その20: 特定商取引法(8)

 
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その20: 特定商取引法(8)

 顧客の意に反して売買契約の申込みをさせようとする行為

<事例>

『モニター300人募集 スーパーデトリックス&マリーゴールドQ10の商品を各300名
しかもアンケートに答えて3000円の謝礼が貰える。2商品のモニターになって6000円GETしよう』

 この文章につられて、モニター応募したのですが、昨日郵便局から代金引換で26,600円になります、といわれびっくりしてしまいました。
 その場はお金を払わず不在票としてもらったのですが、モニター規約を読んだら、

『モニター割引:モニター登録時にモニター希望商品を3ヵ月分購入していただきます。本来なら3個で59400円のところを33000円にして、ご提供させていただきます』

 あと、

『損害賠償:商品発送後のキャンセルは受け付けておりません。キャンセルをする場合は10万円の違約金を払っていただきます』

 となっているのですがどうすればいいでしょうか?

 代金引換なので私がお金を払わないかぎり商品は受けとれないと思うのですが、また発送してくるでしょうか?モニター規約をよく読まなかった私もいけなかったのですが、見づらくてだまされたという感じです。無料だからと思って応募してしまいました。

・・・・

 サイトを確認すると、モニターとして申し込む場合でも商品を購入する契約である、ということがモニター規約にしか書かれておらず、しかも規約をかなりスクロールしていかないと、その記載が現れないような状態でした。
 このような画面構成にて、商品の購入の意思が無く単にモニターとして申し込んでいるのであれば、購入する契約は有効に成立していない可能性が高いと思われます。また、キャンセル料10万円に根拠があるとは到底考えられず、このような法外なキャンセル料の定めは無効と判断される可能性が高いと思われます。
 また、モニターを申込む際、「モニター規約に同意の上申し込む」というボタンが表示されますが、これをクリックした後に現れる確認画面には、実は商品を購入する契約の申し込みであること、そして、その商品価格が具体的に明記してあるような確認画面が表示されていなかった可能性もあります。

 このようなサイトの構成は、顧客の意に反して売買契約の申込みをさせようとする行為として、特定商取引法に基づき、経済産業大臣等は必要な措置をとるべきことを指示することができるとされています。

 特定商取引に関する法律(通信販売) 第14条
事業者は、顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為として、省令に定めるものをした場合において、通信販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害される恐れがあると認めるときは、主務大臣が、その事業者に対し必要な措置を講じるよう指示することが出来る。

 省令第16条
一  販売業者又は役務提供事業者が、電子契約の申込みを受ける場合において、電子契約に係る電子計算機の操作(当該電子契約の申込みとなるものに限る。次号において同じ。)が当該電子契約の申込みとなることを、顧客が当該操作を行う際に容易に認識できるように表示していないこと。

二  販売業者又は役務提供事業者が、電子契約の申込みを受ける場合において、申込みの内容を、顧客が電子契約に係る電子計算機の操作を行う際に容易に確認し及び訂正できるようにしていないこと。(こちらのケースについては、「ウェブ上の確認画面について(3-1)」を参照)

 更に、この省令には詳細を定めたガイドラインが設けられています。また、経済産業省の下記サイト上では表示例も紹介されています。
 『インターネット通販における「意に反して契約の申込みをさせようとする行為」に係るガイドライン』
meti.go.jp/policy/economy/consumer/consumer/tokutei/ecrule/guideline.htm

第一号(申込みとなることの表示)について
(1) 第一号は、インターネット通販において、あるボタンをクリックすれば、それが有料の申込みとなることを、消費者が容易に認識できるように表示していないことを規定するもの。

(2) 以下のような場合は、一般に、第一号で定める行為に該当しないと考えられる。
A. 申込みの最終段階において、「注文内容の確認」といった表題の画面(いわゆる最終確認画面)が必ず表示され、その画面上で「この内容で注文する」といった表示のあるボタンをクリックしてはじめて申込みになる場合。
B. いわゆる最終確認画面がない場合であっても、以下のような措置が講じられ、最終的な申込みの操作となることが明示されている場合。
ア. 最終的な申込みにあたるボタンのテキストに「私は上記の商品を購入(注文、申込み)します」と表示されている。
イ. 最終的な申込みにあたるボタンに近接して「購入(注文、申込み)しますか」との表示があり、ボタンのテキストに「はい」と表示されている。

(3) 以下のような場合は、第一号で定める行為に該当するおそれがある。
A. 最終的な申込みにあたるボタン上では、「購入(注文、申込み)」などといった用語ではなく、「送信」などの用語で表示がされており、また、画面上の他の部分でも「申込み」であることを明らかにする表示がない場合。
B. 最終的な申込みにあたるボタンに近接して「プレゼント」と表示されているなど、有償契約の申込みではないとの誤解を招くような表示がなされている場合。

 このサイトは、あくまでモニターの申込を行うためのフォームしかなく、実はそれが購入の申込みであることなどは、外見上、分からない構造でした。モニターに申し込むということイコール商品の割引購入になることについては、モニター規約にしか書かれておらず、「モニター規約に同意の上申し込む」というボタンでしか気付きようがありません。
 このような構造のサイトは、「顧客の意に反して売買契約の申込みをさせようとする行為」として違反行為となる可能性が高いと思われます。
 ちなみに、このサイトはまもなく閉鎖されました。