第六十五話: プライバシーポリシーの杜撰さ

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第六十五話: プライバシーポリシーの杜撰さ

 相 談 内 容

 全く覚えのない物が送られて来た。夫宛ての郵便物だが、本人も家族も思いあたらない。内容物は青い錠剤10粒で、手紙も振込用紙もない。錠剤は丸みを帯びたひし形で表にPfizer、裏にVGR100とあり、調べたところバイアグラのようである。 
 ただ、振込用紙もないので実害はないのだが、悪戯にしても気味が悪いと思い、もしかしてクレジットカードから引き落とされているかもと思い、相談した次第である。

 処 理 概 要 及び 解 説

 この相談は、先ずは相談者に届いた商品をそのまま開封せずに保管するよう伝えるなど、相談者とやり取りしているうちに、その理由が分かり解決した。

・・・・
 送り主はうちが以前買ったことのある通販会社だった。うちはタラバガニを買っただけだが、裏会社でアダルト商品を扱っているようで、同姓同名の別人が注文したものをうちと間違えて送ったようである。昨夜その会社から電話があり判明した。本当の依頼主が「入金したのに商品が届かない」とクレームをつけたようで、会社が調べたところ間違いがわかったというわけである。
 商品は返品して欲しいというので、開けていないし必要もないものだから、返品には応じるつもりでいる。

 だが、このタラバを買った会社は新聞広告にもよく出る通販会社なのに、あまりにお粗末である。ちなみに、裏会社は通販会社とまったく同じ所在地にある。
 電話をかけて来たのは裏会社のアルバイトだろう、平謝りだったが、家庭不和にもつながりかねない商品を住所もよく確かめずに送るような会社は今後も信用できない。

・・・・

 確かに間違えて届いた商品の特質上、家庭を持つ相談者の憤慨は想像にたやすいところである。裏会社(?)は商品販売というよりも個人輸入代行業者と思われるが、こちらのほうはサイトをもっていなかったので、会社の詳細が分からずじまいであった。
 一方、通販会社の方には、以下プライバシーポリシーがあった。

個人情報の利用目的と管理について

お客様のお名前、ご住所等の個人情報は、当社の通信販売で使用させていただくほか、お客様への情報提供を目的とした当社の他営業のご案内、カタログの送付、サービス情報の提供のために利用する場合がございます。

当社では、法令に基づく場合や上記の利用目的を達成するために必要な範囲内で業務を委託する場合を除き、お客様の個人情報を第三者に提供いたしません。

個人情報の開示・訂正・利用停止等の手続きおよび苦情・お問合せに関しましては、フリーダイアルまでご連絡ください。

 

 早い話が、この通販業者では、このプライバシーポリシーが守られていない可能性があるということにもなる。
 個人情報保護法では、個人情報取扱事業者の義務として、個人情報を取り扱うに当たり、その利用目的をできる限り特定することと、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えた個人情報の取扱いの原則禁止(15条、16条)が定められている。

 従って、もし通販会社と裏会社が全くの別会社であれば、いくら同じ住所にあるとはいえ、別会社の間で取得した個人データのやり取りをすることは、このプライバシーポリシーに反することになり、その場合は本人の承諾が必要になるし、実質この2つの会社が同じ会社であって、別の呼称を使っているのであれば、その旨の表示が必要かと思われる。
 相談者が事業者を不審に思うのであれば、利用停止の申し出を行ったほうが良いだろう。
 ただ、この件はどちらかというと、この通販会社における個人情報の取扱いが、非常に杜撰であるということが良く分かり、小規模事業者だけではなく、新聞広告に乗せるような大手通販業者でも、実はあまり顧客管理においてはアテにならないのかもしれないということを物語っているように思われる。

 なお、小規模事業者の場合は、どこかのサイトにあるプライバシーポリシーをそのままコピペして、その意味も分からず表示しているようなところも少なくないと感じている。

参考 :
いまどきの消費者 第三十八話: ある顧客情報の危機

 逆にきちんと個人データを管理している事業者であれば、それが今のネット通販社会では大いなる売りになると考えてよいのだと思う。