<事例>
在宅ワークのサイトに登録していたところ、ある日Aという事業者から「アフィリエイトで月数万円の収入が得られます」と電話勧誘されました。
そのためには、AではなくBという事業者のサイトから、仕事に必要なシステム一式を購入申込みするよう言われました。システム購入は数十万円かかり、消費者金融から借りて支払いました。
Bのシステムでは、今度はCというところに自ら個人名で登録して、Cが提供するアフィリエイトやドロップシッピングの広告を、そのBより購入したシステムに貼り、それらアフィリエイトやドロップシッピングによる売り上げに応じてCから収入を得るという流れになります。
ただ、Cは一般的なアフィリエイトやドロップシッピングのいわゆるサービスプロバイダであり、もともと誰でも個人で無料登録できるところです。もちろんAやBと提携関係にはないようです。
しかも、Bに高額なシステム費用を支払った割には、収入はCからの収入のみであり、それもほとんどありません。約束が違うのでBに解約を申し出ても、Bは「Aという会社は知らない」「Bでは一切電話勧誘行為はしていない、単にネットの申込みに応じて販売する通信販売」「このシステムは一般的に誰でも買えるもの」といって、Aとの関係を一切否定します。
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A、B、Cの役割は以下の通りです。
A・・・在宅ワーク希望者にアフィリエイト収入の電話勧誘をする。
B・・・アフィリエイト収入に必要なシステムの販売を行う
C・・・アフィリエイトによる報酬を支払う
(借り入れは消費者金融)
A、B、Cそれぞれが全く別の独立した事業者です。
この相談は、収入が得られるという電話勧誘により、仕事に必要なシステムを数十万円で購入、しかし実際は勧誘時の説明と異なり、ほとんど収入が得られなかったというトラブルです。
このような被害の場合、いわゆる内職商法やモニター商法を規制した、特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」に該当するかどうかを検討することになります。「業務誘引販売取引」に該当する場合は、20日間のクーリングオフをはじめ、書面交付義務や誇大広告の禁止、不実告知による取り消しなど、さまざまな規制がかかってきます。
この契約であれば、例えば契約時に必要な書面(電子データではなくリアル書面)が交付されていない場合は、クーリングオフの起算日が訪れず、再発行後20日を過ぎるまではいつでもクーリングオフが可能となります。
特定商取引法 第51条(定義)
この章並びに第66条第1項及び第67条第1項において「業務提供誘引販売業」とは、物品の販売(そのあつせんを含む。)又は有償で行う役務の提供(そのあつせんを含む。)の事業であつて、その販売の目的物たる物品(以下この章において「商品」という。)又はその提供される役務を利用する業務(その商品の販売若しくはそのあつせん又はその役務の提供若しくはそのあつせんを行う者が自ら提供を行い、又はあつせんを行うものに限る。)に従事することにより得られる利益(以下この章において「業務提供利益」という。)を収受し得ることをもつて相手方を誘引し、その者と特定負担(その商品の購入若しくはその役務の対価の支払又は取引料の提供をいう。以下この章において同じ。)を伴うその商品の販売若しくはそのあつせん又はその役務の提供若しくはそのあつせんに係る取引(その取引条件の変更を含む。以下「業務提供誘引販売取引」という。)をするものをいう。
ここでは、物品の販売または役務の提供の事業であって、その販売の目的物たる物品又はその提供される役務を利用する業務(その商品の販売若しくはそのあつせん又はその役務の提供若しくはそのあつせんを行う者が自ら提供を行い、又はあつせんを行うものに限る。)に従事することにより得られる利益を収受し得ることをもつて相手方を誘引し・・・とありますので、そこで、この相談で問題となってくるのが、AとBとCはそれぞれ独立している事業者のですので、その間にカッコ書き内の「あっせん」がAとBとCにおいて、該当するのかどうかという点です。
先ず、アフィリエイト収入により報酬を支払うCは、一般的なアフィリエイトサービス提供事業者(ASP)であり、AやBからあっせんを受けなくても、一般の人が誰でも無料で登録できる全く独立した事業者であることは明らかでした。
すると電話勧誘を行ったAと高額なシステムを販売したBとの間に、なんらかの業務関係があれば、AとBとの間にあっせんがあったものと指摘することが可能となりますが、相談内容では
『Bは「Aという会社は知らない」「Bでは一切電話勧誘行為はしていない、単にネットの申込みに応じて販売する通信販売」「このシステムは一般的に誰でも買えるもの」といって、Aとの関係を一切否定します』
ということですので、AとBは限りなく関係が怪しいと思いつつも、それを客観的に証明できないと「業務提供誘引販売取引」の定義に該当しないことになります。
事実、A自体は、ウェブサイトを一切持っておらず、Bはウェブサイトを持ちますが、そのサイト内容は一般向けの通信販売の形態を取り、同じシステムをウェブ上で販売しています。そうすると、外見上、AとBは全く独立しており、その関係を立証するのはかなり困難なようです。
ただ、Bのサイトを見て、このシステムを購入するような一般客がいるのかどうかは疑問です。
在宅ワークに美味しい話はありませんが、特にこのような法律の穴を狙うような事業者が、ネット上にはウヨウヨしています。また、このような事業者は、すぐに連絡不能となることが多く、結局、消費者金融から借り入れた借金だけが残る結果となります。