第十八話: 謝ってください

 
相談事例から“今どきの消費者”

第十八話: 謝ってください

 相 談 内 容

 先日、ショッピングモール出店舗にて、クロバー社の「アップリケパンチャー」の本、第1巻を注文した。ところが商品が届いてみると第2巻が送られてきていた。

 電話で確認したところ、「1巻がなかったので2巻を送った」と言われてしまった。注文した時のサイトの画面では、わたしの注文した1巻の商品名と写真で、2巻のものではなかった。もちろん、それに関する説明は一切無い。

電話での対応も「いらないなら返品してください」「サイトの写真は古いものを掲載していた」「メーカー(クロバー社)に在庫があれば送れるかもしれない」といったもので、まったく取り合ってもらえない状態。
商品は200円のものなのだが、このような対応が許されるのだろうか。

 処 理 概 要

 談者は当初は商品交換を強く希望したが、現実問題として商品は既に無く、ショップが商品交換をすることは困難であると考えられた。
 そこで、事業者においても早期交換が不可能な場合は、不本意でも返品及び代金の返還で解決するほうが良いのではないか、と伝えた。

 しかし、相談者は、本当は返金でも構わないのだが、これはモラルの問題とのことであった。ただ、ショップにおいても返品・返金対応はするとのことだったので、その上さらにそのショップに謝罪を強要することは困難ではないか、と考えられた。

 その後、相談者が何度も電話したところ、ホームページ作成業者、店舗責任者よりやっと「申し訳ない」という言葉を聞くことができ、問題の商品はメーカー側に問い合わせ、あらためて送ってもらうことになったとの報告があった。

 解 説

 注文とは別の商品を、許可無く勝手に送りつけて知らん顔を決め込むショップは、確かにモラルが無いと言われてしまえばそれまでなのだが、200円の商品に対して、謝罪をするまで何度も電話連絡を繰り返した相談者も、さあ、どうなのかな、という印象である。

 特に通販やオークションにおいて、少額取引であればあるほど感情論になりやすいことは以前も触れたことがあったかと思うが、それとは別に金銭的被害の救済よりも、事業者や相手方に対し謝罪を求めるだけの相談も今まで何件も受けている。
 ただ、取引そのものではなく、このような「謝罪を求める」なんていった類のトラブルは、ある意味、避けようと思えば避けられる、まさに不要なトラブルではないかとも思ったりする。特に相手方が事業者の場合、それは最初の対応の如何でいくらでも避けられるのではないかと思う。

 そして、相手方に対し「謝ってください」なんて言い続けることは、かえって相手方が「謝ることで、なにか自分に不利益が発生するのでは?」と警戒し、謝りたくても謝れない状況に追い込むことになるのではないかと思う。相談者側のほうは、単に感情的に謝ってくれれば気が済むだけなのに、「謝れ」といい続けることで、相手方がますます謝れなくなることに気が付かない。

 取引のトラブルに関して、きちんと救済がなされれば、後は文字通りモラルの問題である。いつまでも関わって気分の悪い思いを続けるより、とっとと忘れたほうが自分の精神衛生上にも良いと思うのだが。