その9: 特定商取引法(1)

 
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その9: 特定商取引法(1)

 通信販売の適用除外

<事例>

 イギリス在住日本人、学生。
 日本のショッピングサイトで17,420円分の衣料品を注文し、945円の送料を払い、海外配送にて手配をしました。
 12日後、にイギリスの運送会社(PARCEL FORCE)から、通関税+諸費(£54.11/日本円で一万円強)の請求書が私宛に送られ、金額を支払わない限り品物が届かない状態になっています。

 ショップにメールで、諸費経費、税が掛かることの記載がネット上にしていなかった旨、指摘をしましたが、以下のようなメールが返信されてきました。

『海外に居住のお客様が、日本のお店での購入した商品を国外に持ち出す』という状況になります。個人輸入のようなものをご想像ください。
個人の持ち物を国外へ持ち出す状況とはことなりますため、通関にて税金が発生する場合がございます。日本の免税店以外でのお買い上げ商品を持ち出す際と同じです。
これまでに、多数の海外発送を行っておりますが、通関で発生する金額に関しては、全てお受取人様のご負担にてお願いしております。
金額につきましても、国により異なりますため、当方では明確な金額や税率を記載することは出来ません。
そのため、発送後の通関で発生する税金につきましては、当方にて負担することは出来かねます』

 この返事にどうしても納得できないのです。

 送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときは、その内容と金額上記載をしなければいけないという条項が特定商取引法にあるはずですが、ショップサイトには海外発送がEMS便で可能となっていても、海外配送時に掛かる関税や諸費税の記載は確認できませんでした。
 しかし、実際は、

DUTY(関税)£15.42
VAT(税金)£25.19
PARCEL FORCE CLEARANCE FEE(PARCEL FORCE社が行った通関代行手数料)£13.50

 トータル54.11ポンドを払わない限り配達は行われず、なおかつ20日以内に払わないと荷主に送り返すとのことでした。

 特定商取引法・適用除外(法第26条)に海外にいる人に対する契約は適用されないと書いてありました。私は適用外者になるのでしょうか?
 現在海外にすんでいるのですが、特定商取引法が私のケースに適用されるのかされないのか教えて頂きたくメールをさしあげました。

・・・・

 相談者は、現在、海外(イギリス)に在住であり、その海外より日本国内の事業者とネット上で取引をしていることになります。

 そこで、相談者の疑問についてですが、

特定商取引に関する法律 第5節 雑則 
第26条(適用除外)
前3節の規定は、次の販売又は役務の提供で訪問販売、通信販売又は電話勧誘販売に該当するものについては適用しない。
・・・
2「本邦外に在る者に対する商品若しくは権利の販売又は役務の提供」

 とされています。

 これにより、この相談者の取引については、通信販売における同法の適用除外に該当するかと思われます。
 従って、当該事業者が海外在住者に対し取引を行う場合は、同法の通信販売における表示義務の規制が及ばないため、サイト上に関税の記載が抜けていることについて、それを即ち違反行為と指摘することに関しては困難かもしれません。

 また、当該店舗に仮に通信販売における表示義務違反があったからといっても、それに対し罰則規定こそあれ、通信販売にはその違反行為により、申込みの撤回や取消が可能である旨の規定はされていないので、契約の効果に関してはその取引の状況や事情により、個別に判断がなされるのではないかと考えられます。

 関税自体は、当該店舗に直接支払われる内容の金銭では無いのですが、ただ一方で、当該店舗が海外発送を受けているのであれば、事前に関税に関する条件や知識、その内容などを予めサイト上に記載しておくことにより、少なくともこのようなトラブルを未然に防ぐことも出来ます。それがネット通販を行う事業者として、望ましい姿ではないかと考えます。

 なお、ECネットワークのECガイド「通販セラーズガイド」においては、以下のように定めています。

7. 海外取引

電子商取引においてはボーダレス取引が可能であることに鑑み、事業者は予めサイト上に海外注文の可否について明記することが望ましい。

また、海外注文を受ける場合は下記内容を表記すること。

取扱商品
通貨
関税がかかる場合はその旨と金額
発送方法とかかる費用
引渡し期間
紛争が発生したときの解決方法
海外の消費者と取引を行う場合は、その国の法令や商慣習にも配慮することが望ましい。

なお、事業者が使用するサーバが海外に存在している場合でも、日本に居住する消費者との取引及び紛争解決に関しては、日本法を基本とすることとする。