合には、不完全履行として、商品を足す必要があると考えられる。
この点、販売店側は、「予定どおりに仕入れが出来なかった」というようなことを言っていますが、債務不履行の責めを免れる理由とはならない。
3.
上述のように、法律上厳密に言えば、個々の契約内容は異なってくるが、訴訟上は、個々の具体的な契約内容を認定するのは相当困難だと思われるので、販売店側が(1)(2)を誘引行為で明示していれば(曖昧な表現だった場合には微妙ですが)、ほぼ一律に(1)(2)の上記の内容を含んだ契約が認定されるのではないかと思う。
従って販売店側は、上述の、「商品の合計額が1万円を下回った場合」「サイズ違い、HPによって指定された商品が入っていなかった場合」には、履行を追完する義務があり、これができなければ、買主による契約の債務不履行解除(民法541条)が可能と考えられる。
20代の主婦が個人で経営するネットショップで起こったトラブルであり、予約販売と称し1万円先払いにて販売した福袋には、ほぼすべてにおいて広告を大きく下回る内容の商品しか入っておらず、それを受け取った客である主婦達から一斉に苦情が寄せられたケースである。
この案件はトラブルが年末にかけて発生したこと、50人を超える相談がいっせいに寄せられたこと、福袋の中身の状態が全員異なること、掲示板を利用した集団心理と、それにより追い詰められる事業者の状況といった、いくつもの問題点があったため、交渉が難航した。
その全経緯は後編でお伝えする。