第五十四話: ホスティング業者選びは慎重に

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第五十四話: ホスティング業者選びは慎重に

 相 談 内 容

(1)
 先日このホスティングサービスを解約しようとメールを出したら、やり取りがほとんどできなくなり、現在メールを出しても返信が無い状況である。
 代金は決済代行を使って一括で既に払っており、先月分まで支払を行っているが、すでにその期限を過ぎている。このホスティングのサービスを月額で支払うのも嫌であり、ドメインも任せているので、早く新サーバに移したいため、先延ばしされると支障がある。

 海外のホスティング業者で、のんびりしているのか、と思えなくは無いのだが、当初より、やや怪しい会社だなと思っていたので相談した。次はこんなトラブルは嫌なので、日本のホスティングにしようと思っている。

(2)
 先日、数年借りていたサーバのドメイン更新料金を支払ったのだが、ドメインの継続を何の連絡もなく打ち切られ、こちらから連絡しても何一つ返事が来ず、ドメインの復旧や料金の返金要求も出来ない状況である。
 私が持っていたドメインは母が趣味として行っている編み物を紹介するために制作した個人サイトだが、検索でも一位に上るなど、小さい業界ながらも、それなりの成果と貢献があった。

 ドメインの更新料はそれほど高くないので、最悪戻らなくても構わないのだが、一刻も早くドメインの復旧、または他社への移管を行いたいと願っている。
 しかし全く連絡が取れない状況と、ドメインが停止状態のため移管作業もままならない状態である。

(3)
 現在使用しているホスティングサービス業者のサービス(ドメイン、wwwサーバ、メールサーバ)が使用不可能となってしまった。コールセンターにも繋がらず、メールでの問い合わせも返信がない状態。契約は支払いから一年間有効なので、契約打ち切りとは考え難いのだが、業者側から事前に何の連絡もなく、突然サービスが停止してしまった。

 業者側から残りの金銭の返金をしてもらえるのかが心配だが、管理してもらっているドメインの移管を他社に切り替えたくても連絡が取れない状況なので、どうにもできない状態である。私の他にも被害に遭っている方が大勢いる様子。

 処 理 概 要 及び 解 説

 個人がインターネットサービスを利用する場合は、先ずは各種プロバイダと契約して、そこで提供されているホームページサービスやメールアドレス等を利用するのが一般的と思われるが、パワーユーザや商売を検討する場合は独自にドメインを取得し、そのドメインによるサイト開設やメールアドレスの取得を行うことも可能である。ドメインはネット上の住所に該当するため、唯一無二でなければならず、早い話が早い者勝ちである。
 登録申請を受け付ける機関をレジストラと呼び、それらレジストラと契約し、そのドメインを登録して管理するのがレジストリと呼ばれる団体である。レジストリには、例えば「.jp」ドメインであれば株式会社日本レジストリサービス、「.com」であればICANNがある。
 また、1度登録されたドメインは永遠に有効なのではなく有効期限が定められているので、更新し続けない限り、そのドメインの所有は保たれない。更新せずに放っておくと、やがて登録者情報が削除され、誰でも再取得が可能になる。

 一方、ホスティング業者の主なサービスは、ユーザの希望によりドメインの取得と登録、更新手続きを代行し、サイトの開設やメールアドレス付与に伴うサーバをレンタルし、その保守管理を行うことである。小さいホスティング業者の場合は、上位レジストラがいる。料金体系は、もちろん業者によって異なるが、大体は1ヶ月〜1年分を先払い、その際、規約上、途中解約しても残は返金されないことがほとんどである。

 参考として、(2)の事例のケースで、ホスティング業者から相談者にドメイン更新について過去に送られてきている案内メールにも、ドメインの更新について以下説明がある。
 現在では、更新切れを起こしても、一定期間はもとの所有者による請戻猶予期間がある。

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【 ドメイン 】のご契約更新に関してお知らせ申し上げます。ご契約いただいておりますドメインが、期間満了となります。

・ご契約を更新される場合は更新料のご入金をお願いいたします。
1年あたりの更新費用 【 1,575 円 】(1年単位でご希望の年数の更新が可能です)
ご入金後、確認のために以下のURLをクリックして下さい。
その後のお手続きをより迅速に行うことができます。ぜひご協力をお願いいたします。 ご入金の確認後、再度弊社よりご連絡いたします。

・ご契約を終了される場合 
以下のURLをクリックして下さい。このほかには特にご連絡をいただく必要はございません。ご契約満了の翌日にドメインが一切ご利用いただけなくなります。くれぐれもお気を付け下さい。

・ご注意ください 
ご契約の更新は、満了日までにお支払いの確認ができた場合にのみお手続させていただきます。ご契約が満了がなった場合、翌日からドメインがご利用いただけなくなります。予めご了承下さい。
契約更新日を経過すると、翌日にはレジストラにより機能の停止の状態( Status REGISTRAR-HOLD )、更に40日経過後には自動的に廃止状態( Status REDEMPTIONPERIOD )となります。

この期間のドメインの復旧には、更新料とは別に、機能停止期間【 9,450円 】、廃止状態【 52,500円 】の復旧手続き費用が必要となります。
また、これ以降、一度ご契約期限が終了したドメインは、削除中( Status PENDINGDELETE )の状態5日間を経た合計75日後にドメインが完全に抹消された後でなければ、再取得を行えません。そして、この時は誰でも取得出来る状態になっているため、再度取得できる保証はありません。
このため、更新をご希望されます場合には、できる限り早期のお手続きをおすすめいたします。また、手続きを行なわずに廃止になった場合、弊社では責任を負いかねますので予めご了承下さい。
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 なお、ドメイン及びホスティングサービスに関しては、ためになる1「ある日ドメインが消えた」も参照して欲しい。
 これらドメインに関する相談に関しては、そのシステムや用語が難解なため、各消費生活センターから直接問合せをいただいたり、紹介されて相談が寄せられることも多い。

 さて、そこでこれら事例のケースだが、ホスティング業者を連絡不能、若しくは所在不明に陥ると何か困るかというと、もちろん所有するサイトが見られなくなる、メールアドレスが使えなくなるといったサービスが受けられなくなるほか、相談内容にも度々出てくるが、そのホスティング業者で登録、保守してもらっていたドメインが、他のホスティング業者に移管手続きできなくなるということである。
 これはどうしてかというと、システム上、新しい契約先へのドメインの移管に関しては、現在契約中のホスティング業者と解約した上で、さらに、そのホスティング業者からの移管許可が必要とされているからである。
 従って契約中のホスティング業者と全く連絡が付かないでサービスが受けられないと、必然的に、他社のホスティング業者と契約し直したとしても、そこで同じドメインを使えなくなってしまうのである。

 ただ、ホスティング業者のような通信関連の事業者は電話番号の記載を行っていないことも多く、また(1)の事例のように海外事業者を利用しているケースもある。
 いずれにしても、事業者と電話やメールによる連絡が取れないような状況であれば、配達証明付内容証明郵便、または文面コピーを取った後、配達記録、または簡易書留郵便等を利用して、事業者所在地に書面により意思表示を伝え、連絡を取ってみることを考える。
 もちろん、更新料を支払ったにもかかわらず事業者がサービスを提供しないようであれば、サービスを提供出来ないなら契約を解除し、支払った代金の返還を求めることも可能であると思われる。

 また、ドメインに関しては、もし、現在のホスティング業者と交渉が出来ない状態が続けば、例えば新しい契約先に検討しているホスティング事業者に相談して、そのホスティング事業者から現在契約中のホスティング業者に、ドメイン移管についての許可を申し出てくれるよう依頼してみるという方法、さらに上位レジストラやレジストリ等に相談してみることなども検討可能かもしれない。
 しかし、どうしても解決できない場合、最悪は契約期間が切れるまで待ち、同ドメインを新たに取得し直して、新しいホスティング事業者と契約し直すという方法が考えられる。

 ホスティング業者の相談は数年前には一時的に多数寄せられていた。それは2000年ごろにインターネットが一般化、定着したことにより、小さなホスティング業者が多く現れ、また多く消えていったことによるものと考えられたが、その経緯より大分淘汰されたのか、その後しばらくは減少傾向だった。
 しかし、最近またホスティング業者の相談がいくつか寄せられるようになってきた。ユーザには、くれぐれもホスティング業者の選択には慎重になって欲しいと思っている。