第二十四話: 身に覚えのない口座利用停止措置

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第二十四話: 身に覚えのない口座利用停止措置

 相 談 概 要

 いきなり銀行から利用停止の手紙が来て、カードなどがすべて使えなくなってしまった。手紙の内容は
【第16条 解約など
お客さまが次の各号のいずれか1つにでも該当した場合、当社はお客さまに事前に通知することなく、直ちに預金取引の全部または一部を停止し、または預金口座を解約できるものとします。
(ウ) 預金口座が法令や公序良俗に反する行為に利用され、またはそのおそれがあると認められるとき】
にあてはまったので停止した、とのことである。

もちろんそれに該当するような使用をしたことは一切ない。この口座は給料の振り込みや、ほか代金の支払いなどにも使っており大変困っている。銀行へ連絡してみたのだが、理由は話せないが独自に判断したので止めた、とのことで、その後、何度聞いても理由は教えてもらえなかった。ただ、『外部から預金口座が法令や公序良俗に反する行為に利用されているとの連絡があった』とだけ教えてもらった。

現在ネットオークションを行った人と連絡を取っているのだが、特に未入金等で警察へ被害届けを出した方がいるとは聞いていない。メインで使っている銀行なのでどうにか復活させたい。

 処 理 結 果

 銀行側の連絡を見る限り、何かしら不正な取引に、その口座が指定されていたように見受けられた。
 ただ、相談者に聞いたところ、確かに不正に使用された心配もあったが、インターネット上で、その口座における取引ログがすべて残り、そのログを確認したところ、ログには一切不正が疑われる取引が無かったとのことであった。

 そこで、銀行よろず相談所に問い合わせてみたところ、口座を利用停止にすることの判断基準は各銀行により異なり、それは個々の銀行の判断に任されているということが現状とのことであった。
ただ、口座に残高があるのであれば、銀行側ではその残高を勝手に処分する権限はないので、その口座を解約して、その残高を返還することになる、その場合は銀行より口座名義人にその手続きに関しての連絡が入るが、ただ、引き続き当該口座を利用したい場合には、銀行側と交渉することになるとのことであった。

従って、交渉を長引かせて不便な思いをするよりも、新規に口座を開設して、今まで利用していた取引を、その新規口座に新たに指定するほうが良いかもしれないと伝えた。そして、不正に口座を利用されていた恐れのある場合には、警察に相談したほうが良いのでは、とも伝えた。
相談者は、警察に相談するとのことであった。

 解 説

 不正利用による銀行口座の凍結は、振り込め詐欺が一般化(?)するとともに一般化された被害拡大防止策の一つである。特に警察の協力があると速やかに凍結措置がなされるが、警察が言うには、それらはあくまで銀行側の任意によるものである、ということである。銀行口座の凍結に関しては、『法律解釈と実務 事例3』にも詳細を記載しているので、そちらもご参照いただきたい。

 今回は利用停止とのことだが、要は、口座を凍結したり利用停止すること、解除するのも、すべて銀行の判断で決まるということであろう。このケースでは、相談者側が全く身に覚えの無い理由で口座が利用停止され、結果、十分な説明もないまま日常生活に不便をきたしている。
もちろん、こちらにて相談者に本当に身に覚えが無いのかどうかを突き詰めることは不可能であるし、銀行が本人に事前の連絡も無く、いきなり外部からの連絡だけで口座の利用停止を行うだろうか。何かそれなりの理由があってのことであろうとも思われる。ただ、本人の取引ログに不正な取引をした履歴が無い、という点も引っかかる。

 最初に述べたように、多発する詐欺によって口座凍結が迅速化、一般化していく一方、ある日突然、この相談者のように、思いもよらない措置を銀行から受けてしまうリスクも今後出てくるのではないかと懸念している。