法律解釈33: 商品代金以外にかかる費用

 
相談事例から“法律解釈と実務”

法律解釈33: 商品代金以外にかかる費用

 相 談 内 容

 オークションにて商品を落札したが、落札後に落札金額以外、出品者が独自に定める手数料がかかることを知った。商品説明にその旨の表記はなく、自己紹介欄に表記があり、商品説明には「自己紹介欄を参照ください」とだけ書いてある。
 オークションでは、そういったものは商品説明に記載するよう書かれているので、キャンセルを申し出たが、今度は規定にないキャンセル料の支払いを求められている。
 この場合、どのように解釈してよいのか、助言が欲しい。

 法 律 解 釈

 まず、落札者が、当該手数料を支払う義務を負うか否かについて説明するが、出品者が、当該手数料を請求できるためには、出品者と落札者との間において、当該手数料の支払いについての合意がなされている必要がある。すなわち、本件においては、「自己紹介」欄の表示内容について、出品者・落札者間に合意が成立していたか否かが問題となる。
 しかし、オークションにおいては、落札者は、「商品説明」に表示された内容をもとに、落札するか否かの意思決定をなすのが通常であると思われる。従って、落札者が「自己紹介」欄の表示内容を認識したうえで落札を決定したという事実が、出品者によって立証されない限り、「自己紹介」欄の表示内容について、落札者が合意していたということにはならないと考えられる。
 本件では、上記の理に従い、原則として、出品者独自の手数料を支払う義務を負うことはないと考えられる。

 次に、出品者が上記手数料の支払いに固執するため、キャンセルを申し出た際に、出品者独自のキャンセル料を支払う義務があるか否かについて説明する。ここで、「キャンセル料」の趣旨は必ずしも明確ではないが、売買契約関係の解消の対価であることを前提とすることとする。
 ここでは、まず出品者と落札者の間の法律関係、すなわち、出品物についての売買契約の成否が問題となるところ、近時では、オークション成立だけでは売買契約は成立せず、別途出品者・落札者の間の協議によって売買契約が成立するという見解が有力であり、この見解によれば、本件では、そもそも、未だ売買契約成立にすら至っていないと思われることから、「キャンセル料」が発生する余地はないことになる。

 また、この見解をとらなくとも、上記の通り、通常、落札者は、落札金額以外に、出品者が定める独自の手数料を支払うことは想定していないと考えられることから、出品者と落札者との間で、出品物の取引条件(売買契約の内容)につき、齟齬が生じていることになる。とすれば、原則として、落札者から、売買契約の無効を主張することができると考えられる。この場合、落札者は、キャンセル料等何らの支払義務を負うことなく、売買契約の解消を主張することができる。

 解 説

 特定商取引法では、広告表示義務に「販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときは、その内容およびその額」とされている。諸般の手数料等がこれに当たる。

 それとは別にネットオークション上では、数年前、オークションに支払うシステム手数料を請求したり、事業者でもないのに後から消費税を徴収、梱包手数料なるものを請求したり、その他、いろいろな名目で落札代金以外に落札者から別料金を請求するようなケースが多く発生した。
 双方が合意していない場合はもちろん、オークション出品時の商品説明に記載しておき、一見双方で合意されていると見られるケースにおいてもトラブルが多く発生したため、大手オークションサイトでは、登録事業者以外が消費税を徴収すること、落札者にシステム手数料を請求すること、また、輸送料や手数料などの名目で、社会通念上不適切な金額を追加費用として落札者に求めることも禁止するようになった。

 その結果、最近では、落札代金とかかる送料以外の請求については、トラブルが減少傾向だが、それでもこのケースのように、別途自己紹介欄に記載しておき、自己紹介欄を見るよう促したのだから、その分を支払うよう主張する出品者もいるようである。これでは、利用規約にだけ料金のことを書いておき、サイト上には「料金についてはこちら」ではなく、あくまで「利用規約をご覧ください」としか書いておかないワンクリック詐欺とあまり変わらないような気もする。