ネットオークションで、商品(カメラ)1台と、その翌月にさらに1台購入し、それらは全て納品された。オークションの評価も“非常に良い”だったので、その後まとめて購入したい、と連絡を入れると『購入する商品台数分の代金を先に送金してくれれば優先的に納品する』とのことだったので送金した。
その頃は1アイテム5台で、アイテム数も3、4種類だったが、その翌月からは10アイテム80〜100台位に増やした。総額5,500,000円になっている。
そこで、納品日は未だなのだが少し心配になり、最悪の場合に備えておくことがあれば教えて欲しい。
オークションで知り合った事業者と思われる相手方と、その後、個別交渉にて取引を続けている様子であった。
まだ納品期日は来ていないとのことであったので、本来であれば高額取引においては一括前払いといったリスクを避け、分割払いが望ましかったと告げるが、既に全額前払いを行っていたため、まずは相手方と連絡を頻繁に取り、納期についても、その内容を書いた書面を取っておくこと、相手方の所在をきちんと把握しておくことを伝えた。その上で納期が遅れたり、相手方と連絡が取れなくなったら、すぐに連絡をするよう伝えた。
3日後、相談者よりメールがあり、「相手方と連絡が取れなくなった」と連絡があった。オークションサイトに言ってみたが自己責任といわれ、警察に相談してみるとのことであった。そこでこちらでは、すぐに内容証明郵便を送り、所在を確認するよう助言した。
すると相談者からは、さらに、今までの個別取引では全て口頭にてやり取りをしており、メール等の証拠がほとんど無いこと、また整理していると、返信されていないメールがいくつかあったことを知らせてきた。
そして、実はまだ納品期日にはなっておらず、ただ心配なので、もう返金してもらうことは可能か、といった質問があった。
そこで、口頭での約束に関しては相手方に送る書面に、それらを記載し経緯をはっきりさせておくこと、自分の主張をきちんと記載し回答期日を設け、まずは相手方の回答を待つよう伝えた。
ただ、相談者は書面を出さないまま、約10日後にメールがあり、「商品納期に関して、商品の発売予定が今月中で発売と同時に発送とのことだったが、商品の発売がメーカーの都合で来月に延期されたようだ、この場合は返金してもらえるのか、それとも相手の考えひとつなのか」との連絡があった。
こちらでは、相談者が未だ返金の意思表示をしていないものと見受けられたので、返金が希望ならば、すぐに書面にて相手方に意思表示すること、それとも商品の納期が守られれば良いのであれば口頭ではなく、その約束の内容と、それが守られないときは速やかに返金するよう記載した書面を交わしておくよう伝えた。
この相談者は、商品が納品されるのか、また返金されるのかを絶えず心配していたが、その割に、相手方に対し、自分の主張を積極的に伝えることに関しては今ひとつだったように思う。
もちろん心配するのも無理はなく、今までもかなり高額な取引をしており、すでに個人で行うレベルを超えていた。ただ、このような高額な取引を、ほとんど口頭だけで行っていた点、代金を相手方の言われるままに全て前払いしていたなど、事業者として見たらあまりにお粗末な内容である。
この相談者に関しては、取引に対して慎重な部分が全く見えないわりに、相手方には思ったことが、なかなか主張できないタイプだったのかもしれない。それとも他に相手方の言いなりになる、何か事情があったのだろうか。そこは最後までわからなかったが、こういった相談業務をしていると、職業上、どうしても何か裏があるのではないか、と勘ぐってしまう。
例えば、何かしらの理由にて、契約の解除や返金を主張したいのであれば、まず、相手方にその意思表示をしなければ何も始まらない。ただ、その前に相談機関に相談をして、自分の考え方が正しいのか、また今後の注意点や方法について助言を求めることは、もちろん有効だと思う。しかし、相談機関は代理人にはなれないのであるから、意思表示は、まずは本人からが鉄則なのである。
もしかしたら相手方はあっさり返金に応じるかもしれない、それならそれで解決である。しかし、返金の主張を拒否されて双方の主張が対立したとき、再度相談機関が、それに対する具体的なアドバイスや、あっせん等の解決に向けたお手伝いが出来るのである。
だから、「返金されるだろうか」とさんざん心配する前に、方法はいろいろあれど、まずは相手方にそれを伝えてみてから、である。もし、それが出来ない理由があれば、それを教えてもらえないと、的確なアドバイスはなかなか出来ないのである。