オークション出品者で個人男性。トラブルの相手は落札者の男性。
先日オークション内にてブランドmarc jacobsのタンクトップを2点、及びヘンリーネックのカットソー2点を、すべて未使用品で出品していた。
一応商品的にはレディースの商品だが、両方ともメンズライクな商品であり、また適用身長も158cmから168cmと紙のタグに記載があり、また実際に自分も同じモデルを着用しているため、「メンズ」のカテゴリのタンクトップと長袖Tシャツのコーナーに出品していた。文章にて着丈・身幅の実寸サイズを記載し画像も3つほどのせ、全体の表・バック・タグの順序でのせている。
ヘンリーネックの方は当然レディースなので、ボタンが逆となっている。それは1枚目の画像をよく見れば明らかで、特にひとつのほうではボタンの部分で重ねあわさっている部分に、左横から紙の値段などのタグが一部分隠れて挟まっているので、よく確認すればレディースだと分かるはずである。
落札者は、正しいカテゴリに商品がのっていないとの主張により、返品したいとのことである。ちなみにこの落札者は評価のなかで、アディダスのTシャツがナイキのTシャツのカテゴリに掲載されているといった商品を落札し、更に相手に対して「非常に良い」という評価をしている。似たようなケースは他にも3回ほどあるみたいである。
またこちらとしては「返品・キャンセル・クレーム・入札後の取り消しは一切受け付けられません」と記載をしていた。この場合相手の返品要求に対して応じる必要はあるのだろうか。
ちなみに、相手方はこちらの電話番号を教えろといってきているが、嫌がらせがある可能性もあることを考えて、こちらからお知らせをしていない。これは問題になるのだろうか。
オークションにおける個人売買も、基本的には通常の売買契約である。従って、たとえ事前に「返品・キャンセル・クレーム・入札後の取り消しは一切受け付けられません」と書いていても、契約の内容と異なる商品が届いたような場合には、売り主が責任を負わなければならないこともある。
商品のカテゴリが違ったということだが、やはり、アパレル男性用に出品されていれば、男性用と考えるのが自然であるから、そうでない場合は一言、「商品は女性用ですが、男性でも十分着用できます」などと明確に断っておく必要があったと思われる。
写真をよく見ればボタンの向きはわかるはず、といっても、男性用のコーナーで買い物をするときに、そこまで確かめることは、通常ではあまり考えられず、商品が女性用であるというような特別な事情があるときは、そのことを明記すべきだと思われる。
ブランド名の異なるTシャツを、違うカテゴリで落札しているケースもあるようだが、この場合は写真で見れば明らかであり、男性用か女性用かの区別とは、若干異なると思われる。
本件は、法律的には、契約の成立に際して「錯誤」があったものとして、相手方は契約の無効を主張できるケースとなる。
錯誤による無効を主張するに当たっては、その錯誤が重大であること、錯誤を主張する人に落ち度がないことが必要になるのだが、この場合はやはり先方の請求を拒否することは難しいと言わざるを得ない。
返金の際の金額に関しては、この様なケースでは、振り込まれた金額はすべて返金しなければならない。理論的には、商品の返送料、返金手数料もこちらの負担ということになる。ただ、そのあたりは、話し合いによる譲り合いの余地もないわけではないと思われる。
最後に、電話番号を教えていないということだが、メールのやりとりも可能なわけであるから、そのことによって特に責任が発生することはあまりないと思われる。
同じカテゴリ違いでも、ブランドの異なるカテゴリに出品されていた場合は「見れば分かる」ので錯誤には当たらないが、男性・女性用で異なるカテゴリに出品されていた場合は、錯誤による無効を主張することが出来る、ということになる。
柄やデザイン(スカートとか)によっては「見れば分かる」ものもあるかと思われるが、今回の商品はカジュアルな無地のタンクトップとカットソーということで、一見、男性用か女性用かが区別がつかない商品でもあり、このような判断になると思われる。
女性用の商品を、見れば分かる、自分が着ているから、といって、わざわざメンズのカテゴリに出品するというのも何か他に理由があるような気もするが、オークションにおいても、商品と違うカテゴリには出品しないよう注意を促している。
オークションの個人間取引においても、出品画面は立派な「広告」なのだから、広告に間違いがあったら、それに対して責任を取らなくてはならないということを、もっと認識して欲しいと思う。
また、個人出品であれば、もちろん特定商取引法の対象外であるため、事前の連絡先や氏名の表示義務は負わない。出品者は代金をもらい商品を引き渡せば、評価以外のリスクは無い。
従って、取引後、自分の情報開示をする前にトラブルになったときに、わざわざトラブルの相手方に対し、未だ知らせていない電話番号などの情報を追って知らせたいと思う正直者もあまりいないだろう。出品者側でそこまで誠意のある人であれば、既に前向きに話し合いをして解決しているはずである。
この点は落札者側が、商品引渡し前に出品者の個人情報をきちんと入手、確認しておく必要がある。そうでないとトラブル時の落札者側の落ち度になり、補償制度が受けられないリスクも生じるからである。