その10: ウェブ上の確認画面について(4)

 
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その10: ウェブ上の確認画面について(4)

 確認画面上に「購入する」ボタン1つしかない場合

<事例>

 会員サイトで、新しく月に3,000円で提供されるサービスが、会員は無料だと勘違いして申込みました。しかし、実際は無料ではなく、会員登録の際に登録していたクレジットカードに、3,000円の請求がありました。
 無料でないのであれば、申込みはしませんでした。

 良く考えてみると、サービス申込みのページから、会員IDとパスワードを入力してログインした後、確かに月3,000円である旨の内容と、その申込みに対する確認画面が出てはいたのですが、その確認画面には「購入する」というボタンしかなく、「前の画面に戻る」といった意味のボタンは、一切存在していませんでした。
 これでも、法律上の確認画面の要件を満たしているのでしょうか。

 

 電子消費者契約法の「逐条解説」によれば、第3条の趣旨に基づく確認画面の「具体的な例」がイ・ロとあります。

イは
「送信ボタンが存在する同じ画面上に意思表示の内容を明示し、そのボタンをクリックすることで意思表示となることを消費者が明らかに確認できる画面を設置すること」

ロは、
「最終的な意思表示となる送信ボタンを押す前に、申込みの内容を表示し、そこで訂正する機会を与える画面を設置すること」

参考 (meti.go.jp/topic/downloadfiles/e11225bj.pdf)

 そこで、この事例では、『この確認画面は、ロの前半(内容の表示)の要件は満たしているが、訂正ができる措置は何も無く、また例えば「戻る」「キャンセル」などのボタンも画面上にないため、購入しない場合は、×ボタン等で自分でブラウザを閉じるしかなく、これでは「訂正する機会を与える画面」という要件は、全く満たしていないのではないか』ということです。

 ただ、この場合、これはあくまで「具体的な例」として挙げられているものに過ぎないものでもあり、

 まずイの場合、
「送信ボタンが存在する同じ画面上に意思表示の内容を明示し、そのボタンをクリックすることで意思表示となることを消費者が明らかに確認できる画面を設置すること」とあり、この内容は『送信ボタンをクリックすることで同じ画面上に表示された内容の契約申込みの意思表示になるということが確認できるように』という趣旨と思われます。
 今回であれば、確認画面上に「購入する」というボタンがあるということなので、これで足ります。
逆にイでは、「購入しない」「戻る」というボタン設置や説明書きをしておくようはっきりと定めているわけでは無いと思われます。

 ロにおいては、
 「最終的な意思表示となる送信ボタンを押す前に、申込みの内容を表示し、そこで訂正する機会を与える画面を設置すること」と定めていますが、これは「訂正する機会を与える画面」であり、特に「その画面上で訂正できるよう」定めているものでも無いと思われます。

 そこで、確認画面を見て、もし訂正が必要であれば、「ブラウザの『戻る』ボタン」を押すことで、容易に前の画面に戻れることはインターネットでブラウザを利用している人であれば、通常、一般的には充分理解されていることと思われます。
 さらに、購入しない場合、同じく「ブラウザ右上の『×ボタン』」をクリックすればブラウザが閉じて先に進まないことも、インターネットを利用するユーザであれば、一般的に広く理解されているものと思われます。

 従って、この事例の場合の「購入確認」画面は、実質的に確認を求めていると判断し得る措置になっており、確認画面を見た上で、止めようと思えば、止められるようにもなっているように思われるため、表題のように確認画面に「購入する」ボタン1つしかなかったとしても、電子消費者契約法第3条の「確認を求める措置」として認められる可能性が高いと思われます。

 また、特定商取引に関する法律 第14条には、事業者は、顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為として、省令に定めるものをした場合において、通信販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害される恐れがあると認めるときは、主務大臣(経済産業省)が、その事業者に対し必要な措置を講じるよう指示することが出来るとされています。省令第16条では、上記のイ、ロに準じた内容が記載されています。
 ただ、特定商取引法の通信販売の場合は、現時点では指定商品、指定役務、指定権利制をとっていますので、それら指定商品等に、当該サービスが該当しない場合は対象外になります。

 ただ、確認画面に「購入する」ボタンだけではなく、「戻る」ボタンを並行して用意しておくことは、サイトの構成上、特に難しい技術を必要とするものでもなく容易なのですから、確認画面には「購入する」「戻る」ボタンを両方用意しておくことが消費者保護の観点からは大事なのではないかと考えます。