その14: 特定商取引法(4)

 
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その14: 特定商取引法(4)

 事業者側の都合に基づかない返品特約の記載がない場合

<事例>

 先日、ネットショップにてバッグを2点購入したのですが、こちらの都合で返品致したく、商品が届いた日にショップにその旨メールしました。すぐにお返事が届き、「お客様の都合による返品は不可です」との内容のメールを受け取りました。
 やはりこちらの都合ですので、一度は仕方がないと諦めようと思ったのですが、HP上におけるショップの「返品」の欄には『初期不良の場合、送料弊社負担でお受けしますのでご安心ください』の一文のみしかなく、お客様の都合による返品が出来るのかどうか分かりにくい記載だと思いました。

 そこで、自分なりにネットで調べ、経済産業省が出している「通信販売広告表示事項」を見つけました。それによると、ショップ側には、瑕疵のない商品の返品に関する特約事項を記載する必要がある、とありましたので、その旨をもう一度メールに記載し、「貴社の返品表示ですと、お客様都合の返品は不可、という意味には取り難く、今回は返品を受ける義務が生ずるのではないでしょうか?」というような内容のメールを送ったのですが、それきり返事がありません。
 メールが届いてない可能性も視野に入れ、2日後に同じ内容のメールを再送いたしましたが、返事はまだ来ておりません。

 やはり、こちらの都合での返品ですし、こういう状況では返品できる可能性は低いのでしょうか?

・・・・

 このショップのサイト上には、「返品」の欄において、以下の記載のみありました。

『初期不良の場合、送料弊社負担でお受付しますのでご安心ください。宅急便着払いで下記住所までご返送いただければ幸いでございます』

 事業者が消費者と取引する際、それが通信販売に該当する場合は、特定商取引法、広告規制の表示義務として、事業者名や連絡先等、定められた事項を表示する義務があります。

 そして、その中には、商品引渡し後の引き取り、またはその返還についての特約として、いわゆる返品にかかわる特約についても、その表示義務の1つとして、その内容を予め表示することが義務づけられています。
 もちろんそこでは、“お客様都合による返品不可”という設定も可能ですが、その場合、必ず表示する必要があります。
 一方、商品に隠れた瑕疵がある場合の販売業者の責任について定めがある場合は、その内容についても表示義務を負いますが、これは通常の民法の定めに従う場合は省略が可能です。

 今回のケースでは、この「隠れた瑕疵がある場合の販売業者の責任」についてのみが表示がなされ、通常の返品に関する特約内容が表示されていない状態です。
 このように法律上の表示義務として返品に関する特約がない場合、経済産業省は「消費者が返品可能と信じていたような場合には、特商法の趣旨を踏まえて返品の要請に応ずるべきものと考える」という、少々曖昧な見解を出しています。

 ただ、事業者は法的に表示義務を負っている上、返品に応じたくなければその旨記載しておけばよいだけですし、また返品に関する特約事項に表示義務を課しているのは、通販では返品に関するトラブルが多く発生し、そのための消費者保護であることを考えますと、その表示が無いことについては、基本的には返品可能と一般的に考えても良いような気がします。

 このケースの返品の記載から考えると、例えば、“瑕疵のある商品は送料ショップ負担とあるから、きっと瑕疵のない商品の返品は送料を客側が負担すればきっと可能なはず”と信じていたような場合は返品可能と解される余地があります。

 さらに、本年6月に行われた特定商取引法の改正では、インターネット通信販売においては、このような返品特約の表示が無いために同様のトラブルが多く発生していることから、返品特約の表示がない場合は、8日間、送料消費者負担でその売買契約の申込みの撤回等をすることが出来ると明確にされています。

 また、この相談者のケースでは、ショッピングモールに出店していたショップと取引を行っていました。もちろんショッピングモールは、原則的には個々のショップとの取引には関与しませんが、ショップへの問合せに対し全く返事が無いようであれば、ショッピングモールに連絡して事情を伝え、店舗から返事をくれるよう要請してみることも考えられます。