いつも利用しているオンラインゲームのサービスを突然停止させられた。こちらは何もしてない。オンラインゲームの管理側からは、不正プログラム使用だと言われ、強制的にサービス停止をするとのことである。
全く身に覚えが無いので、後から管理側にいろいろ無罪を立証するメールを送っているが、まったく聞く耳を持ってくれない。
アカウントの復帰と謝罪を希望している。
始まりはたった数行の簡単な相談内容であった。決済はウェブマネーを利用していた。そこで、相談室では、まずアカウント(ID)が停止された経緯と詳細を、相談者から聞き取ることから始めることにした。
相談者からは「事業者が定める利用規約に違反した覚えはないが、『バグの悪用』という点で、ゲームをしている間に偶然バグってしまったことはある。事業者からは具体的に、『羽』というアイテムを消費しないで使っていると言われている。これが、いわゆるBOT、マクロ等のチートツール(いずれも使用禁止されている不正プログラムのこと)使用と見られていたようである。確かにバグの偶然で『羽』を使用しないで飛んでしまうということが何度かあった。このバグを事業者が不正プログラムの利用と見た可能性がある」という回答があった。
さて、当該オンラインゲームを利用する仕組みは以下の通りである。
当該事業者では複数のオンラインゲームを提供しているので、まずは当該事業者のユーザとしてのユーザIDを取得し、その後当該ゲームユーザとしてのゲーム用IDを取得する。
このゲーム用IDはひとつのユーザIDから複数取得可能であるが、別のユーザとのゲーム用IDの共有は禁止されている。
そのゲーム用IDから、ゲーム内で使用するキャラクターを作成する。1ゲーム用IDからもそのキャラクターを複数作成することが出来る。
[ユーザID](1ユーザ1 ID 別ユーザとの共有禁止)
→【ゲーム用ID】(1事業者利用IDより複数作成可能 別ユーザとの共有禁止)
→ゲームキャラクター(1ゲーム用IDより複数作成可能)
相談者に、事業者とのやり取りを知らせるよう伝えたところ、使用していた【A】というゲーム用IDで事業者とやり取りしていた経緯を送ってきた。大体以下のやり取りである。
【A】
・『自動回復ツール』は使用していたが、不正プログラムやBOTとかは一切使用していない。
・見た目でいきなりBAN(アカウント停止措置のこと)するのはやめて欲しい。
・怪しい動きをしていたのであれば、どうしてGM(ゲームマスター:ゲーム上でパトロールする事業者側のキャラクターのこと)が話しかけてこなかったのか。
・間違えられている『羽』を利用したバグは使用していない。外見上、バグってしまう現象はあった。
・自分の回線状態が悪く、ゲームから落ちることが度々あった。鯖落ち(ゲームサーバから接続できなくなること)のときと『羽』のエフェクトは同じなので見間違ったのではないか。
【事業者】
・【A】所有のキャラクターが戦闘中に不正ツールの使用を確認し、GMが複数回確認・調査したが、その行為は正規クライアント機能では不可能なため、不正ツール使用キャラクターと判断した。従って規約通りアカウントを停止した。
・指摘されている『羽』のバグの存在は発見されていない。
・今後、アカウント復活の予定は無い。
・他に提示できる内容は無い。
そこで、これらやり取りを確認した後、その相談者と【A】のIDについて、相談室から事業者にあっせんとして問い合わせを行った。
事業者より「そのID【A】と、相談者の名前ではユーザの確認が取れなかった、再度【A】で登録しているユーザIDと、その個人情報を知らせて欲しい」と回答があった。
相談者に伝えたところ、「ユーザIDは[X]であり、このID[X]は父親の名義で登録されている」こと、「このユーザID[X]で登録しているゲーム用IDは、他に【B】【C】【D】がある」こと、「ID【A】については、既に解約済み」とのことであった。
この4つのID【A】【B】【C】【D】は、全てが、アルファベット7つの後に数字が4桁並ぶものであり、アルファベット7つは全て同じもので、4桁の数字だけが違う、というものである。 (例えば ABCDEFG0001、ABCDEFG0002、ABCDEFG0003みたいなもの)
事業者からは、「相談者の名前でのID登録は全く無い、たとえ家族であっても個人情報なので、ユーザID及びゲーム用ID所有者であるユーザからの問い合わせで無いと回答が出来ない」とのことである。
そこで、相談室では相談者に対し、各ID所有の父親より、相談室に改めて相談を寄せて欲しい旨伝えた。
相談者の父親より、相談室に改めて相談が寄せられた。(ちなみに相談室は全てオンライン上のやり取りなので、本当に父親なのか、それとも本人が父親のフリをしているのかは最後まで判断不可能である)その上で、改めて事業者に問い合わせを行った。
事業者からの回答は意外なものだった。
“「『羽』を利用した、いわゆる不正行為と判断を下したからアカウント永久停止の処分を下した」といった内容の返答はしていない”というのである。
また、相談者の父親所有のIDに対して、既に<アカウント停止に至るまでの経緯>や停止理由について返答しているが、今回の申告は、実際に行った停止理由とは異なるものであり、矛盾している点があるとのことであった。
相談者が「父親は今回の件は全くわからないので代筆をする」と言った上で、「『羽』を使用したバグは決して故意ではないが、GMがそれを見てBOTを使っていると疑ってアカウントを停止したらしい、このバグは他のユーザの証言により、今でも存在している」との回答があった。
ここで相談室では、同じユーザID[X]において、双方にて、ゲーム用ID【A】の問い合わせ内容と、その他ゲーム用ID【B】【C】【D】の問い合わせ内容と混同しているのではないか、と疑問に思った。【A】は相談者が言うには既に解約済みであり、相談室ではその【A】でのやり取りしか確認していなかったからである。
相談者の父親にその点について確認したところ、以下の内容の回答があった。
・相談者はゲーム用ID【A】【B】を使用しており、自分(父親)が【C】【D】を所有していた。
・ゲーム用ID【A】は既に解約済みであり、【B】も削除する予定。
・【C】【D】は不正ツール使用のゲーム用IDと同一ユーザID[X]であったため停止されているようだ。
・同じユーザID[X]で登録はしているが、実は【C】【D】は「別のユーザ」が使用している。
・もう相談者は「ゲームはしない」といっている。だからせめて【C】【D】を復活して欲しい。
そこで、事業者に対し、まずはこの相談者の父親からの回答を伝え、これら内容は規約に違反することになるのか、この一連の経緯は一体どういうことなのか相談室でも把握しかねているので詳細な説明が欲しい旨、併せて伝えた。
そうしたところ、事業者から「メールでは説明出来ない、相談室に直接行って、そこで説明したい」という申し出があった。そこで、事業者が来室することになった。
(後編に続く)