第二十八話: タイミングが悪い

 
相談事例から“今どきの消費者”

第二十八話: タイミングが悪い

 相 談 内 容

 わたしが希望する仕様のパソコンがオーダーメイドを通じてしか入手できないことから、ショッピングモールに出店している当該ショップにオーダーメイドパソコンの見積もり依頼をした上で、提示された条件と金額(334,800円)で申し込みをした。
約10日後、このパソコンを入手した日の前後に、このショップはわたしが入手した仕様の同等のパソコンを2万円のディスカウントキャンペーンを期間限定で実施した。
もし見積提示時に、キャンペーンの重要情報の開示を受けていれば申し込みを見直していた。

高額の買い物をしているのでクレームを申し出たのだが、なしのつぶてで、不誠実な対応である。今は購入を後悔している。

 処 理 概 要

 問題の商品はいわゆるBTO(Built To Order)と呼ばれる、予め定められたパーツの中から、注文者が自由に組み合わせて見積もりを取りつつ、最終的に自分の希望のスペック(仕様)のパソコンを注文出来るという、受注生産型の販売方法で購入したものである。
 従って、キャンペーン対象になった商品のスペックと、相談者が注文した商品のスペックが全く同じであるとは限らない。

 そこで、こういったケースにおいて、どのように考えるのか弁護士に口頭ベースで意見を求めたところ、キャンペーンはあくまで販売差別のひとつの手段とも考えられること、ディスカウントのタイミングの問題でもあり、そのキャンペーンに対する情報開示義務を事業者側が負っているとはいえないものと考えられられる、とのことであった。

さらに、キャンペーン情報を公開すれば、事業者は定価で商品を販売する機会をなくし、また、そもそも定価で販売したいという事業者の考え方は責められるものではないと考えられること、キャンペーン前の注文に対しても、今回のような主張を認めてしまうと、キャンペーン制度のあり方自体を見直すよう議論しなければならなくなり、そうすると、売買代金の見直しは、現時点では難しいように思われるとのことであった。

 ただ、クレームを伝えても事業者側からの返答が無い、というのも問題でもあり、相談者には直接電話や書面にて連絡を取って回答を聞いてみるよう伝えた。

 解 説

 事業者がキャンペーンや期間限定セールとして、今まで定価で販売していた商品にプレミアムをつけたりディスカウントして販売することは、日常的にも良くあることだが、その該当商品や開始時期を公開していない場合、ディスカウント直前に購入した客は、そのことを知って多かれ少なかれ、こう不満に思う、最初から知っていれば、買うのをもう少し待ったのに、と。

 でも、後からその主張をひとつひとつ認めていたら、きりがないのも事実であるし、それではキャンペーン企画そのものの意味もなさないと考えられるのである。まさにタイミングが悪かった、というより他に無いのかもしれない。モデルチェンジの場合も同様のトラブルが発生する。
 
逆に定価で販売した形跡が無いのに、さも定価より安く販売しているように見せて二重価格をつけている方が問題になっている。
 最終的には相談者も納得したようであったが、だからと言って何となくその釈然としない気持ちも分かる部分もあり、簡単なようで、なかなか難しい問題である。