第二十四話: 意地でもそれが欲しいのです

 
相談事例から“今どきの消費者”

第二十四話: 意地でもそれが欲しいのです

 相 談 内 容

 オークションで販売しているショップにて、婦人服を1点ずつ、計15、6点落札した。このショップは、韓国製品の婦人服を輸入し、扱うアパレル業者で、購入前の注意事項に『★この商品は韓国で製作していただいている商品になりますので、ご理解を頂いた上での入札をお願いします。★ノークレーム・ノーリターンでお願いします』との注意書きがあった。落札した商品の中には、大切な友人の披露宴に着て行く為のシルバーのロングドレスもあり、その日に間に合うように届けてほしい、友人の披露宴で着用予定、という旨も伝えていた。

しかし、後日届いた製品は縫製がひどく杜撰だった。特にこれは衣類として商品に成りえないのではないかという(かがり縫いのずれ、数十センチ以上)ひどい縫製のものが3点、生地裏に(着用時、前から見える裏地でスカートの裾)10㎝四方の床にこすったような汚れがあるものが1点(これが披露宴用のロングドレス)あった。
これはひどすぎると思い電話にて話をしたが、最初に出た責任者は「ノークレーム・ノーリターン」の一点張りで、1時間近く交渉したが、あきらめて仕方なく電話を切ったところ、直後に別の担当者からメールがあり「責任者とも話し、欠陥品に対しては返金か交換に応じる」と書かれてあった。

私は、自分が気に入って落札した洋服であるので、返金ではなく交換してほしい旨を伝え、承諾の回答を得たため、いざ送ろうとしたら、担当者から「在庫が無いため交換に応じられない」との返事があった。
私は直してでも着たいので「そちらで直すか、私が直しに出すので修理費として実費を請求させてほしい」と返信すると、急に対応が変わり「お直しには応じられません。返金のみ可能ですが、今後一切ご連絡は取りませんし、メールの返信にも応じません」という理解不能な内容が返ってきた。その後、こちらからのメールに応答は無く電話にも出ない。

そこで改めてショップのオークション出品商品一覧サイトを見ると、交換を主張して在庫が無いと言われていた商品4点中、2点が新たに出品されていた。まだ誰も入札の無い状態だったため、とりあえず在庫を確保するために、自分でその2点に入札を入れ、同時にショップにメールで「商品があるじゃないですか」と問い詰めた。すると何の応答も無いまま、そのオークションは出品者都合により急遽終了し、私の入札も自動拒否手続きをされていた。そのサイトのページはデータ保存してあるし、やり取りも全て、メールとして記録がある。
 その後、2つの相談機関を経て、こちらを紹介された。今は修理でもなく、あくまで商品交換を希望している。返金は全く考えていない。

 処 理 概 要

 まずは確認のため、取引時の画像と、ショップとのやり取りメールを送るよう伝えた。商品自体は、かなり光沢のある生地や派手な柄を用いたドレス類であり、1点3,000円前後の価格であった。
やり取りしたメールには、以下の経緯が書かれていた。

・ 相談者が複数の商品を落札し、それを一括して送ってくれるよう依頼した。相談者は、商品到着直前にも、別途何点か落札している。
・ トラブル発生後、責任者との電話により『全品返して返金するか(今後一切取引したくない)、「韓国製は“かがり縫い”もできていないずさんな商品もあるんだ」といっているんだからノークレーム・ノーリターンのどちらかしかない、その2つから選んでくれ』と言われた。その際、双方にて、かなり感情的なやり取りがなされていた。
・ その後、担当者より返金先振込み口座を知らせるようメールを送り、それに対し相談者は、いずれもデザインがとても気に入って落札した商品のため思い入れがあり、交換に応じてもらえないなら、仕方が無いので自分で直して着たいが、その場合悪い評価を入れる、と返答する。
・ 担当者より、従業員は「かがり縫い」ということ自体を知らなかった、わざわざ修理しなくても返送すれば交換する、といった返答がある。相談者が不良のあった4点の商品名を伝えると、担当者から「ショップでの検品は肩紐が取れていないかどうかだけで、その他は時間の制約上、裏返したり汚れがあるのかどうかまでは見ていない、梱包で手一杯である」との返答がある。
・ 相談者が担当者に、不良品を着払いであればすぐに返送すること、責任者とのやり取りで心外な部分があったので、謝罪が欲しい旨伝えたところ、担当者が新しく責任者になったということ、在庫があるものと思っていたが在庫が無かったため交換には応じられない、直しも出来ない旨の返答があった。
・ 相談者が急に直しも交換も出来ないで、返金のみとの対応には納得できないと伝えると、担当者が謝った上で、今後オークションでもどこにでも言ってくれて構わない、返金対応で自分たちの対応として間違いはないはず、という返答が繰り返された。
・ その後、相談者がショップの同様出品商品を見つけては、その都度メールをするが、担当者からは一切返答が無い。

やり取りはかなりのボリュームで、相談者からは「披露宴に使用するドレスは、幸いシルバーなのでホチキス止めで直しているが、友人同士ドレスの色を調整しドレスに合わせたバッグ等の小物を既に用意しているので、いまさらドレスを変えることが出来ない」「直すのは中学校の家庭科レベル」というと、ショップ担当者からは「かがり縫いは5人の従業員は誰も習っていないから出来ない」「責任者が外れ、正直この会社が持つのかどうか疑問、赤字が続いている」などというやり取りがあり、最後のほうでは相談者が人生論を語る始末であった。

 そこでショップとは連絡不能というよりも、感情論の展開により無視されている状況と思われたため、相談者の希望のもと、まずはこちらからショップに連絡をとってみることにした。
 ショップからはすぐに返答があったが、返金対応のみを主張し、商品交換や修理、及び修理費の負担は一切出来ない、とのことであった。

 2回ほど、ショップからは同じ回答が繰り返されたため、何か譲歩できる部分は無いのかどうか、もし譲歩できるものがあれば、相談者に対しても働きかけをしてみる旨を伝えたが、ショップ側は返答はするものの、あくまで返金でしか対応しない、との一点張りであった。
 そこで相談者には、気持ちは分かるがショップ側の返金対応は第三者的に見ても問題は無いので、それで応じられないのかどうか投げかけたところ、相談者は自分では既に連絡が取れなかったので、こちらが間に入ることでやり取りが出来たことは感謝している、ただ、お金の問題ではないので、今後法的措置を検討するなど、新たな手段を検討するとのことであった。

 解 説

 見る限り、正直、値段相応であまり趣味の良いドレスには見えなかったのだが、人の好みは自由なので、需要と供給が合えば誰が口出しすることではない。ただ、常識的に考えて、あまりこれに過剰な期待をするのもどうかと思うレベルとも思われた。
相談者も当初はこの価格帯(3,000円前後)でドレスを購入することは出来ないので、商品引渡しを希望していたが、後半はこのショップ、特に担当者に対する意地が半分、といった具合になっていた。

 ショップが、相談者と商品交換・修理に関するトラブルを起こした後に、その商品類と同じ商品を出品しているような事実があるところを見ると、ショップが商品交換や修理を拒んだのは、本当に商品が手元に無いからということとはまた別に、代わりの商品を送っても納得せずにまた文句を言ってくるのだろう、とか、一旦トラブルを起こした客とは、もう返金して早く縁を切りたい、と考えたのかもしれない。

 やり取りを見ていると、商品引渡し前においては、ショップは大量に落札してくれた相談者を得意客として丁寧に扱っていた。ただ、商品に関する苦情を電話で伝えたときに責任者と口論になり、その後担当者がついたときに、担当者がこの件を何とか解決しようと考えたのか、一旦穏やかなやり取りに戻ったものの、今度はその担当者とのメールのやり取りにおいてねじれが起こり、さらに関係を悪化させてしまっていた。相談者にとっては2回裏切られた気持ちであっただろうと思う。それはそれで意地を張るのも分からないでもない。

 ただ、不具合のある商品を引き渡してしまったら、ショップは原状回復としてもらった代金を返還して商品を返送してもらう、といった解決方法を取ることに特に問題は無い。だから、相談者がどんなに交換を主張しても「無いものは無い、金は返す」と言われてしまえば、どうしようもない。あっせんをしていても、なんとなくしっくりいかないのは、ショップの主張に問題点が見出せなかったからなのかもしれない。相談者が最後に法的措置を検討する旨を知らせてきていたが、まあ、それにコメントせずとも、しばらく頭を冷やせば何をすべきか自分で結果を出すことだろう。