第八十話: 有料メルマガなんて聞いてない

 
相談事例から“ちょっとためになるお話”

第八十話: 有料メルマガなんて聞いてない

 相 談 内 容

 会員に洋服を安く販売しているサイトで、会員登録をすると洋服が一枚無料でプレゼントされるというサイトを、ある人のブログで知った。ただ、会員登録の際にクレジットカードの番号を書かされるので少し変だな、と思いながらも会員登録をした。
 その後、プレゼントの洋服が送られてきた。(実際は着られないような、いい加減なもの)

 同じ人のブログを見て会員登録をした人からの情報で、口座から980円引き落としされていたというのを知った。どうやら登録やプレゼントは無料だが、登録した際に送られてくるメルマガの提供料が月々980円らしい。
 解約するにはサイトからの郵送の解約申込書に記入し、受理されてから違約金を支払い、認められてから退会になるらしい。規約には、最低利用期間の3ヶ月分を支払って初めて解約の書類を送り、返送し受理した月までの利用料がかかるとある。

 メールにて解約したい旨伝えたところ、以下の返信があった。  

『ご利用規約を読んでいただき、同意の上で皆様会員登録をなさっております。それに伴いプレゼント発送もさせていただきましたので、ご注意くださいませ。
登録されてからお時間も経っているため、解約に関しましては規約に記載の手続きに沿って行います。後日解約に関しましての手続き書類を郵送させていただきます。その他ご不明点がございましたら、ご連絡くださいませ』

 クレジットカード会社に連絡したら引き落としになることを確認した。引き落とし口座のある銀行に相談したが、これという解決策はなく、メールでは不確実だと思い、解約したい旨を文書にして簡易書留で郵送した。
 サイト上では、自由に見られるページはTOPと特定商取引に基づく表記のところしかなく、唯一メルマガが有料であることが謳われているというご利用規約の内容が登録時に確認できない。

 処 理 概 要

 無料プレゼントということで会員登録したところ、メルマガ会員費を請求されたとのことだった。
 そこで、先ずは事業者のサイト内、規約を検索して表示してみたところ、規約自体はトップページを含めどこからもリンクされていないような別のページが用意されており、そのページの中に規約ボックスがあり、さらにボックス内をスクロールしないと見られないような分かりにくいところに、下記メルマガ登録料等の記載があった。

利用規約及びプライバシーポリシー
■提供情報
・当サービスに記載された情報の正確性については万全を期しておりますが、誤解を生みやすい記載や誤植を含む可能性があります。
その際に発生したいかなる損失・損害に関し、当店は一切責任を負わないものとします。

■商品の購入/お引渡し
・送料が無料となるメルマガ会員の申し込みは月額980円で提供するサービスです。登録確認後、1週間以内に情報提供及び送料無料サービスの適用を開始するものとします。解約に関しましては、最低利用期間である3ヶ月分の料金をお支払いいただいた後、ご希望者の方に解約書類を送付しますので、ご記入後ご返送いただきそちらの書類の受理した日から当月末までの利用料金をお支払いいただいて解約が成立するものとします。

 また、サイト上に表示してあった特商法表記の住所は、その住所で検索をかけるとバーチャルオフィスであり、電話番号も別業者のようであった。

 そうであれば、少なくともサイトに対しては、このような利用規約の記載内容は、そもそも契約内容に含まれないと主張して、事業者に対しては、契約の不成立、若しくは確認画面が講じられていないことをもって契約の無効、若しくは詐欺による取り消しを主張するということが考えられると伝えた。

 ただ、問題はクレジットカード番号については、登録時、自ら入力しているため、このような被害をクレジットカード会社に伝えても、クレジットカード会社によっては、第三者によるなりすまし被害や全くの架空請求にすぐに該当するとは限らないため、あくまで売買契約の当事者間で交渉して、サイトから請求を取り下げさせるよう主張する場合もあると考えられた。
 従って、支払停止や返金申請等の意思表示は、こちらも事業者同様、書面で行うよう伝え、サイトに登録したカード番号は念のため変更、若しくは解約し、翌月以降も請求があがる可能性があるのかどうかを、カード会社に確認しておくよう伝えた。

 解 説

 メルマガ会員は実は有料であるにもかかわらず、登録時にその記載がほとんど無いとのことなので、このようなサイトのつくりは「顧客の意に反して売買契約の申込みをさせようとする行為」として、特定商取引法における違法行為に該当する可能性がある。

 詳細は下記ページ参照。
知って得するネット取引法入門講座 その20: 特定商取引法(8)
顧客の意に反して売買契約の申込みをさせようとする行為

 このような「引っかけサイト」は、例えば懸賞でアクセサリーが当たったと見せかけ、実は後から高額な送料を取るなど、いろいろな手口で出ては消え、出ては消えを繰り返して、昔からネット上からなかなかなくならないのだが、今までの「引っかけサイト」のケースと異なるのは、カード決済が出来ることである。
 ただ、ユーザは、もともとは“会員になると安価で服が買えるという会員サイト”という認識でいるため、会員登録時にカード番号の入力が求められても、あまり抵抗感がないのかもしれない。このサイトは秋頃から未だに存在しており、定期的に相談も寄せられている。

 ネット通販におけるカード決済は、消費者にとって非常に利便性の高い決済手段であり、また、事業者にとても取りっぱぐれがない決済手段であるともいえるが、一方で、このような手口にも簡単に利用されてしまうのには、非常に危険性を感じる。
 他の事例でも述べたかもしれないが、問題が発生した時にカード会社の速やかな対応があってこそ、ネット通販にて消費者が安心してカード決済を使えるといえる。その点がまだまだネット通販では不十分であるといわざるを得ない。