第五十一話: SNSの光と影(後編)

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第五十一話: SNSの光と影(後編)

 処 理 概 要

【相談内容】は第五十話「SNSの光と影(前編)」参照

(1)
 相談者は、この相手方と合計7枚のチケットを取引、そのうち5枚分の代金(27,500円)を既に支払い、3日発送という約束の2枚のチケットが未だ相手方から届かない状況であった。
 ただ、実際、会って相手方との話し合いが可能であれば、先ずは、3日発送分のチケットについて引渡しを催促し、そのチケットが引き渡されるまでは残金を支払わない、またチケットの引渡しが出来ないようであれば、契約を解除し支払済みの代金を返還するよう、先ずは主張してみて、その場で何らかの約束事が交わされた場合は、必ず書面でその記録を保管するよう伝えた。

 そして、もし相手方と今後連絡が取れなくなった場合は、知らされている住所に、経緯と主張を記した書面を配達証明等にて送付して、書面を受取るかどうかにより、相手方がその知らされている所在地に本当に存在しているのかを確かめ、書面が戻ってきた場合は、相手方に悪意があるものとして、速やかに警察に届け出るよう伝えた。
 さらに、警察の協力のもと、代金の振込先金融機関に連絡して事情を説明して当該口座の凍結について可能かどうかを相談してみたり、口座名義人の所在地についても、併せて聞いてみるよう伝えた。
また、他にも被害者がいるようであれば、警察の協力が期待できるかもしれないこと、SNS運営側にも情報提供するよう伝えた。

(2)
 相談者が退会前のSNSサイトで、どこまでの個人情報を公開していたのか分からなかったが、実際この相手は勝手に相談者の電話番号を調べて電話をかけ、脅迫してきているように見受けられたので、恋愛感情があるのかどうかは不明だが、先ずはストーカー被害を受けたとして、関係資料として思いつくものを全て持参し、すぐに最寄の警察署に相談するよう伝えた。それとともにSNSサイトにも一連の経緯を報告しておくよう勧めた。
その上で何かあれば、すぐにまたこちらに連絡するよう伝えた。

 そうしたところ、相談者より、警察に相談しようと思うが、自分もパニックになったり、精神的にまいってしまい、今までのメッセージなどを全て消してしまっていて、これでは、証拠がないのではないか、という連絡が来た。
 こちらからは、今までの経緯から考えれば、相談者相手から貰ったメッセージ等を消してしまっていてとしても、それは充分理解できるところであり、友人に届いたというメッセージが保存されているようであれば、それをプリントアウトするなどして持ち込めば良いのではないか、と伝えた。
 そして、たとえ十分な資料が用意できなかったとしても、先ずは警察に相談することが先決であり、もし警察に相談したことが、うすうす相手にも分かれば、相談者に対する行動もエスカレートせずに収まるかもしれないと思われた。

 すると、相談者より、それでは警察に相談したことを自分から相手に先に伝えたほうが良いのかという連絡が来たので、やはり経緯より、相談者自ら、相手に対し積極的に連絡を取ったり返答することをすると、かえって相手の行動をエスカレートさせる可能性があるので、今のところは避けたほうが賢明と伝え、警察に相談したときに、その警察の担当の人から相手に連絡してもらうよう伝えた。
 相談者は、相手からのメールや電話には返事しないようにしているので、今後もそれを貫いてみるとのことであった。

(3)
 商品は情報とのことだったので、その情報の有効性や信憑性についてを一概に判断することや、著作物の中身を見てから返品要求は馴染まないということもあったが、しかし、その情報の内容が、明らかに事前の説明と異なり実現不可能な内容であれば、今後、この相手方に対し、代金の返還を求めることは可能ではないかと伝えた。
 ただ、残念なことに、取引した相手方の住所や連絡先がわからない上、既に相手方がオークションのIDを削除しているとのことだったので、正直、解決は難しいのではないかと伝えた。

 そこで、引き続きメールでの連絡を試みるとともに、代金を振り込んだ金融機関に連絡して、口座名義人に連絡を取って欲しいといった依頼をしてみたり、口座名義人の登録されている所在地について問い合わせて見るよう伝えた。

 解 説

 SNSに関係するトラブルに関しては、最初のうちは、主にSNS運営側に対する相談であった。
 SNSの利用は基本的には無料だが、有料オプションが用意されていて、料金を支払うと付加サービスを受けることが出来る。そこでの決済に関するトラブルや、全くネットをしない親から、子供が亡くなり、その子供が利用していたと思われるSNSからの引き落としが続いているので止めたいが、電話はなくメールでしか連絡手段がない、また死亡診断書を出さないと第三者からの連絡では勝手に止められない、と言われたというケースもあった。

 SNS内は、原則的には会員登録された人しかアクセスできず、またSNS内のメッセージ機能の利用、コミュニティやトピックスへの書き込みが特定されるので、一般の掲示板のようには荒れず、匿名性も低いとされていた。また、SNS運営側も、登録時は本名での登録を推奨していた時期もあった。
しかし、ユーザのP2Pウィルス感染による情報漏洩問題が発生するなどにより、本名の登録をあえて推奨しなくなった。ユーザ数も増え、匿名性が高くなりつつあるようである。

 そこでSNSの利用者が増えるにつれ、だんだん、そのSNSの中でユーザ同士のトラブルが発生するようになった。今回紹介した3例も、主にSNSのサービスを利用して発生した代表的なトラブルを紹介したものである。

 (1)のケースは、SNS内で、同じ趣味や目的を持つユーザが集まるコミュニティ内で行われた詐欺の事例である。
 このような被害は他にもあり、限られたユーザしかいない前提のSNSにて、同じ趣味を持つユーザ同士、つい気を許して相手を信用してしまう傾向があるのかと思われる。しかし、既にこのようなコミュニティ内での取引は、一般の掲示板における取引と変わらないリスクが伴っているのかもしれない。

 (2)のケースであるが、SNS運営側では、見ず知らずの人から友人の登録申請があった場合は、充分注意するよう促している。また、知らない相手に友人の登録申請メッセージを出すことは迷惑行為になる場合がありうることを伝えている。
 友人同士が繋がることはSNSのメリットだが、反面、友人を公開することにより周りに迷惑をかけるという危険もはらむ。

 この相談者の場合、既に取引関連の相談ではないので、こちらで何かしてあげられることがほとんどなかったのだが、本人を落ち着かせて安心させる必要があるため、いつでも連絡をくれるよう伝え、また、相談者のアドレスは携帯電話用だったため、この相談者からメールが入ったときは、携帯電話を握り締めている姿を想像し、何より優先してメールを返信するようにしていた。
 そのためか、相談者とのメールの回数が増えるにつれ、落ち着いていく様子が見て取れたので、とりあえず安心したものである。

 (3)のケースについてであるが、最近このSNSが商売に利用されることが多い。当初、SNSはビジネスの人脈作りには有効とされていたが、このSNS内で商売をするユーザが出てきたということである。
ただ、SNS運営側は、基本的には事例にあるようにSNS内での宣伝行為を禁止しており、また登録には既に登録しているユーザからの招待が必要だが、その招待状を売買することも禁止している。
 その場合、SNS内で直接宣伝行為をするとSNS運営側に削除されるので、SNS内では、単に自分の広告サイトに誘導するようになっており、また招待状やユーザIDにおいても、オークションなどで売買が行われているようである。

 今後、SNS関連の相談は増えることかと思われるが、今後の相談の動向に注意していきたいと思う。