第十七話: 先に返金して!

 
相談事例から“今どきの消費者”

第十七話: 先に返金して!

 相 談 内 容

 ショッピングモールに出店しているネットショップから、新品の白い山羊革ジャケット を29,190円で購入し、銀行振込みで前払いした。しかし、後日届いた商品はバックルが錆び、白い革に錆びの茶色いシミがひどくあり、袖口・腰周りには使用されたような黒い汚れがあり、全体も薄汚れでとても新品には見えず、汚くて使用できない商品だった。

連絡すると、「返品をすれば返金します」とメールがあったが、わたしとしては「こんな商品を平気で送ってくる業者は信用できかねますので、先に返金をお願いします」とメールで返答した。しかし「当店のルールにより不良品であっても先に返品して下さい」とのこと。

いいがかりをつけている訳ではない事をわかってもらおうと、「写真を送ります」と連絡すると、店長からのメールで「写真を送ろうがどうしようが先に返品しないと返金もしない」との返事である。
今までこのショッピングモールにおいて返品するのが初めてなので「変な客ではないのは調べればわかってもらえるはずです」と何度も先に返金して欲しい旨お願いしても、頑として「不良品でも先に返品して下さい」と強制されて困っている。

謝罪の意思は感じられず、不良品であっても返金は先にしない、写真を送ろうとしても先に断るなど、返品しても返金がされなかった場合、証拠品も無くなって泣き寝入りになるのではないかと不安。
返金さえしてもらえれば、ショップの言うとおり着払いですぐに返品するつもりである。

 処 理 概 要

 相談者においても、ネットショップから通販にて新品の白いジャケットを購入して、まさか汚れた商品が届くとは思わなかったであろうし、そのようなショップに対し、相談者が一気に不信感を抱いたことは容易に理解できた。その点、まずはショップの検品状況にかなり疑問が残った。

 ただ、だからといって、それをもって返金を先に主張することが正当になるかどうかは別だと考え、返品と返金、せいぜい同時履行までで、必ずしもショップが返金を先にしなければならないとまでは言い切れないのでは、と伝えた。ショップにしたら、商品の状態をナマで確認しなければ、はっきりした答えが出しにくい状況があったのかも知れないと思われたためである。
 そこで相談者には、さらに、どうしても返金が先でないと納得できないということであれば、ショップを説得して、自分の主張を受け入れてもらう必要があることなどを伝え、良く検討するよう伝えた。

 その後相談者より「事業者に返品をしたら、無事に返金がなされた」との報告があった。返品する際、予めショップにメールにて「相談機関に相談して指示を受けている」ことを伝えたうえで、返品したとのことであった。
 ただ、触ったら手が汚れたような汚いカバーに商品が入っていて、真っ白なはずの革ジャケットなのに、ショップからは「そういうデザインなんじゃないですか〜?」って高飛車に言われたりで、本当に気分が悪かったとのことであった。

 解 説

 このケースのように、ショップやオークションの相手方と返品にかかるトラブルが発生したときに、相手方が信用できないから返金を先に主張する相談者が結構多い。その考えは分からなくもないのだが、相手方からしてみたら、今度は、返金しても商品が戻ってこない、若しくは説明と異なる状態で戻される、といったリスクを同様に負うことになる。また、社会的に見ても、先に返品してから返金、といった流れのほうが圧倒的に多いと思う。

 返品・返金を主張するのは購入側であって、販売側は元々返品を是非受けたい、なんて毛頭思っていないわけだから、そこで話し合いが付かずトラブルを長引かせていたら、だんだん意地になってくるだろうし、結果的に解決も遠のく。返金を反故にされても、返品した証拠を残して、まずは先の返品を考えたほうが、交渉としては現実的な気もする。
 それでも納得できないような相談者に、返金日と返送日を同一日に決めて、双方でその日に動く、という方法を提案したこともあった。そうでなければ手渡しである。

 同様に返金の際、相手方を不審に思うあまり、相手方に返金先の口座番号すら知らせたくない、と主張する相談者も多い。住所や名前の情報は既知であるから、そこに現金書留で送るよう主張するのだ。相手方は事前の合意が無ければ、必ずしも現金書留で返金しなければならない義理は無いし、客観的に見ても、銀行振込みのほうが手数料も安いし、何より早い。事業者の場合は、結構その主張を受け入れてくれるケースも多いのだが、そこで双方譲らず二次的トラブルに発展するケースもある。
 その場合は、こう助言する。「あなたが多重債務者なら、ヤミ金の押し貸しに狙われるかもしれないけど、そうでなければ、まず大丈夫ですよ」