第三十七話: その支払い、待って!

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第三十七話: その支払い、待って!

 相 談 内 容

 オークションにてカーナビが出品されているのを知り、翌月に新規オープン予定という事業者と、そのカーナビを198,000円で取引した。代金引換で取引可能ということだった。
 当初は別の宅配業者が指定されていたが、実際はゆうぱっくの代金引換にて送られてきた。疑問に思った私は、すぐに開封し中身を調べたところ、カーナビではなくコピー用紙だった。
 その場で、郵便局員に代金を返してもらい警察にも通報。その後、すぐに郵便局の係の人が駆けつけ事情を説明したところ、郵便局の人は「開封したなら代金は支払え」の一点張り。でも詐欺の可能性あるので、その日は帰ってもらった。

 翌日警察に相談にいった。私としては、もちろん実際に購入した商品に対しての代金であれば郵便局に支払うつもりだが、現段階で郵便局に代金を支払うつもりはない。現段階では、郵便局の対応待ちだが、警察、郵便局は、一応支払った上被害届けを出し、相手口座を凍結することは可能と言っている。
 でも、代金が返却されるかどうかわからないし、非常に悩んでいる。

 処 理 概 要

 オークション画面を確認すると、オークション上ではカーナビが1円で出品されており、198,000円で入札すると、その価格で取引をする、在庫は十数個、と記載されていた。つまり、198,000円で入札が入れば、その入札を一旦削除し、改めてオークション外で取引する形をとっていた。(落札価格に対して5%徴収されるシステムに対する手数料逃れとも思われる)
 オークション画面では、オークションに出品中、商品説明が追加できるので、その商品説明の部分に、日を追って在庫を表記していたようであった。また、来月オープンのショップとあり、取引時にメールで特商法の内容についてお知らせをする、と記載されていた。(オークション上に表記は無)
 従って、オークション上では落札履歴が一切確認できず、既に出品者のIDは停止中になっていた。

 一方、現時点で相談者は、郵便局から中身の異なる商品の代金請求を受けているとのことだったが、郵便局の代金引換に関する説明を確認すると、見知らぬ相手から送られてくることを考えて、「受け取り保留」や「受取拒否」はできるが、あて先や品名、金額を確認の上で1度受け取ったものは、郵便局では返品・返金に応じられない、また、内容品そのものに関しては関知できない旨の説明がある。

 ただ、被害届けを受けて一旦凍結措置をされた口座より代金返還を受けるには、裁判所の手続きが必要となる可能性があり、また他に複数被害者がいて、それぞれがその口座に差し押さえ等を行えば、その残高によっては按分される可能性もあることを、先ずは相談者に伝えた。
 (参考 法律解釈3:凍結された残高の行方

 そしてもちろん、詐欺をする人間が、のん気に入金された金銭をその口座に入れっぱなしにはしていないことだろうし、口座凍結したところで残高が空なら意味はないため、先ずは郵便局に対し、それら事情を汲んで、一時的にでも支払いを待ってもらえるよう、引き続き交渉するよう伝えた。
 しかし、郵便局がどうしても支払うよう要求してきた場合は、法律相談を受けてみるよう伝えた。

 解 説

 郵便物や宅配物の表記の内容と実際の中身が違うというトラブルは、世間的には良くあることなのかもしれないが、それが送付人の単なる間違いが原因であれば、双方連絡を取り合うことで、それ以上の問題には発展しない。問題は、特に詐欺の場合である。

 ネット取引の詐欺で普通の人が連想するのは、「代金を支払ったにもかかわらず商品が送られてこない」という手口だろうから、高額取引であるとはいえ、「代金引換」という選択肢があることで、相手に、よもや詐欺ではあるまい、と安心させることが出来るのが、この詐欺の手口の特徴であるといえる。
 また、「代金を支払ったのに物が送られてこない」という詐欺と違って、違う中身を送りつける手口の詐欺は、オークションであれば既に補償対象外になるケースも多く、警察も、それは債務不履行だとしてあまり協力的ではないという話を聞く。

 同じような事例では、掲示板で15万のPCを取引して、商品が引き渡せないのでキャンセルとなり、現金書留で送られてきたのは良かったが、中身は16千円(千円札16枚)だったというケースがある。
 海外事業者と時計を取引したケースで、荷物の中身が石だったというケースがあったが、その場合、相手方は「すりかえられた」と主張した。このケースでは、オークション上で知り合って、1度正常に取引できたので相手を信用し、今度はオークション外で大きな取引をしたら、このようなトラブルに遭遇したのである。

 この相談では、相談者は、オークション外取引であることには不信感を抱かなかったが、受け取り前に不審なことに気付き、その場で中身を開けたらカーナビのはずがコピー用紙だったので郵便局員からその場で返金してもらったというケースだが、通常は郵便局員の言うように、開封前の受取拒否は出来ても、開封後の返金は受けないのだろう。
 でも開封しなければ中身が違うかどうかは分からないし、どう考えても詐欺であることが明らかであるのに、郵便局からその代金を支払うよう請求されても、その是非はともかく、少なくても素直に従えないのは当然だと思う。