<事例>
通信対応ゲーム機をネット回線につなぎ、そのゲーム機専用ページより、あるゲーム用の有料コンテンツを1,500円で購入しました。しかし、そのゲームをしようと思ったら、その有料コンテンツが使えなかったので、カスタマーセンターに問い合わせたら「使っているソフトが海外版だから、サポートも返金もできません」という答えでした。
コンテンツ購入時に、対応できる、できない等の記述はありませんでした。そのことを指摘したら「日本にいる人は日本のゲームソフトを使うことが当たり前なので、そのようなことは書いていない」というような返事でした。とても納得がいきません。
ゲーム機を利用するゲームソフトは、日本では日本版を必ず使って下さいという規約はないと思います。なぜならゲーム機専用ページ上には、まだ日本では発売されていないゲームソフト用のコンテンツも売っているのですからです。そのことを説明をしたら「知らなかった、間違いで配信されている可能性があるので上の者に報告します」といいましたが、そんなことも知らないのにはびっくりです。1年くらいまえからそのコンテンツは発売されています。それは海外ではそのソフトはすでに販売されているからです。
日本版限定でしかプレイできないのなら、そのようにわかりやすく明記するべきだと思います。
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最近のゲーム機は、そのほとんどがネット接続することが可能であり、ネット回線に接続することにより、日本はもとより海外における他のユーザと対戦したり双方向のコミュニケーションを楽しむことが出来るようになっています。また、メーカー側では様々なソフトを用意していて、ネット接続されたゲーム機から直接ゲームに役に立つコンテンツやゲームソフトを、ゲーム機メモリ内にダウンロード購入することが可能となっています。
もちろん、ネット接続されているゲーム機から、モニター画面などを通じてネットを介して取引した場合は、特定商取引法の通信販売に該当するものと思われます。
念のため通信販売の定義を確認すると、第2条2項に
「販売業者又は役務提供事業者が郵便その他の経済産業省で定める方法により売買契約又は役務提供契約に申し込みを受けて行う指定商品若しくは指定権利の販売又は指定役務の提供であって電話勧誘販売に該当しないものという」とされています。
「郵便その他の経済産業省で定める方法」とは、省令2条2号にて、
「電話機、ファクシミリ装置、その他通信機器または情報処理の用に供する機器を利用する方法」とされています。
つまり、ここでPCや携帯電話等はもちろん、双方向の通信端末機器を利用する場合は全て含まれることになると考えられます。
そこで、相談の件では、ゲーム機上よりネット回線を通じてダウンロードにて購入したゲーム用コンテンツは、実は海外版だったため、相談者の保有している日本語版のゲームソフト及びゲーム機では利用が出来なかったこと、またそのような使用条件があることが事前にサイト上に記載されていない状況であると思われました。
それにより、結果的に相談者は、間違えて使えないコンテンツを購入したことになります。
そこで通信販売では、いわゆるソフトウェアに係る取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境を予め表示しておく義務を負うとされています。
www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/consumer/tokutei/gaiyo/tsuuhan_koukoku.htm#28
「いわゆるソフトウェアに係る取引を行う場合には、当該ソフトウェアの動作環境(ソフトウェアを使用できるOSの種類、CPUの種類、メモリの容量、ハードディスクの空き容量など)についての情報を事前に入手できることが不可欠であり、通信販売において、ソフトウェアに係る取引の広告を行う際には、その動作環境の表示が義務づけられています。
具体的には、プログラム等のソフトウェアを利用するために必要な電子計算機の動作環境(OSの種類、CPUの種類、メモリの容量、ハードディスクの空き容量等)を表示しなければなりません」
すると、この取引において、例えば購入時、そのコンテンツに日本語版では使用不可であるといった、このような動作環境や使用条件などがあり、その記載が無かったために、結果、誤ったソフトを購入してしまった、知っていたら購入しなかったというものであれば、取引の無効を主張し代金の返還を求めることも可能とも考えられます。
しかし、この案件での何よりも問題点は、相談者とのやり取りの中で、大手企業でもあるこの事業者側は、日本におけるコンテンツの誤配信を認めながらも、ダウンロードしたコンテンツ代金については「一切返金しない」の一点張りで、全く対応がなされなかったということです。その後は、問題のコンテンツを販売していたページを削除し、そもそも「販売していなかった」と開き直る始末であったそうです。
大手企業でもある当該事業者によるこのような対応はにわかに信じられませんが、この事業者はカスタマー窓口担当者の権限がかなり狭まれているようでしたので、相談者には経緯と共に代表者宛に書面で通知することを助言しました。